今年度第2回目の集中セミナーが 月8日、12日、16日の3日間、いずれも午後8時半から、三軒茶屋の区役所分庁舎3階の教室で開催された。
今回は、イベントをテーマに、8日は、三軒茶屋銀座振組、祖師谷振組、きぬた本村振組の3商店会からの報告と質疑応答、12日は、神奈川県川崎市登戸東商店会役員さん3人による報告、16日はフリートークという内容で行われた。
本号では、8日と16日のポイントを報告する(12日の報告は次号に)。
■3商店会からの報告
1・三軒茶屋銀座振組・笠井氏
個店イベントに3万円助成、各店が独自に抽選会
個店のポイントカード活用意欲を高めることを目的に、各店が独自に自店の商品ないし買い物券を進呈する抽選イベントを10月から1月にかけ実施中。
相模原市大野台商店会の企画を参考にしたもので、1店あたり3万円をポイントカード部会から補填した。今回の参加店は約10店。
実施日は原則として店ごとに変え、「さんちゃカード」(ポイントカード)持参で買い物したお客に三角くじを渡し、独自に設定した金額の買い物券を等級に応じて(店によっては一律)を3万円分進呈するという企画。宣伝は共同チラシを1500枚ほどつくり、各店で来店客に配ったほか各店ごとにポスターを掲示した。
各店の独自性を消費者にアピールできたことで、参加店の評判はおおむねよかった。
1店3万円の支援は、年間のポイント発行額が600万円弱、販促費が120万円程度の会にしては大盤振舞だったが、第1回ということでもあり、各店の関心を高めてもらう意味もあってそうした。支援内容は考え直すが、今後もこのような個店支援イベントは実施したい。
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このチラシ(B5判1色両面)を全店で1500枚来店客に渡した
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2・祖師谷振組・上田氏
毎月3000円券100名に当選も効果は?
2年ほど前から、加盟店で利用された台紙から、毎月抽選で当たった100名に3000円の買い物券を3カ月ごとにまとめて進呈(郵送)している。この買い物券は2週間有効で、93%が使われるなど当たったお客さんには好評だが、加盟店にはいまひとつピンときていないようだ。
![](30-02.jpg)
買い物券
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*上田氏の報告に対して
bヘがきで連絡、来店促し、加盟店の意識高める方法
この方法にはいくつかの疑問が投げかけられた。
第1に、買い物券を直接、当選者に郵送していること。
下高井戸振組でも、加盟店で利用された台紙から抽選で、毎月景品を出しているが、祖師谷振組と違うのは、当選と当選台紙使用店を知らせるはがきを毎月送り、当選者はその店に行かないと景品をもらえない仕組みにしていること。
これで、来てもらった店も、スタンプの効果を改めて実感できる。
第2に、祖師谷振組では毎月抽選しているのに進呈は3カ月に1回ずつにしていること。「3カ月分まとまって出回るのでインパクトが強くなる」というためだ。「毎月抽選をしているのだから、進呈も毎月にしたほうがいいのでは」という意見も出された。
li品は買い物券?それともスタンプ?
第3に、景品を買い物券にしていること。しかも毎月1人3000円100名というのは、豪華版だ。
対照的なのは、スタンプ500枚を毎月20名という下高井戸振組。
これは祖師谷振組の場合ほかのスタンプイベントが少ないが、下高井戸振組は多いという理由もある。
買い物券の場合、加盟店でしか使えないが、スタンプはイベントなどにも使われる可能性がある。また、買い物券はそのまま使えるのに対し、スタンプは台紙に貼る手間が必要だが、会のスタンプ発行増に多少なりとも貢献し、消費者にとってはイベントという選択肢が増える。
q芬抽選企画の比較
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祖師谷振組 |
下高井戸振組 |
景品 |
毎月抽選
3000円の買い物券100本 |
毎月抽選
スタンプ500枚20本 |
連絡 |
買い物券郵送 |
引換はがき |
交換 |
そのまま使用 |
台紙使用店 |
進呈 |
3カ月に1回 |
毎月1回 |
3・きぬた本村振組・渋澤氏
買い物券サービスで加盟店交換増加
これまで台紙での買い物が少なかったが、6月から加盟店で利用された台紙から抽選で毎月10人に500円の買い物券を進呈するようにしたら増えた。
![](30-03.jpg)
