『せたがやスタ研ニュース』37号

製造販売で勝ち残りへ!
スタンプは標準装備で出すのが当然

 熱血店長・田中康蔵氏講演報告(3/19スタ研全体会より) 
 千葉県流山市・江戸川台ふれあいスタンプ会会長・豊園店長

 
 熱のこもった田中氏の講演に聴き入る参加者たち
 

 スタ研では3月19日午後8時から今年度最後の全体会を開催。今回は、千葉県流山市の江戸川台ふれあいスタンプ会会長で、お茶の豊園店長である、田中康蔵氏(38歳)の講演を中心とした。
 「スタンプは標準装備で出すのが当たり前」、「商店街でホームページをやるのも普通にやってはダメ。いい情報を毎週のように出し、読者とEメールできめこまかいやりとりができるようでないと」、「商品を右から左に流すだけの商売はこれから難しくなる」等々挑発的な発言がポンポン出てきた。
 しかし、体験に裏打ちされた発言ばかりで、参加者の多くは熱心に聞き入っていた。経堂農大通り振組の村上理事長などは数日後に、江戸川台の田中さんの店まで訪れたほど。
 以下、田中さんの講演内容を紹介する。
(ふれあいスタンプ会や豊園の基本的なデータについては、本紙36号を参照ください)

 スタンプ会
 20代でスタンプ会長に、組織・事業を大改革

 私は、小学校の時から身長が170センチあり、走るのが特別早くて、将来はオリンピックと言われたほどだった。日本記録もつくった。
 中学までは順調だったが、高校に入って100メートル走が10秒台後半と遅くなった。「つぶれた田中、負け犬の田中が走っている」という話が耳に入り、悔しい思いをした。陸上はこの時、終わった。今はたまにジョギングをする程度。
 大学は商学部を選んだ。そして、これからは絶対に人に負けないぞと思った。
 大学卒業後、菓子専門学校に1年通い、それから静岡のお茶農家で2年近く修行後、父親の経営する茶小売店に入った。
 すぐに商店会(江戸川台駅前商店街振興組合)の青年部に入った。飲みにいったり、ゴルフ行ったり野球やったりという活動でなかなか楽しいと思った。
 ところが翌年も同じような活動。商店会のイベントのお手伝い以外、販促事業は殆どしない。自分たちから提案してということもない。親会から活動費をもらっているが、大半が飲食に使われる。
 3年目に青年部長になり、いろいろな計画を立てたが、誰もついてこない。そんな青年部なら意味がないと解散した。
 その後、「田中、そんな元気なら親会に入ってこい」と勧められ、振興組合の役員になったが、1年たって、「これなら青年部と同じ」と思うようになった。
 その次の年(94年)にスタンプ会(駅前振組有志で構成)から「会長やってくれ」と言われた(初代会長が病気がちでほかになり手がいないということで)。
 その時に「役員が自分の親ぐらいの年代の人ばかりで、やりにくい。今の役員が全員やめ、新役員は自分で選ばせてくれるなら」と条件をつけたら、のんでくれたので受けた。20代の終わりに近い頃だった。

旧役員全員退陣、会合費削減、イベントに
 会長になってまずやったことは、(1)役員7名全員を20代の若手にした(2)会合の飲食費などを殆どなくし、浮いた分を全額イベントに回した(3)ルーズだったスタンプ会計を見直し、発行・回収状況の分析をきちんとしてイベントなど宣伝費にどれだけ使え、どこまで残すかを計算して年間の事業計画をつくった、など。
 若手に対しては、「この地域で商売をやる気があるなら、スタンプ会活動しようぜ。やる気がないなら商売やめろよ」とぶつけ、けんかするぐらい本気の人をピックアップした。どこでも本気でやるという人間はいる。
 また、スタンプ抽選会などでは、役員たちが会場に出て、当選者には「おめでとうございました」と拍手をして盛り上げるようにしたり、女性役員の発案で近くの人気レストランのランチ券なども交換できるようにしたりした。
 2年後の96年には、印字式のポイントカードに切り替え、同時に加盟店の範囲を駅前振組だけでなく、駅周辺に広げた。

一流デザイナーにマップ依頼、会の顔に
 妻の知り合いで、ゆうパックカードのデザインをしたデザイナーに、同じようなイメージの地図をスタンプ会用につくってもらった。
 デザイン料は100万円のところを30万円にサービスしてもらった。
 この地図はスタンプ会の顔としてイベントなどのチラシに使い、わかりやすく可愛いデザインで子供や女性に人気がある。スタンプラリーなどで店を回る時の地図としても利用されている。未加盟店は建物を入れずに芝生にしているが、掲載してもらいたいということで加盟した店も数店ある(加盟店の増減はパソコン画面上でできる)。

 「楽しくわかりやすい」と好評の加盟店マップ
  
 
継続し、浸透させることの重要性
 ポイントカードの付加価値づくりとしては、バス旅行、観劇など年数回の招待イベントのほか、満点カード抽選会などを毎年実施している。
 バス旅行などは、超豪華な昼食を出すなど大盤振る舞いでイメージアップを図っている。
 ちょっと変わった売り出しとしては、「ちょきちょきセール」がある。各店から、ポイント倍サービスや特価品など、独自のサービスを提供してもらって、それをチラシに印刷する。消費者は買いたいものを切り抜いて各店に持参するというもの。一種のクーポンセールだが、毎回好評を博している。 
 また、東武カード、東京ディズニーランドパスポートなどの常時交換チケットも、最近は人気が高い。
 「同じイベントを続けると飽きられる」と新企画を取り入れるのはいいが、1、2回でやめるのは、「やっと覚えてくれた人が来なくなる」という問題がある。多くの消費者に認知されるには時間がかかるからだ。

