(1) 100.0gのポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデン(どちらも可塑剤等は含まれていないものとする)には,それぞれ塩素がどれだけ含まれているか計算してみよう。質量と物質量(mol)で求めること。
ただし,原子量は以下の値を用いる。
H=1.0079,C=12.011,O=15.9994,Cl=35.453
100.0g | x | 15.9994 1.0079 x 2 + 15.9994 |
= | 88.81g |
(2) ポリ塩化ビニルに含まれる塩素がすべて塩化水素(HCl)ガスになると仮定した場合,その体積はどれだけか。0℃,1atmの理想気体として計算する。HClガス発生の問題点やその対応について調べよ。
(3) ポリ塩化ビニルを100g燃焼させ,炭素がすべてCO2になるとしたらCO2はどれだけ発生するか。また,可塑剤としてフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)が50wt%入っている場合はどうか。やはり,0℃,1atmの理想気体として計算する。温室効果ガスについても調べること。
※フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)については,「動く分子事典」,p.247参。可塑剤については,p.215,220,247参照。
(4) 2000/02/15付け朝日新聞に,『高濃度のダイオキシン/家庭用焼却炉からも/都調査』の記事が掲載され,東京都環境科学研究所の調査で,ポリ塩化ビニル1gを家庭用焼却炉で焼くと140ngのダイオキシン類が発生することがわかったとあります(1ng = 10-9g)。同じ条件でポリ塩化ビニル100gを燃焼した場合に発生するダイオキシン類の量を計算し,ダイオキシン類の耐容1日摂取量4×10-9 mg/kg・日(= 4pg TEQ/kg体重・日)と比較して考察せよ。なお,耐容1日摂取量とは一生涯毎日摂取しても健康に悪影響を及ぼさないと考えられる量(TDI;問3の課題ページも参照)のことである。
※同記事には,建材などを家庭用焼却炉で燃やした場合のダイオキシン類発生濃度に及ぼすポリ塩化ビニル混入率の影響についても解説されている。
(5) 以下の文献やWebページからポリ塩化ビニルからダイオキシン類が発生するとされる反応機構などについて調べてみよう。
問2
以下のページの問1・5・6・7に答えよ。
→ 『分子の形と性質(3) −水,アンモニア,メタン,二酸化炭素−』
※上記ページは分子モデル表示にChemscapeChimeが必要です(MDLまたは収録CD-ROM参照)。
問3
以下のページの計算問題を解いて考察する。
→ 『化学物質のリスク(極めて単純な推定法の例)/問題編』
問4
環境問題に関係する分子についていくつか調べ,以下のページにある有機概念図の計算をして考察する。
→ 『Excel97用有機概念図計算シート』の使用方法
問5
(1) 水とオクタノールが2層になっている場合,上の層はどちらか。またそれはなぜか。
2本の試験管に水とオクタノールを等容量ずつ入れ,一方には指示薬のメチルオレンジ,もう一方にはメチルレッドを加えてそれぞれよく振って静置したところ下の写真のようになった。これについて以下の問いに答えなさい。
(2) メチルオレンジとメチルレッドの構造式を適当なデータベースなどで調べ,その官能基をもとにそれぞれの親水性・疎水性を推定して説明しなさい。またCAS番号もデータベースで確認しなさい。
(3) (2)のことを適当な物性値で説明できるだろうか。 → ヒント:水-オクタノール分配係数とlog P の説明図 → そのデータベースの例(各自で考えた後で利用してください)
(4) (3)の結果から考えて,上の写真で(a),(b)のどちらがメチルレッドであるか。また指示薬として用いる場合,水溶液ではなく通常エタノール溶液で用いられるのはどちらか。
(5) 水-オクタノール分配係数が定量的構造活性相関(QSAR)で用いられる理由を説明しなさい。
(6) 問4の 『Excel97用有機概念図計算シート』の使用方法を参考にしてメチルオレンジとメチルレッドの親水性・疎水性について推定しなさい。またlog P について(3)で調べた結果と比較しなさい。
(7) (2)で調べた構造式から,メチルオレンジとメチルレッドが色を持つ分子構造の共通点を考えなさい(ヒント:[ ]結合系)。また-N=N-の基名を答えなさい。
(8) (7)からこれらの化合物を無色にする方法について考えなさい。