スタ研では今年度第1回目の集中セミナーを6月17日と21日の2日間開催した。今回のテーマは、「最近の大型店のポイントカード戦略」。
商店会だけでなく、大型店・チェーン店のカード戦略にも詳しいと思われるポイントカード会社2社の営業担当者に話をしていただき、それをもとに意見交換をする企画だ。
1日目は、ゼネラルビジネスマシン(株)(GBM)の磯貝徳彦氏、2日目は、元日本カード(株)の江川友浩氏に講演していただいた。
本号では、多機能カードの是非、売り上げ貢献度の違いに応じたサービス手法を中心に 年間の営業実績に基づいた話をしていただいた、江川氏の講演要旨を中心にお送りする。
わかりやすく負担少ないポイントカードシステムを
江川友浩氏・住友商事映像メディア事業部課長代理(元日本カードM東京支社)
たんたんと、そしてソフトな語り口の江川氏だったが、講演にはスタンプ・ポイントの極意が山ほど詰まっていた
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多機能・顧客情報も活用しないことには
カードシステムというと、多機能で、早く詳細な顧客情報が収集できるものが理想というイメージがある。
確かに、ポイントだけでなく、プリペイドやクレジット、デビットカードなどのサービスが同じ端末ででき、クレジット会社や金融機関との提携によってはカード自体も1枚で済み、詳細な顧客情報が分析できるカードシステムは、経費等の負担に耐え、使いこなせれば望ましい。
しかし、全国で 以上の商店会が多機能でオンライン、膨大な顧客情報が収集・分析できるカードシステムを導入したが、成果を上げている例は殆どない。負担が重くやめてしまったケースもいくつかある。
結局、導入・維持費用が少なく、操作も簡単なシステムとし、ポイントに絞るのが現実的といえる。
「FSP」 貢献度で顧客を差別化
顧客情報は、(業種や考え方等の異なる店の集合体である)商店会より一企業のほうが活かしやすい。
その顧客情報について近年、アメリカで浸透し、日本でも多くの企業で導入されつつあるシステムがFSPである。Fは、Frequent
の略で「しばしば」という意味(Sは、Shopper 、Pは、Programs)。
これは、顧客を一律に扱うのではなく、店への貢献度(買上額)の違いにより、店からのサービスにも違いをつけるという考え方だ。
実際、店の売り上げや利益に大きく貢献するのは、上位2、3割の顧客である。だから、そのような顧客を自店にいかに引き続けるかが経営の重要な要素の一つといえる。
新規客開拓以上に大切な現顧客の維持
また、上位の顧客はあまり他店を利用しないが、下位の顧客の離脱率は高い。
アメリカのスーパーマーケットのデータでは、初の来店客の半分はその時限りという。その後も引き続き来てくれるお客は少数しかいない。こういう上位の顧客を離さないようにしなければ店が安定しない。新しい顧客を得るためにチラシだバーゲンだとやっても、結局来るのは下位の顧客。新規の顧客を取るには今の顧客を維持していく経費の5倍もかかる。
目に見える差別化は嫌われる
貢献度でサービスに差をつけるのは当然だが、といって貢献度の低い顧客をぞんざいに扱っていいわけではない。
アメリカの「フードライオン」というスーパーは、客のランクによって違う段階別価格をプライスカードに表示した。例えば、ある同一商品の販売価格をゴールド会員は9ドル、シルバー会員は
ドルというように。これは、アメリカでも嫌われた。現在、ほとんどのスーパーでは優良顧客の心をくすぐる手法で見せる部分と見せない部分をうまく織りまぜている。
体力勝負のできない店は顧客の差別化で勝負を
「お客様は神様です」とすべての顧客を平等に扱う典型はウォルマート。しかし、これができるのは、ウォルマートのように徹底的な効率化によるコストの削減でさらに価格を下げるという手法で勝負できる体力のある企業だけ。
それができない企業こそ、顧客を絞り、差別化したサービスを考えていくことが重要だ。
イベントは自店で考える
個店は、商店会がどういうイベントを企画してくれるかなんて期待していたらダメ。自分の店がどう使うか、ということを考える。そこからお客さんとの会話が生まれ、その会話の中からお客さんの要望を吸い上げて、それを自分の店や商店会全体のイベントとして組み込んでいく。これが一番確実。
エゴを乗り越えてまとまる
商店会というのは、皆がサラリーマンのように企業の中で研修などを受けているわけではない。考え方も店の規模も違うし、金を持っている人もいない人もいる、情報化とかコンピューターが大好きな人もいるし大嫌いな人もいる。
そういうものを乗り越えて皆で力をあわせることができる商店街というのは最終的に強い。
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