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 8坪弱のお茶やさんが1日でスタンプ台紙を768冊回収

  東京都立川市羽衣商店街・狭山園

 昨年12月の第4土曜日、27日、東京都立川市・羽衣商店街内のお茶屋狭山園さんの年末セールを取材させていただいた。この日は、毎月第4土曜に実施している商店街全体の売り出し日。このうち、40店弱で実施しているスタンプ「ハローチップ」の台紙プレミアム、さらにその中の10店ほどのグループがスタンプラリー&5倍サービスを実施した。
 年末セールの一部でこの数年継続している定番の売り出し。1昨年12月の第4土曜、狭山園は777冊の満貼り台紙を回収した。年商何億円を売るような規模の店ならいざしらず、1億円以下の店でこれだけ回収する店は全国でもあまりないだろう。
 同店は、基本的に値引きはしない代わりに、スタンプを徹底的に活用、年商も7,000万から8,000万円を確保している。店舗は8坪弱、スタッフは、経営者夫婦と従業員1人、店売りが大半。
 商店街の店舗は点在、人通りも少ない環境で、商店街スタンプを徹底活用して成果をあげている店である。
 さて、2003年12月27日の、狭山園の売り出し結果はどうだったろう。


 昨年12月の商店街共同チラシ 
 A2判両面で、毎月第4土曜日の売り出しに折り込む 
 狭山園を含む10店は5倍セールなどでアピール


 狭山園の手渡し情報紙「いっぷく」(月に2、3回発行)
 ご主人の池谷健治さんがパソコンで版下をつくり、自店の軽印刷機で200〜300枚印刷する

【店内にお客が10人以上状態が数時間】
 同店を訪れたのは午後4時頃。晴れてはいたが、前日の晩は雪が降り、風が冷たい日だった。自動ドアから入った店内はエアコンだけでなく、10人ほどのお客の熱気で溢れていた。多くがこの日を目指してきたようだ。
 8坪弱の店内、しかも大半が中高年の女性、そして店のスタッフとおなじみのようで、なごやかな雰囲気も漂っている。
 半分前後の人は満貼り台紙を持参している。その多くが5冊から10冊まとめて持っている。
 お歳暮や年賀用にまとめ買いをする人も多く平均客単価は5,000円ほど。
 4時から6時ぐらいまで見ていたが殆どお客の切れ目がない。おかげで、池谷さん夫婦と西山さんという従業員の女性、計3人のスタッフは、全員がお茶のサービス、レジや包装作業、贈答の相談等々と休まるヒマがない。ご主人の池谷さんは朝から食事をまったくしなかったという。奥さんと西山さんはサンドイッチなど軽く食べた程度。


 10人前後のお客さんで店内は熱気に溢れていた。

狭山園4人衆!(左から従業員の西山さん、池谷夫婦、常連の原田さん=84歳の現役大学生としてたびたびマスコミで紹介される地元の有名人)
(正面のカウンター兼商品ケースには数種類の紙情報が)

車椅子のお客さんがすいた時間を待って来店(このお客は「ゆっくり選びたいからと午後7時すぎにも来店)。

同店では来店者全員にお茶を出し会話を交わすのが原則だが、この日はレジの行列が続き、何人かのお客さんには「ごめんねー、お茶出せなくて」と謝る場面も(写真は、ベテラン従業員の西山さん。贈答の相談にもテキパキと応じる)

【発行額より多い、回収額】
 台紙の回収状況などの結果は次の通り。(かっこ内は02年12/28(土)の同じセール)

・回収台紙冊数 768冊(777冊) 
・売り上げ   167万円(170万円強)
・来客数    319人(339人)
 (うち商店街の会員7人。お菓子や漬け物などおみやげを持ってきてくれたお客が5、6人)

*03年12月1カ月の台紙回収  1,308冊(昨年は1,046冊)
*11月末のDMはがき持参数(持参でスタンプ3倍)
 11/25〜12/31までで431枚(471枚)  
(04年の年賀はがき約2,000通を11月25日頃発送し、12/31までの持参者にはスタンプ3倍サービス)
*5月新茶セール  2日間でDMはがきを持参した人は360人(336人)
*10月蔵出しセール 2日間で  〃  247人(287人)
 5月と10月はDMはがき持参者にスタンプ10枚をサービスする。

*03年1年の売り上げは、前年とほぼ同額
*同 4〜12月 回収   4,026冊=201万円(3,483冊=174万円)
*同  同    買上  175万円(170万円)
 昨年も1昨年も同店のスタンプ回収は、発行より多かった。昨年は台紙の回収が更に増えた。これは「ルンルンクーポン」という台紙5倍スタンプサービス券をDMなどで配り始めたことが大きいという。


 池谷さんご夫婦。閉店後、768冊の台紙の山の前で

台紙を数えながら「マイバッグですか」などと会話をする池谷和子さん

高島屋の紙袋持参でスタンプ3枚をゲットした女性

マイバッグを持参
スタンプ台紙を数える女性

右の高齢男性2人は、この日お昼前後から5時ごろまで隅に座り、おしゃべりの合間に、集まった台紙の整理などをしてくれた(中央は原田さん)

