スタンプの出し渋り対策と加盟店の拡大策。どこのスタンプ会でも大きな課題である。また、スタンプをきちんと出してきた店が、「効果が見えない。経費がかかるだけでは」と出すことをやめるケースも出始めている。
しかし、出し渋りとは全く正反対の発想で、「何とかスタンプをお客さんに渡す機会をつくろう」と努め、成果をあげている店、会が現実に存在するのも事実である。
その一例が、立川市・羽衣商店街振興組合の狭山園というお茶屋さん。8坪弱、夫婦2人とパート1人の小規模店だが、年間270万円のスタンプを出し、210万円分もの台紙を回収し、発行・回収共に商店会ではトップの実績という。また、5月からは生ゴミ処理機を購入、リサイクルにも取り組んでいる。
狭山園とはどんな店で、どうスタンプに取り組んでいるのか。成果をあげているポイントなどについて調べてみた。
狭山園の概要
■8坪、夫婦2人とパート1人で年商8000万円
創業は、1952年(昭和27年)で今年48年目のお茶屋さん。経営者は、池谷(いけや)健治氏(46歳)で2代目。スタッフは、ほかに奥さんの和子さんとパートの主婦1人(週5日、1日3時間)。
商店街の核店舗的存在である西友の隣にあり、比較的いい立地にある。
店舗面積は8坪弱。休業日は毎月第1から第3木曜日だが、グループや商店会の売り出しなどとぶつかる日はずらしている。営業時間は午前9時〜午後8時。
年間売り上げは、約8000万円で規模の割にはかなりいい。特にここ数年は順調に伸ばしてきた。ただ、99年度のスタンプ購入額は前年比で7%減。
売り上げを伸ばしてきた直接的な理由は2つ。6年前に店舗を改装したこと、同じ年に商店会としてスタンプを始めたこと。
そのほか、夫婦とも商売好き、パートさんもベテランでチームワークがいい。掛川市の有機栽培をしている茶農家と提携して作った独自の2銘柄「陽和(ひより)」(無農薬)と「秋ごころ」(減農薬)を含め、自信を持って勧められる商品を揃えている。お客とのつながりを大事にすること、常に情報を発信していること、などがあげられる。
用もないのに、お茶を飲みに来るお客も少なくない。「おいしい漬け物ができたから」と持ってくる人もいる。
奥さんが編集委員の一人として携わっている『WA!HA!HA!(わっはっは)』というおかみさんたち手作りのタウン紙の取材で知り合った陶芸が趣味の人がいるが、その人の作品を店内に置いて委託販売もしている。
2年ほど前、ある老夫婦が、「車椅子のタイヤがパンクした。いつもならすぐに来てくれる自転車屋さんが都合で出られない。何とかならないか」と池谷さんのところに電話をしてきた。すぐに池谷さんはその家に出かけ、車椅子を自転車屋まで運んで、修理してもらった。
スタンプ活用だけではなく、こういった人柄と商売の基本がしっかりしていることとあいまっての結果といえる。
このことを前提に、どう池谷さんがスタンプに取り組み、成果をあげているかを報告する。
スタンプへの取り組み
■対話の材料に
ただ、100円買い上げごとに出すだけではない。スタンプで参加できるイベントや売り出しのことを話題にする。例えば、先日の七夕の日。近所のお客には、「きょうは台風だけど、それだけ当たる確率が高くなるから7時からの抽選会に来てね」と確認する。こういう調子で、イベントごとにお客と対話して、絆を強めている。
■年6回のDM
はがき持参でスタンプ3倍など
同店では、年に6回はDMをする。そのうち4回ははがき、新茶と秋の蔵出し茶のシーズンは同店制作の情報紙『いっぷく』の拡大版を同封する。
年に2回出すDM・折り込み用の『いっぷく』拡大版。今年の新茶時の『いっぷく』では、お茶がら回収もPR |
DM数は1回に約2000通。はがき自体にも付加価値をつける。年末売り出しの案内は、11月下旬に、年賀はがきを郵送する。普通なら「もう年賀状?」と思われるところだが、同店のお得意さんは、「狭山園のはがきだけは別」とわかっている。
この年賀はがきは1度に6000枚ぐらい購入しておき、春や中元時にも利用する。その際、当選したはがきにはその旨を書いておく。
はがきの内容は、特定商品のキャンペーン、商店会やグループのスタンプイベントの案内などを告知するほか、このはがきを持参すると買い上げ額の3倍分のスタンプ進呈、といった付加価値をつけている。
その結果、DMのヒット率は毎回15〜20%と高い。
お年玉くじ付年賀状を利用した中元キャンペーンのDMはがき(6月23日に発送したので当選はがき交換締切日の7月17日まで余裕がある。3倍サービスを8月15日までとしたのは旧盆時期の帰省みやげなどにも利用してもらうため)
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■月2回は独自の情報紙
DMのほか毎月2回は、『いっぷく』と名付けた自店の情報紙を発行し、来店客に渡している。通常はA5かA4判のハンディーな大きさ。内容は、お茶に関する様々なエピソードと店やグループ、商店会のイベントなど。
イラストも入れ、大きな文字で高齢者にも読みやすくしている。
このほか、商店会や有志グループの印刷物もイベントごとに出しているので、同店のお客さんは、毎月3〜4回は何らかの情報紙を受け取ることになる。
情報紙だけでなく店内には手作りのPOPなども随時出され、口頭での説明と合わせ、お客は同店の商品やスタンプサービス、さらには地域の情報などを得ることになる。
情報紙やPOPなどの原稿と版下は全て池谷さんが自店のパソコンで作る。印刷も殆どは同店の軽印刷機を使う。
■グループ活動で相乗効果
2つのグループが切磋琢磨
狭山園を含めた10店の「8の市グループ」と7店の「まいど」のグループができ、互いに商店街スタンプを活用している。
■スタンプ負担は3%強だが、効果はそれ以上
こうした取り組みにより、同店のスタンプ発行額、回収額は共に加盟店の中でトップを続けている。
商店会でスタンプを始める前は長年、独自のサービス券を出していたが、スタンプ効果と比べると問題にならないという。
多くの機会を利用してスタンプの特別サービスをしているので、同店の売り上げに占めるスタンプの割合は3%を超す。それでも、「2倍3倍サービスなどイベントの日に多くのお客さんが来店している結果。店の売り上げもスタンプを始める前に比べかなり上がった」と気にする様子はない。
「多くの店で集め、使うことができ、いろいろな使い方ができるスタンプ以上に効果のある共同販促事業というのはないでしょう。ほかにも多くの店がスタンプで効果をあげていますから」と池谷さんは、スタンプ効果を強調する。
会の世話役として
■多くの店が活用することが自店にもプラスと信じて
池谷さんは、グループや商店会活動には率先して、企画を考え、運営に当たっている。多くの店がスタンプに力を入れることで相乗効果が増すという考え方から、商店会全体やグループ活動、時にはほかの店のチラシやポスター作成などにも協力する。抽選会などイベントでは率先して会場に出る。
以前、振組の青年部長と事業部長を務めたことがあったが、しばらくブランクがあり、94年にスタンプが始まってからスタンプ事業の中心的役割を果たしている。
■振組会報も自ら制作
昨年、振組役員の若返りに伴い副理事長に選ばれてからは、「組合がどういうことをやろうとしていて、経費をどう使っているかなどを組合員にわかりやすく説明することが大事」ということで、理事会議事録を掲載した振組会報も自分で制作している。
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