『せたがやスタ研ニュース』28号【講演】

講演

 金融機関からみた、商店街・スタンプ事業の現状と今後への期待

  昭和信用金庫理事(元烏山支店長)・神保和彦氏

 3月23日の全体会では、昭和信用金庫理事・業務部長(元烏山支店長)の神保和彦氏から、今の時代の商業環境や金融機関としてのスタンプ活用などについて語ってもらった。


■都心回帰の時代に
 私が烏山の支店長時代は、基本的には烏山商店街の中の個店の一店長の立場という考えで商店街の皆さんとお付き合いさせていただいた。金融機関はサービス業だから商店街と一緒にやるというのが私の基本的な理念だ。
 今は、バブルがはじけ、失われた10年のツケが来ていて大変な時期だ。うちも金融機関として非常に苦労しているので、皆さんの苦労はよくわかる。金利がコンマいくつの時代になると、正直言って商売が非常にやりにくい。10年間のツケが戻るのは大変だと思うが、ここにきて株が上がってきているし、実際に都心では公示価格の一部が上がったと聞いているので、景気は少しずつではあってもなんとか止まるだろうというのが私の率直な考え。銀行の不良債券は31兆88000億円ある。これを金融機関がどうやって処理していくかということが一番の問題だ。
 土地に関しては、まちづくりがうまくいかずに商店が衰退したようなところ、価値がある場所ではなくなったと思われたところは下がっている。商売に価値があると思われるところ、住宅街でもそれなりの価値があるところは上がっていく。 
 最近は、都心部の百貨店の売り上げが伸びてきたという。今までは百貨店はダメだと言われていたが、大丸東京店が11年ぶりに黒字になったり、新宿の三越も高額商品が売れているということで、都心のデパートがここにきて伸びてきた。マンションでも都心がどんどん売れているという。都心の新しい環境の中でゆとりのある生活をする、それを金で買うという時代になった。

■価値あるものを信念を持って売る
 何の商売でも同じような形でやっていてはダメだ。オフィス2020代表の緒方知行氏は、「我々の商売の敵は同業他社ではなく、時代とともに変化する消費者のニーズだ」と言っている。お客さんの考え方がどんどん進んでいて、情報もどんどん入る、情報を的確につかんで自己改革をしていかなければいけない。お客さんの変化を的確につかんでいるかどうかが今一番大事だ。
 もう一つ、これも緒方先生が言われたことだが、「今の時代は弱肉強食の時代ではない」と。私共は信用金庫でボリュームから言えば都市銀行に負ける。三越の包装紙とイトーヨーカ堂の包装紙では、もらった人は三越のほうを喜ぶ。そういう心理が働く。しかし今の時代はそれだけでは通用しない、適者生存の時代になっていて多様性が必要だ。 セブンイレブン会長の鈴木さんは、「自己主張がない売り場は売り場とは言えない」と言っている。今日のような商売の環境になればなるほど、それぞれの商品に魅力がなければお客さんについてもらうことはできない。それなりの価値のあるものを、追求に追求を重ねて売っていかなければいけない。
 鈴木さんは365日、自分の昼食にセブンイレブンの弁当を試食している。毎日毎日違った弁当を食べて、合格点を出したものが店に並ぶ。大手がそこまで努力しているのだから、一般の方は2倍3倍の汗をかかなければダメ。競合店が何を売っているかなどは関係ない。もっと価値のあるものを自分が信念を持って売っていけばいい。その代わり、毎日毎日試食するというくらい努力している。このくらいやれば自信がつく。
 とかく、「時代が悪い」「金利が低くなったから非常に厳しい」と他人のせいにしてしまう。これがまずい。自分を振り返ってみてどうかということを考えていかなければいけない。

■まわりの意見を取り入れる
 自分の考え方や経験だけで10年20年と商売をやってきたが、今はそれが通用しなくなっている。私も32年間、今の仕事をやっているが、若い人の意見を聞くようにしている。
 商売をやっている方も経験だけではダメなので、新しいものをどんどん取り入れる。それにはどうしたらいいか。いろいろな人から意見を聞く。一番いいのは身内に聞くこと。奥さんや子供も買い物に行くんだから。まわりの方からいろいろな意見を聞きながら商売をやっていくのがいい。

■ダイヤスタンプの活用
 私が烏山に行った時は、烏山駅前通り振組のスタンプ売り上げが2億5000万円近くになった時だった。これを逃す手はないと考えた。
 それまではティッシュペーパーとかサランラップなどを業者から買ってお客様に進呈していたので、何のメリットもなかった。お客様の中にはそんなものは要らないという方もいた。こんなものを出すのはもったいない、
 そこで私が目を付けたのが烏山のダイヤスタンプ。スタンプは烏山の第二の通貨と言われているが、まさしくその通り、大変な威力があった。
 私の目標は、スタンプ加盟店の売上順位で5本の指に入りたいというものだったが、それにはスタンプを1000万円くらい買わないといけない。しかし、私には、うちが出したスタンプは必ずうちに戻すという気構えがあった。うちがスタンプを100万円買えば100万円預金として戻る、と。
 現在は、定期積金を作ってくれた人にスタンプ100枚進呈、窓口に来た方にありがとうシール進呈、年金を振り込んでくれた方にもスタンプ進呈というように、活用している。
 お客様に粗品として出す「ありがとうシール」(シール5枚綴り、12円)は、ミシン目を入れたこういうものを作ってほしいと田中省一さんに相談に行ったところ、すんなり受け入れていただいて実現したもの。この時は非常に嬉しかった。これがスタンプ活用のとっかかりとなった。
 その当時から私の頭にあったのが城南信用金庫のスーパードリームで、これは懸賞金が10万円当たるというもの。
 しかし、金を使うのはもったいないので、うちではスタンプを出そうと考えた。理屈は城南のスーパードリームと同じで、10万円以上の定期預金をすると10万円1口で抽選、特等はスタンプ1万枚、100万円買い物相当のスタンプが当たる、という売り込みでやった。
 「烏山スタンプ定期」というネーミングやデザインもすべて職員が考えた。意思が統一でき、皆の気持ちが一緒になってスムースにできた。年2回の抽選会のうち1回は烏山スタンプ感謝祭の時に公開で実施。これも、感謝祭でやらせてほしいと図々しく頼みに行き、皆の前で抽選させてもらっている。
 スタンプは、この定期だけで年間288万円。集めている人は必ずこの定期に切り換える。集めていない方は金利をもっと上乗せしてくれと言うが…。
 地区の皆さんが積極的にスタンプを活用してくれれば、うちでも間違いなく応援し貢献したい。

■顧客の組織化を
 今は、デパートでも航空会社でもスーパーでも皆ポイントカードをやっている。女房はポイントカードを10枚くらい持っていて、ポイント何倍という広告が入ると、間違いなくその店に行く。
 ポイントというのは顧客の組織化につながる。スタンプに興味がない人は他の銀行に行くかもしれないが、スタンプが欲しい人は必ずうちの店に来る。規模が大きくなればなるほどスタンプ、ポイントは定着する。
 いきなり顧客の組織化をやろうと思っても無理だが、うちの店では、「昭和レディース会」という奥様の会を作っていて、現在24店舗で会員は2224名。シルバー層を対象にした「年金友の会」の会員は3521名。会員の方には日帰り・一泊旅行、明治座観劇などのご案内をする。これが一つの組織化。商店街でも組織化をするということがポイントで、スタンプが原点となる。
 皆さんも団結をしながらやっていってほしい。

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