『せたがやスタ研ニュース』19号【特集】

特集

 下高井戸振組スタンプ事業部

 『スタンプ特別企画』にみる情報発信
 各店の商品とスタンプをアピール

 事業成功のカギは、ヒト、モノ、カネ、情報の4つと言われる。スタンプ事業でもそうだろう。本号では、そのうちの情報活用例(発信と受信のうち主に発信)を報告したい。下高井戸振組スタンプ事業部が毎年、中元と歳末に実施している『スタンプ特別企画』のことだ。

毎月のように加盟店を通じて出しているチラシ、『ありがとうインフォメーション』でも、スタンプお中元企画を案内

■柱は共同カタログ
 特別企画とはどういうものか?
 簡単に言うと、(1)スタンプ事業部でカタログをつくり、参加店からお客に配布する(2)カタログには参加店1店あたり3品以内の商品を掲載する(参加店の負担なし)(3)台紙での買い物に大幅なプレミアムをつける(スタンプ部から台紙1冊につき300円を助成。ただし、受付総数に制限あり)、というものだ。
 情報発信は、予告チラシ、カタログ、受付会場でのサンプル商品展示などの方法を駆使しているが、柱となるのは共同カタログだ。

99中元スタンプ特別企画の流れ
(1)5月6日 カタログ申し込み告知
  加盟店向けニュースで、参加店及 び出品商品の原稿等記入の要請
(2)5月12〜13日 参加申込受付(スタンプ事業部事務局はカタログ制作作業に)
(3)6月1日〜 予告チラシ配布
 カタログ掲載商品の一覧や交換時期などが掲載され、各店は、(4)のカタログ同様、来店者に説明しながら渡したり、配達先に配ったりする
(4)6月4日〜 カタログ配布
(5)6月14日 受付及び展示会場設営
 展示会場では参加店が出品サンプルを展示する。会場は、商店街事務所1階しもたかコミュ ニティセンター
(6)6月15〜19日(各12〜19時) お客からの注文受付
 お客は必要な台紙冊数を持参、商品1種類につき1枚の申込書(3枚複写、ホール備え付け)に記入。その際、受取日指定の商品は必ず受取希望日を書き、申込書3枚目の『商品お渡し券』を持ち帰る。総数5000冊に達した場合はその時点で締切
(7)6月20日 事務局から、お客の申込書を各店に渡す(これを見て各店は品揃えを始める)
(8)6月25日〜 商品の受け渡し(各店店頭にて)
(9)6月30日、7月2、14日の3回精算

スタンプ事業部事務局で版下から製本までする中元カタログ(各店の出品商品案内ページ)

申込書は3枚複写になっており、消費者、事務局、加盟店の控えとする


■新宿高島屋開店が契機に
 第1回は96年の歳末だった。直接のきっかけは、その年の秋の新宿高島屋の開店。同商店街から電車で10分と近いので、危機感も高まり、同店への贈答需要流出を少しでも少なくしようということで始めた。 
 満貼り台紙の加盟店回収の促進も目的の1つだ。同商店街のスタンプ回収率は約46%とまだまだ低く、高めることが課題になっている。

■注文1220件、回収3300冊
 今年の結果は、参加42店、カタログ3000部配布に対し、注文は1220件、回収は3300冊(概数)。最高に注文した人の冊数は50冊ほど。最高に回収した店は750冊ほど。
 以上の数字でわかることのほか、多くのメリットが生まれている。

■多くのメリット
 まず、毎年中元と歳末の2回継続していることで消費者に、商店街スタンプと各店の扱い商品について、改めて認識してもらえる。このほか、以下のようなメリットがあげられる。
 参加店の刺激になる。積極的に参加し、自店の販売促進につなげる店が増えている。カタログに自店の推奨品を掲載するため、お客に買ってもらえる品揃えやメッセージを見直す機会になる。
 各店は情報収集もできる。広告の内容や品揃えなどいろいろ試行錯誤することと消費者とのコミュニケーションを通じて、どんな商品やアピールに人気があり、ないのかという消費者ニーズの一端が把握できる。
 お客から事前に注文を受けてから品揃えをすればいいので、参加店は仕入れロスがない。
 加盟店間のコミュニケーションが深められる。会場受付は参加店の当番制で、殆どの店が参加し、常時5人ぐらいが出ている。交換商品を決めていないお客に、展示してある自店の商品を勧めるというメリットもある。商品を展示していない店でも時間があれば受付に来る人も。
 こんな努力のおかげか、下高井戸スタンプの発行額は伸び続け、98年度は前年比15%増の約4500万円(加盟店数55店)。特に、発行額上位の店の伸びが大きいという。