買い物券(加盟店で利用された台紙から毎月抽選で10名にプレゼント)
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買い物券は、額面500円で同振組内のスタンプ加盟店でのみ使用できる。有効期間は1カ月。
景品に区商連共通商品券を使うことも多かったが、どの店で使えるかはっきりしないことや、店によってはいやがることもあって、あまり人気がなかった。その点、買い物券は人気がある。
tモ「物券発行前と後の台紙利用内訳推移
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以前 |
以後 |
預金 |
60% |
20% |
加盟店 |
30% |
70% |
イベント |
10% |
10% |
*渋澤氏の報告に対して
qS店利用できれば問題なしc
烏山駅前通り振組の田中さんと中里通り振組の茂木さんから、「全店で共通商品券が使えることになっており、加盟店にも消費者にもそれほど抵抗はないようだ」との説明があった。
イベント企画の評判
[良かった企画]
交換商品としては、毎年8月上旬に実施したハイウエイカード、10月の新米、缶ビール、正月の800円シールセール(台紙に貼ると加盟店で800円で使える)。
中元・歳末の景品では、家電製品、高級自転車、日用品(食料品、醤油、砂糖、台所洗剤等全て)。
桜まつりでは、桜の開花宣言予想、駒沢大学吹奏楽部によるパレード、子供向けのゲームコーナー、フリーマーケット、模擬店。
[課題が残った企画]
「日帰り旅行に必要な10冊という設定はきつい」という声が多く、現金と組み合わせの参加も認めることも。
交換商品では、商品券が最近は不評。ゴミになりそうな置物等もダメ。
■その他の課題
1・人材の不足・固定化
イベントなど事業に参画・協力する人材の不足や固定化という悩みは、多くの商店会で共通している。
年々地元生え抜きの商業者の減少が続き、後継者のいない店も増え、人手に余裕のある店が少なくなったこと、それらに関連して、「商店会活動にさける時間がなくなってきた」という店が増えていること、そして商店街の衰退・低迷などが背景にある。
様々な人が参画する楽しい商店街活動は?
楽しく元気な商店街活動を展開するというのは、もはや無理なのだろうか?
「商店街が元気になってほしい」という地域住民が、一緒にまちづくりに参画している例もある。
板橋区のハッピーロード大山振組が最近実施した消費者アンケートの中で「商店街活動に何らかの形でお手伝いしたい」という回答が20%近くあったという。
当然、商店街の中にもそのような人材はいるはず。コミュニケーションをよくして、まちの将来を語り、活動していく人材を結集できないものか。
イベントなどはそのいいきっかけになるはずだ。
「根本は人間関係」
中里通り振組の茂木理事長は、「商店街活動の根本は人間関係。この答は、 月のスタ研での福田さん(相模原市大野台商店会前会長)の話にあった」と指摘した。
別の会の役員からは、「過去の理事会では、とっくみあいまであったことがあり、『あいつが理事の間は協力しない』という人もいたと聞いている。今は青年部のOBが理事の大半を占め、仲はいいが」という発言も出された。
2・長くためるお客が減少?!
昇給やボーナスの減少などによる所得の伸び悩み、失業率の増加などで多くの消費者が先行き不安感を持ち、消費に慎重になっている。
このため、「遊びより日々の生活」ということで、スタンプをじっくりためて、旅行など大型のイベントに参加するという消費者が減り、1、2冊たまると日常の買い物などに使う消費者が増えている。その上、競合激化や価格低下などで全体的に売り上げが減少、その結果、各商店街のスタンプの発行額も減少傾向にある。
バス旅行や観劇定員を縮小
烏山駅前通り振組の山田氏は、「数年前は日帰りバス旅行を1日に3コースまとめて実施したり、劇団四季のミュージカルに100名以上招待の企画を実施してもすぐに定員が埋まったものだった。しかし、この1、2年は定員に達しないイベントが増えているので、日帰りバスは1台、ミュージカルも50名などと定員を減らしている」と報告。
この報告を受け、「台紙だけでなく、現金と組み合わせて参加できるイベントも考えるべきでは」との意見も出された。
3・まだまだ宣伝不足
「知らなかった」の声続出のサイコロ抽選会
祖師谷振組の上田氏からは、「サイコロ抽選会の反省」の報告があった。
スタンプ加盟店が、11月11日の「そしがやフェスティバル」で実施した恒例のサイコロ抽選会について、多くの消費者から「こんなことやるなんて知らなかった」という声が続出した。