【大量台紙回収の理由】
1.お歳暮や年賀の贈答時期。お茶や海苔のまとめ買いが見込める。

2.複数のスタンプサービス
1)通常100円買い上げに1枚進呈する商店街スタンプの5倍サービス(27日のみ。参加は有志10店)
2)通常500円分の金券として引き取る台紙を20%増しの600円とした(26日と27日で参加はスタンプ加盟店全店)
 スタンプ5倍サービスといっても、通常は1倍を進呈しているので、率にすれば8%程度の負担増。
 台紙の2割プレミアム回収も、現金払いが7割強なので売り上げの3割弱へのサービス、6%弱の負担。しかもこの分は会が負担する)
 以上2点のサービスの下地となっているのが、10年近く前から続けている毎月第4土曜日のサービスデー。西友と商店街が共同でチラシを折り込み、各店がサービスをする。狭山園を含む有志10店では、2店目まではスタンプ2倍、3店目からは3倍、さらに8店以上で買い物すると100枚、10店だと200枚がもらえるスタンプサービスをこの日に実施、羽衣商店街は第4土曜が得、というイメージが多くの消費者に浸透している。
 そこでこの日をターゲットとした売り出しをぶつけるわけである。
 ちなみに10店全店で買い物し、スタンプ200枚をゲットする消費者が毎回10人近くいて、そのうち2、3人が狭山園の常連客である。原田さんと能城さんという高齢の男性コンビは、それぞれ毎回5つのケーキを買って、狭山園におみやげとして置いていく。スタンプ200枚のサービスより高くつくはずだが、10店を回り、毎日茶飲み話をする同店にプレゼントすることがうれしいのだという。

3.年間を通じて徹底した顧客への情報発信
1)手作り・手配り情報紙「いっぷく」を月2、3回程度発行、この日のセールについては4号連続でPR。
2)顧客情報の収集と活用。
 お中元やお歳暮の発送代行をやっていることや、回収したスタンプ台紙などから顧客情報を整備、年間5、6回のDM。その際、必ず、何らかのスタンプサービスをつけている。
3)徹底した口頭での説明(台紙を使うお客や贈答をしようとするお客が27日以前にきた場合は、「27日が得だから」と説明する。
4)Eメールでの案内。DMの1%程度とまだまだ少ないが、年々増えている。
5)毎日更新のHP。
 
http://www.annex-tachikawa.com/cgi/units/index.cgi?siteid=tachikawa&areaid=36241&unitid=sayamaen

4.信頼
1)人。経営者夫婦、従業員の人柄。
 常時3人。池谷夫婦は20年以上の経験、西山さんも5年以上。全員健康で50歳前後と油が乗っている。親切、商品知識が豊富で、てきぱきしている。
*同じ商店街のテーラー安武という注文紳士服店はHPで、同店の道案内の中に、「電車…JR南武線西国立駅から徒歩5分。もしも分かりづらいようなら、西友隣の”狭山園”さんで聞いてください。親切なおかみさんが笑顔で教えてくださいます」と書いている。
 
http://www.annex-tachikawa.com/cgi/units/index.cgi?siteid=tachikawa&areaid=36241&unitid=yasutake
2)夫婦とも商売&商店街活動に熱心。
 ご主人はスタンプ事業開始以来の中心人物、商店会やグループのスタンプ企画も率先する。商店街振興組合の副理事長でもある。情報紙やポスターなどをパソコンでつくる。
 奥さんは、来店客にスタンプやイベント、環境などの話を徹底的にする。
 立川市商連女性部の部長でもある。女性部は「エコ1品運動」を展開中。
 同店のHPでは毎日、店でのできごとなどを日記風につづっている。

 27日の売り出しに、商店街の奥さんら7人が台紙を持って買いに来ていることや、おみやげを持ってくるお客さんが何人もいることなどでも同店の魅力がうかがえるだろう。

5.スタンプに販促の重点
 値引きは殆どしない。その代わり、スタンプを徹底的にサービスする。だから、同店のスタンプ買い上げ額は売り上げの3%以上になっている。

6.年間通してスタンプがらみのイベントをグループや商店街で
 昨年12月の場合は、
1)12月1日〜10日。振組主催の歳末セール(3店ラリー、ナンバーズ抽選等)。 
2)12月21日。振組主催のエコ・クリスマス(大道芸・模擬店などのイベントとスタンプ台紙抽選会)。
3)12月27〜28日。ハローチップ倶楽部=スタンプ加盟店会主催の20%パワーアップセール(通常500円の満貼台紙が600円に。差額100円分はハローチップ倶楽部が負担)。

*12月以外も月1回程度は何らかの販促イベントを実施している。
*このほか、12月30〜31日に狭山園独自の締めくくりセール。
 3,000円以上買い上げにスタンプ2倍、5,000円以上に5倍サービス。


 入口も情報コーナーに

ご主人手作りの5倍セールとハローチップの看板、ポスター

乾燥させた茶殻を入れた「エコドール」

【ハローチップ概要】
・開始   1994年10月
・進呈単位 100円
・台紙満貼 340枚(消費者は通常500円で加盟店、金融機関での預
      金、イベントなどに利用できる)
・加盟店  5000枚1万円単位で購入
・有効期間 無期限
・加盟店  38店程度
・年間発行 約1,700万円

【狭山園概要】
・1952年(昭和27年)創業。現経営者の池谷健治氏は2代目。店は健治さんのほか妻の和子さん、そして従業員の西山さんの3人で切り盛り。
・場所 東京都立川市羽衣町。立川駅からJR南武線で1駅目、西国立駅から100メートルほど。
・売り場は8坪弱。
・来店者には必ずお茶を振る舞う。入りやすいせいか、毎日のように訪れ、長時間おしゃべりをする常連が10人ほどいる。
・環境にも配慮。店内に茶殻乾燥機を設置、自店及びお客さんの茶殻を乾燥、希望者に進呈。堆肥の素材となるほか、人形やまくらの中身に利用できる。マイバッグ持参者にはスタンプを進呈。

*狭山園については、小社発行の『商店街通信』44号(2001年1月発行「スタンプ徹底活用店研究◆スタンプ媒介に夫婦でお客を把握」)で、詳しく報告しています。
[商店街情報センター・樋口]

 

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