■マンネリの傾向も
 ただ特別企画は、この中元で6回目となり、ますます積極的に取り組む店とそうでない店との差がでてきている。例えば、各店からカタログを来店客に渡すことになっているが、あまり渡さない店も出ている。これは、この企画で売り上げを伸ばす店がある一方、成果を出せない店があることが一因だろう。

■中元特別企画の収支
 今回の中元特別企画の支出は、約110万円。参加費等の会費収入はゼロ。
 支出内訳は、回収台紙補填分が約100万円(1冊300円の補填で約3300冊回収)。その他、告知チラシ、カタログ制作費などが約9万円。印刷物はスタンプ事業部が版下を作成し、会の印刷機などで印刷製本し、加盟店が配布するのであまりかかっていていない。
 *通常1冊500円の台紙に300円も会が補填するのは、下高井戸の場合、台紙の回収率がまだ低く、スタンプを更に普及させる必要があることや加盟店での台紙利用を促進するため。
 回収冊数に上限を設け(中元は先着5000冊、歳末1万冊)、歯止めはかけている。

■スタンプだけの事務局
 事業(スタンプ)に価値観を持つ店が共同で実施すること、消費者に商品その他の個店情報とスタンプ情報を継続的に発信することが成功のポイントだろう。そのためには、加盟店とのコミュニケーション、加盟店の刺激策、情報の企画をまとめ、運営する体制がポイントになる。
 下高井戸の場合は、何かあるごとにスタンプ事業部事務局からニュースを出し、アドバイスなども含めた加盟店への情報提供に努めている。
 今回の中元では、5月6日のカタログ掲載受付告知に始まり、6月21日の概算報告まで4回のニュースを出している。
 こういうことができるのは、スタンプ事業部だけの事務局を地元の調査・企画会社に委託していること。商店街振興組合の事務局(専従職員1人)があるのに、別の専門事務局を抱えているのは、「餅は餅屋に任せる」という考え方と委託業務をスタンプ販売促進事業に限定することで、それほどの固定経費をかけないで済む、などからだ。
 アウトソーシングの発想である。
 もちろん、役員が全てこなせば、外注費はかからない。しかし、役員の負担は重くなる。そして、下高井戸の場合、当初から年間3000万円以上のスタンプを発行しており(今年3月期間は約4500万円)、多少財政的に余裕がある、ということもある。

下高井戸の元気なスタンプ活用店

■カタログにはマーキング 赤松屋精米店
 スタンプ特別企画では、いつも米、酒などの業種が上位を占めるが、赤松屋はその中でも1、2を争う積極的なスタンプ活用店。 
 店は商店街通りから700〜800メートル離れた住宅地の中にあり、もともと組合員ではなかったが、下高井戸スタンプが始まってから、自ら申し出てスタンプ加盟店になった(賛助組合員となる)。 
 中元歳末特別企画の時は、カタログの自店枠をマーカーで強調、それにプラス自店のビラをつけ、配達先や来店客に「ぜひうちで、ご利用を」と説明しながら渡す。1回のイベントで新規客10人程度を獲得しているが、その都度、同店の商圏マップにチェック。
 毎月20日頃には、試食割引券をつけた手作りチラシをポスティングして回る。このチラシは、奥さんがワープロでつくる。
 地域振興券が始まった時スタンプの顧客リストを活用、一律にもらえる子どものいる家庭に絞り、スタンプサービスのDMを出している。
 「スタンプは出すことが一番」という信念で固まっている。

■値引きしてスタンプで勝負 サクライ(メガネ・時計・宝石)
 
サクライの桜井せつ子さんは、「最初のうちは、このまま出していてもどうなのかなと疑問を持ちながら加盟していた」。しかし、商店街の中などで勉強しているうちに、「素直に出すことにしよう」と割り切るようになったと言う。
 効果がわかるのは、売り出しの時。
年1回宝石の大売り出しをするが、その際、値引きしてスタンプを出す。5万円買い上げごとに抽選券を出したりするが、その景品もスタンプ。
 決算セールも同様に、値引きした上にスタンプを出す。
 大きなセールの時には夫婦で10日間ぐらいかけてポスティングする。住所のわかっているお客が多く、そういうお客には宛名を書いた封筒に入れてポスティングする。するとマンションの管理人さんも文句を言わない。顔馴染みになった管理人さんも何人かいるという。

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