この抽選会は、台紙1冊で最高3000円、最低でも1000円(500円のプレミアム)の買い物券ないし共通商品券が当たるサイコロ投げが1回でき、総額200万円分がなくなるまでは同じ人が何度でも並び挑戦できるという大盤振舞の企画。
何年か続けている企画だが、今回は時間がいつもより長引いたせいか、通りがかりに見て、「知らなかった」というお客が多く出たようだ。
このため、「この次は店頭ポスターだけでなく、折り込みチラシをやろうか」との声も出ている。
折り込みチラシ続けても知らない人が
下高井戸振組の上保氏は、「チラシを入れても結構知らない人がいる」と報告した。
下高井戸のスタンプ事業部では、年に3、4回は2万6000枚の新聞折り込みチラシをまくほか、毎月のように各店から手配りの小型チラシを数千枚ずつ出しているが、イベントについて「知らなかった」という人が結構いるほか、始めて7年たっても台紙の使い方を知らない人が少なくない。
引っ越してきたばかりという人もいるが、古くからの人でも「知らなかった」という人がいる。
チラシを見る人が減っているのか、見ても商店街は利用しないという人が増えているのか、気になる。
4・加盟店回収の促進
多くのスタンプ事業に共通しているのが、「いかに加盟店で台紙(ポイント)を使ってもらうか」という問題。
「まじめに出しても、お客さんは集めたスタンプをうちで使ってくれない。これでは損するだけ」、「うちより発行額が少ないのに、回収額が多い店がある(おもしろくない)」という不満は少なくない。
その対策は?
iとしてプレミアム 消費者が台紙を加盟店で使った場合に、スタンプ2倍などのプレミアムを常時つけることで、消費者の加盟店利用を促進する。
中里通り振組や下高井戸振組がこの手法を使っている。いずれも1倍分は会が補填している。
c_ブルサービス 加盟店で使われた台紙に2倍サービスをしたうえに、抽選で毎月一定数の台紙に買い物券やスタンプを景品とする。これは台紙への氏名・住所の記入促進にもつながる。
区内では、中里通り振組や下高井戸振組、祖師谷振組、きぬた本村振組などが実施している。
lツ店単独でも 個店独自で通常500円の台紙を600円で回収したり、3倍サービスをするという方法もある。
中里通り振組の茂木理事長の店(肉のモリヤ)では、商店会有志(ハッスル会)で毎月2回金曜と土曜に実施する共同チラシにほぼ毎回、同店の欄に700円シールを2枚つけている(有効期間は翌週の火曜まで)。
この際、シールを貼った2枚の台紙と普通の台紙を一緒に持ってきて使うお客さんもいるという。
こうした工夫の結果、同店の台紙回収額はダントツの1位で、固定客の確保にも役立っている。
ooすことで効果 仮に台紙の回収がないとしても、きちんと出し続けることで、消費者に「あの店は必ずスタンプをくれる」という信頼感を与える効果が期待できる。スタンプを集めているお客は、価格や接客などほかの条件にあまり差がなければ、「現金」で利用してくれる。
au利用歓迎」をアピール 単価の高い商品を中心に扱っている店では1冊500円程度の台紙が使われる確率は少ない。それでも、「現金と組み合わせても使えます」といったことを日頃からPRして、使われている店はある。
気持ちよくスタンプを出す店、「台紙を使いやすい雰囲気」をつくっている店には台紙も集まりやすい。
「お客さんは業種ではなく、使いやすさで店(台紙を使う)を選ぶ」(岩切氏)。
これは、共通商品券でも同様のことがいえる。
5・発行・回収の連続
台紙で参加のできるイベントを数カ月先に設定しておき、それをPRしながら、その前に、「全店スタンプ倍セール」を実施、倍率は最低2倍、上限なしといったイベント(売り出し)を連続させることで、スタンプファンの購買を促進する手法だ。
これは数年前のスタ研全体会で何回か講演した商業コンサルタントの金尾敏郎氏が力説したことでもある。
「年末の商店街スタンプ特別イベント(台紙冊数に応じて各店が大サービスの商品交換)をターゲットに、(1)1カ月前から2倍サービス(2)特別イベント注文客に3カ月有効の3倍サービス券を進呈、それを春のスタンプイベントにつなげる」(下高井戸振組の赤松屋米店)といった個店独自の活用法もある。
6・目標設定と結果の評価
イベントは、「今年も時期がきたから」というマンネリに陥りがち。せっかく、手間と費用をかけて実施するのだから、目標の設定と結果の評価をしっかり行うことで、以後の事業に生かしたい。
どう目標を設定し、評価をするか。今後のスタ研の重要なテーマとなるのではないか。
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