Jデビットという、日本の大半の金融機関や郵便局のキャッシュカードが商品やサービスの支払いに使える決済サービスが3月6日から本格稼働する。百貨店やスーパー、大型専門店チェーン、旅行代理店、保険会社など多くの業界から約300社10万店以上が加盟店になる予定。商店会やスタンプ・ポイントカード会でも、導入すべきかどうか検討はしておくべきシステムと言える。
■デビットとは
キャッシュカードに支払機能
デビットカードとは、消費者が商店などで商品やサービスの支払いに使う場合のキャッシュカードのことだ。『デビットカード』という特別のカードがあるわけではない。金融機関のATMからキャッシュカードで現金をおろす代わりに商店などの端末で暗証番号を打ち、自分の預金残高から買い上げ分を引き落とす。
デビットカードを扱っている金融機関のキャッシュカードで、その金融機関と加盟店契約をした加盟店で使える。以前の銀行POSのように、消費者が自分のキャッシュカードの発行金融機関に届け出をするという面倒な手続きは不要だし、手数料も0。大半の金融機関や郵便局のキャッシュカードがそのまま使えるので、「殆ど使われなかった銀行POSと違う。今度は普及するのでは」という声もある。
■Jデビットとは
大半の金融機関が会員
(社)日本デビットカード推進協議会(98年6月に設立。以下、デビット推進協と略)が日本国内で行う統一したデビットカード事業のことだ。
Jデビットには、99年12月現在で、全国約930の金融機関が会員となり、商店・サービス業の大手・中堅企業など約300社10万店が加盟店となり、特別会員として、NTTデータ、郵政省、賛助会員
に情報処理センター、端末メーカーなどが各数十社。
きょうと情報カードシステム、東京の自由が丘振組、横須賀市の衣笠振組、広島市の広島シティカード協組など、少数だが商店会団体も加盟している。
Jデビットは、99年1月から一部の金融機関、加盟店で稼働しているが、まだ実験的な段階に近い。本格稼働は今年3月。
きょうと情報カードシステムの
「デビットカード」パンフレット
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■消費者がJデビットを使用する場合
キャッシュカードがそのまま使える
(1)Jデビット会員の金融機関のキャッシュカードであること。ただし、2000年3月6日までは、一部の金融機関のキャッシュカードで、一部の加盟店でしか扱えない。3月6日以降は約殆どの金融機関(99年12月25日現在東京三菱銀行と三菱信託銀行はJデビット未加盟なので使えない)のカードが大半の加盟店で扱える予定。
(2)金融機関への登録などの手続きは不要で手持ちのキャッシュカードがそのまま使える。
(3)手数料や会費などは不要。
(4)キャッシュカードで支払おうとする店が、Jデビット参加店であること。
(5)キャッシュカードの暗証番号を店の端末と接続されたピンパッドに消費者本人が入力する。
(6)金融機関のATMで現金をおろすのと同じで即時引き落とし。残高不足の場合は何らかのメッセージが出る。分割払いはできない。クレジット(借金)の嫌いな人にも抵抗が少ない。
(7)デビット利用記録は、通帳に記帳される(カード発行金融機関で記帳)。
デビットカードの流れ
■Jデビット加盟店になるには
金融機関と加盟店契約
デビット扱い金融機関と加盟店契約を結ぶ。契約方式には、金融機関のホストコンピューターと接続する直接加盟店方式と情報処理センターと加盟店契約をする間接加盟店方式がある。
直接加盟店方式の場合、デビット推進協に加盟し、加盟店が自店内に売り上げ代金の入金や売り上げ明細の作成をする情報処理システムが必要となるため、中小商店では、間接加盟店方式が一般的。
商店会などが金融機関ないし情報処理センターと加盟店契約をし、個々の商店は商店会と加盟店契約をする、『団体加盟店方式』もある。
端末とISDN回線
キャッシュカードの残高と本人確認をするための端末が必要。最近の端末はクレジットカードにも対応でき、ポイントカードにも対応するものもある。個店で備える場合は、通常10万〜15万円程度。ただ、過去の実績や規模などで無料ないし格安で提供してもらえる場合もある。
普通は、レジとは別なので多少スペースもいる。
一般の公衆電話回線では、1取引あたり20秒以上かかるので、10秒以下でできるISDN回線が望ましい。
