『せたがやスタ研ニュース』26号

 消費者からグループインタビュー
 まちづくりへの努力は認めるが、個店については接客や入りやすさに課題

 尾山台商栄会振組


 尾山台商栄会商店街振興組合では、昨年、都や国の支援を得て、グループインタビューによる消費者意識調査を実施した。その結果、「消費者の意識と商店の意識は大きくかけ離れている。特に、接客や品揃え、店への入りやすさなどで課題のある店が多い」ことなどがわかり、同振組では、今年の1月から組合員に呼びかけ、勉強会をシリーズで開催している。
 以下、グループインタビューについて昨年 月のスタ研全体会での同振組安藤理事の報告及び報告書から要約した。

■6グループからヒアリング
 グループインタビューは、メーカーなどが新製品を開発する時にはたいてい実施する方法。
 対象は主婦。年齢別(30代、40~54歳、55歳以上)の3グループそれぞれをさらに来街頻度の高い人と低い人とに分け、合計6グループとした。
 1グループは5~7人。グループごとに部屋に入ってもらい自由に話してもらった。その際、商店街の人間は一切出席せず、第三者の司会者が、どんどん話を誘導した。

■お客との意識のギャップに驚く
 その結果わかったことは、商店の考えていることとお客さんの考えていることが全然違うということ。
 商店街の役員は一生懸命やっていたつもりだが、あの商店街じゃダメ、というお客さんも多い。買い物は、食べ物は溝の口、着る物は自由が丘、武蔵小山など、かなり遠くに行っている。だから隣の商店街を対象に考えるだけではダメ。
 多かった意見は、「武蔵小山商店街は明るく開放的な店が多いが、尾山台では店内を自由に見られる感じの店が少ない」、「殿様商売的な店がある」など。
 しかし、店そのものを大きくするのは殆ど不可能。では、どうしたらいいのかということで、勉強会を始めることにした。
 テーマは親しみやすい店づくり。お客様を満足させる接客サービスや品揃えはどうしたらいいのかなど。

■全店の評価を店名入りで公表
 報告書は昨年10月に作成した(経費は約180万円)。
 大半の個店について名指しの評価があり、理事会で、店名を公表するかどうかを話し合ったが、賛否半々に分かれた。しかし、6年前にもこのような報告書をつくり、その際は店名を公表しなかったため、自分の店の問題と考える店が少なかったので、今回は思い切って公表することにした。
 ほめられた店もあったが、厳しく批判された店も少なくなかった。中には、明らかに消費者の誤解と思われることもあったが、「そう誤解されている現実がある」ということで、割り切ってもらうことにした。
 批判された店の中には、当初、かなり落ち込んだり、反発した店もあったが、時間がたつにつれ、冷静にふりかえるようになってきた。

報告書の要旨

 商店街への評価

[肯定面]
■ポイントカードサービス 
・当商店街の利用促進に効果をあげている
■歩道工事と改修
・街路がきれい、おしゃれという印象
■駐車場設置
・車で来街できるようになった
■ショッピングマップ
・知らない店や入ったことのない店に興味がわく
■その他
・街路樹、ライトアップ、街路の清掃等の環境整備により、「おしゃれで清潔なまち」として親しまれている
・尾山台フェスティバルも好評で楽しみにされている
[不満]
■路上駐車
・大きな問題で事故やけんかの要因になっている
・車にも歩行者にも危険
■歩道
・歩道までのはみだし陳列で歩きにくい
・歩道に駐輪している自転車のため歩きにくい
・駐輪場がないので不便
■駐車場
・大型店等に比べ駐車料金が高い

 個店への評価

■他地域商店街との比較
・近くて便利だが、日常生活に必要な業種が全部は揃っていない
・店内を自由に見られる雰囲気がない
・地元意識が強く閉鎖的な店が多い。店の人と顔見知りになると良好な関係になるが、たまにしか行かないお客だと常連客と差別される感じを受ける
・買い回り関係の店は「購入しないかもしれないが、商品を見たい」という場合に非常に入りづらい。店にほかのお客がいない場合、すぐに販売員に勧められるのではという懸念がある
・入口に開放感がない。間口が狭い店が多いことと、ドアが閉まっている店が多いため
・店頭に気を引くようなディスプレイが少ない。外から見ただけでは、店内の魅力がわからない。店内の変化を感じにくい

ハッピーロード尾山台商店街と大型店の比較
  大型店 尾山台商店街
買い物の効率 1店舗で効率的に買い物できる 商品を揃えるため何件かの店をまわる必要がある
駐車場 便利で使いやすい 駐車場が割高
価格 スーパーは安め 高め
品揃え 豊富で多くの商品から選択できるし楽しさがある、新製品等も入手しやすい 豊富ではない、目的の商品だけを購入する
店への入りやすさ 商品を自由に見られる 商品を見るだけのためには店に入りにくい
接客 どの客にも販売員の対応が平等 常連客との差を感じることがある

ハッピーロード尾山台商店街と他地域商店街の比較
  自由が丘 武蔵小山 尾山台商店街
街の特徴 お洒落な雰囲気で買い物が楽しめる、センスの良い店がたくさんあるる 活気がありわくわくするような楽しい気分で買い物ができる、価格が安い、日常生活に必要な業種が揃う 近くて便利、独自の魅力は感じにくい、日常生活に必要な業種がすべては揃わない
店への入りやすさ 店に入りやすい
購入しなくても自由に見てまわれるような接客、店の間口が広め、入口のドアが開いていて開放感がある店が多め
店に入りやすい 
明るく開放的で、店に呼び込まれるように入っていける
店に入りにくい 
店内を自由に見られる接客ではない、間口が狭め、入口のドアが閉まっている店が多い
営業意欲 商売に対する熱心さを感じ 商売に対する熱心さを感じる 殿様商売的な態度を感じる店がある

 商店街の方向性について

■親しみやすいまちづくり
・気軽に入りたくなるような店 入りづらさの改善
・印象のよい接客 接客態度の改善
■あたたかいまちづくり 中心的理念
・常連客のふれあいの場
・地域の子供を見守る
■ちょっとお洒落、ちょっと素敵なまちづくり
・石畳・街路樹・ライトアップなど 改善事業の成果あり
・日常生活に必要な商品が揃う 業種構成の見直し
・日常生活に潤いを与えるような商品 業種構成、商品構成の見直し
■販売促進
・お祭り気分をつくりお客様を呼び込む努力が必要。
・ポイントカードも、より浸透の努力が必要
■環境整備
はみだし販売の自粛
・路上駐車・駐輪の整理
・駐車料金の見直し

◆マップも制作
 尾山台商栄会振組では99年、「どの店でどういうものを売っているのかわからない」というお客さんのために、「ハッピーロード尾山台ショッピングマップ」を1万部作り、消費者に配布した。
 これは、A4判32ページの多色刷り。経費は約480万円で、振組の負担は30%。
 ポイントカードや駐車場など商店街の事業についての説明と、組合員全店の写真入り紹介。全国各地の商店街のパンフレットを参考に制作した。このデータは、ホームページにも転用できるようにしてある。

◆1月から勉強会を開始
 同振組では、この報告書をもとに、今年に入って勉強会を始めた。
 テーマは、「どうしたら売り上げが上がるのか」、「クレームをつけたお客さんを自店のお客にする方法」、「入りやすい店づくり」など。
 第1回は1月17日。当初、出席者は10数名かと思っていたら25名も参加した。3月末までに3回程度開催の予定。

  26号目次に戻る  バックナンバー一覧に戻る  スタ研トップに戻る  HOMEに戻る