大事なのは愚直進呈
 私が会長を引き受けてから9年、最初の数年は加盟店も増え、右肩上がりだったが、近年は郊外型店舗の影響などで閉店する店も増え、ピーク時は年間3000万円ぐらいあった発行額が、最近では2000万円ぐらいになった。
 それでも、ポイントカードは効果がある。愚直と思われるぐらい徹底してポイントを進呈すること。
 中には「ポイントは要らない」というお客さんもいるが、うちの店では、レシートに印をして、「集めている知り合いにあげてください」ともらってもらっている。
 
スタンプは標準装備品
 ポイントやスタンプは商売の標準装備。つけるかどうか考えるのではなく、つけるのが当たり前という考え方で私は取り組んでいる。
 うちの店では年間400万円近くポイントを出している。無駄を嫌うおやじ(社長)も、「ポイントは気持ちよく出せ」といってくれる。
 そのうえで大切なのは個店の品揃えだと思う。それも右から左へ商品を流すだけの商売では大手に対抗するのはこれからますます難しくなる。

 「これからの商売は製造販売」
 
設備購入し、自家焙煎、自家製造で業績アップ

1500万円近くかけ、店内に「製茶工場」
 うちはお茶屋だが、純小売店というより、製造小売店という考え方で
やっている。
 お茶は、大ざっぱに言うと、(1)農家がお茶を摘み、すぐに荒茶工場に持って行き、蒸す(荒茶)(2)ごみや茎、粉などをとり、最後に乾燥焙煎する(製茶=普通は問屋)(3)小売、という3つの流通過程がある。
 大多数の小売店は、(2)の製茶屋から仕入れて売る。製茶屋は小量を製茶したのではあわないので大量に製茶し、保管する。
 ところがお茶は生ものなので、時間がたつと味が落ちてくる。
 ペットボトルのお茶がシェアを伸ばしているのもそれが一因だ。 
 そこでうちの店では、製茶ができる設備をつくり、新鮮なものを安く売ることを考えた。「リスクが大きい」、「技術の修得が大変」などと反対されたが、協力してくれる業者を得て、3年ほど前に店舗の奥10坪弱を工場とした。
 機械や改装費などで1500万円近くかかった。当初は技術的に苦労したが、やっているうちに覚えてきた。今では3割ぐらいはうちの製茶品(自家焙煎)。
 製茶は一度に数十万円分を扱うので神経を使うが、お客さんの笑顔を想像すると勇気が湧いてくる。
 産地以外の小売店で製茶をしているのは私が初めてだと思う。だから毎日のように同業者が視察に来る。

製造小売の原点は落花生
 自家焙煎はお茶が始めてではない。私が店に入って4年目の92年に、落花生の焙煎機を購入したのが最初だった。
 当時、千葉産の落花生ははるかに安い中国産に押されていた。何とかしようと、産地、千葉県八街の業者のところに交渉に行った。その時に見た、デモ用の機械をその場で借り、店へ持って帰って焙煎してみると、いいにおいがまわりに広がって味も素晴らしい。
 店の前で声をかけ、子供たちにあげてみたら、口コミで広がり、親たちが買いにきた。デモ用機械なので売るほどはつくれない。そこで、中型の機械を購入して、店頭で焙煎したところ大人気。年末の贈答時期などは焙煎が間に合わないほどになったため、おやじの了解を得て、1日300キロ焙煎できる大型機を150万円で買い換えた。
 お客さんはうまいと思えば高くても買う。おみやげ用などはなおさら。

コーヒー豆は年間7トン焙煎
 コーヒー豆も自家焙煎。うちの売れ筋は100グラム150円。味と価格には絶対の自信がある。
 コーヒー豆の原価は、仕入れる量にもよるが、うちは1キロ320円。焙煎の目減りが2割としても100グラム40円でつくれる。
 しかし多くの店では、200グラム500円〜600円で売っている。これでは売れなくなって当然。
 おやじが売っていたころは月に30〜40キロだったが、今ではその10倍以上、年間7トンぐらい焙煎する。機械は2回買い換え、店内に焙煎室もつくった。
 
ソフトとアイスも製造
 数年前からは、ソフトクリームとアイスクリームの製造機械を購入して製造している。一般的には60日持つ牛乳を原料にしているが、うちは生のクリームと砂糖、牛乳を使っているので、ショートケーキのような味がする。これらの材料は、7日ぐらいたつと劣化するので惜しげなく捨て、常に新鮮な材料を使うようにしている。
 アイスは、抹茶、落花生など 種類。味はハーゲンダッツに負けないと自負している。アイスは1年中売れているが、うちのネット通販(楽天市場)で一番売れるのもアイス。この1年で5万個ぐらい販売しているが、まだまだ伸びそうだ。
 千葉県成東町の石橋農園という農園の苺を使ったアイスを、利益なしで限定販売したら飛ぶように売れた。
 都心のすごい専門店でないと食べられないようなものを、江戸川台というローカルな地域で、当たり前のように販売する体制をつくるのが私たち商人の使命だと思う。
 お茶、落花生、コーヒー、アイスクリーム、ソフトクリームなど製造販売をしているおかげで、うちの売り上げは伸びている。一方で、仕入れ商品の売り上げは下がっている。
 今後は、海苔を自店で焼いて売りたい。
(インターネット通販の話などもありましたが、紙面の都合で省略)


昨年夏から楽天市場に出店。月商150万円ぐらいに伸びてきた。画面の見やすさも大事だが、7割はお客とのEメールのやりとりで左右される、というのが田中さんの実感(同店の楽天HPトップページ) 


  37号目次に戻る  バックナンバー一覧に戻る  スタ研トップに戻る  HOMEに戻る