■ランニングコスト
2〜3%の手数料を負担
デビットでの売り上げごとにかかる手数料や入金期間は、加盟店契約をする情報処理センターないし金融機関との交渉で決める。
手数料は、売り上げの2〜3%で、買い上げ金額が一定額以上になると、数百円の上限、低い場合は最低25円程度の下限を設ける金融機関や情報処理センターが多い。
情報処理センターを使う場合は、毎月、基本料などを払う場合がある。
このほか、1取引につき普通 円の通信料がかかる。
入金期間は3日から半月程度が一般的。
■顧客情報
加盟店は、デビットカード利用者の顧客情報を、自店で情報処理をする場合はすぐに得られるが、その他の場合は難しいか、経費がかかる。
■加盟店のメリット・デメリット
安心感の提供
メリットとしては、クレジットカードに比べ、手数料が安く、入金期間も短い場合が多い。おつりを出す手間が不要という点はクレジットと同じ。
「キャッシュカードでの支払いもできます」という安心感も与えられる。
デメリットとしては、端末などの導入コストがかかること(情報処理センターなどが負担することもあるが)、現金決済に比べ、手数料が2〜3%かかること(上限あり客単価高ければ比率はかなり小さくなることも)、入金期間も3〜15日かかることだ。
直接的な販促効果は少ない
ポイントカードなどと違って、消費者にキャッシュレスの便利さ以外に直接的なメリットを与えられない。一方で経費は確実にかかり、粗利は減少する。客単価が上がるか、客数が増える見通しがあればいいが、それは難しい。
導入すべきかどうかは、どの程度消費者に便宜を与えられるか、消費者にどの程度浸透するかによるのだろう。
■普及の見通し
意見は分かれている
「何ともいえない」というのが正直なところだ。
1つのポイントは、クレジットカード利用客がデビットカード利用に切り替わるかどうか。
しかし、「クレジットカードの利用者が、デビットにシフトする可能性は少ない。クレジットなら、支払いは後になるし、カード会社から様々な特典が得られるが、デビットの場合、少なくとも現状では発行金融機関から特典が出ることは難しい(出すとすれば、加盟店)」という意見が多く、クレジット利用客がデビットにシフトする可能性は少なそうだ。
では、圧倒的に多い現金支払い客が、デビットにシフトするか。これは、意見が分かれている。
「キャッシュレスがいい、という消費者は既にクレジットカードを使っている。現金で支払ってきたお客がデビットを使うのは、あまりないのではないか」、「手持ちの現金が少ない場合に、金融機関で現金をおろす手間の不要なデビットを使うのではないか」、「キャッシュカードで買い物できるというのは便利。クレジットが嫌いな人を中心に意外に普及するのではないか」などなど。
カギはセブンイレブン
ほかにも、どれだけの企業が加盟店になるか、金融機関や加盟店などがどれだけ宣伝をするか、マスコミでどの程度取り上げられるか、などの不確定要素があり、どの程度普及するかの判断は難しい。
1つのカギは、日本最大のコンビニチェーンのセブンイレブンがいつ扱うか。同社は、他のいくつかのコンビニチェーンと共に、デビット推進協の加盟店になってはいるが、「3月の本格稼働時にはサービスを開始しないのではないか」という見方が強まっている。これは、現金決済が圧倒的で、客単価が1000円前後と低い状況では、デビットの手数料負担は無視できないためだ。
ただ、同社が所属するイトーヨーカ堂グループが、銀行業務を始める計画があり、それが実現する時には実質的な手数料負担は少なくなるので、かなりの確率でデビットサービスを始めると思われる。
会として研究はしておくべき
以上、粗利低下の可能性が高く、消費者への普及も不確定な、デビットカードだが、商店会として研究だけはしておくべきだろう。
「デビット加盟店が増えた場合は、手数料負担をカバーするため、スタンプやポイントを出さなくなる店も出てくるのでは」という声も出ている。
また、ポイントカードを実施している場合は、端末が増えて、レジ回りを圧迫するという問題もある。
ポイントカードシステムの更新や新規導入を検討する場合には、チェックが不可欠だ。
デビットカード導入を、クレジットカードの一括加入の契機とすることも考えられる。
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