体験小説   (著:佐藤誤字さん)


 僕は、ドキドキする心臓を抑えながら駅から続く商店街を早足で歩いた。特
に目立つ格好をしている訳でもないのに、すれ違う人の視線が気になった。商
店街を5分程歩くと目印の踏み切りにぶつかった。その踏み切りの横にあるビ
ルが今日会う人の家だった。住所のメモを見て、そのビルが間違いないことを
確かめ、薄暗い階段を登った。その人の家は最上階の5階で、そこまで続く階
段は永遠に続くように思えた。マンションのはずなのに妙に生活感のないマン
ションだった。その人の家の前に立つと大きく深呼吸をし、呼び鈴を押した。
すぐにインターホンに男性が出て、カギを開けてあるので中に入り、着替える
ように指示された。部屋に入るとまっすぐ廊下が伸びており、すりガラスの扉
にぶつかっている。おそらく扉の向こうはリビングになっているのだろう。玄
関のすぐ右には部屋があり、扉が開いている。薄暗くて中の様子はよく解らな
かった。僕はくつを脱ごうとして、玄関に段差がないことに気付いた。扉を入
るとすぐ絨毯になっており、くつを脱ぐスペースがなかったのだ。僕がどうし
ようかと、悩んでいると奥から男性の声で
「そこで靴を脱いで、右の部屋で着替えて。」
と指示された。きっとこの家にきた人はみんな混乱するのだろうと僕は思った。
気のせいかインターホンの人とは違う声に聞こえたが特に気にしなかった。僕
は靴を脱ぎ、邪魔にならないように脇に揃え右の部屋に入り扉を閉めた。
 
 僕は普段当たり前のことだが、男として生活している。ただ普通の人とちょ
っと違うのは、僕には女装趣味があるということだ。性に目覚める前から姉の
洋服などを着たりしていた。それがどんどんエスカレートし、男性に会いたい
と思うまでになっていた。高校生までは僕だけが変態なのだと悩みもしたが、
大学生になりインターネットを始めるようになると同じような趣味を持ってる
人がいっぱいいることを知り、おなじように僕のような女装する人が好きな人
がいることも知り、救われたような気になった。やっていて気分がいいものは、
どうしても新しい刺激が欲しくなり、エスカレートしていく。僕は僕を女性と
して扱ってくれる男性をいつのまにか求めるようになっていた。

 ある日、いつものように色々なホームページを見ていると、女装する人用の
出会い系掲示板があることを知った。その掲示板は写真も張れるようになって
いた。みんなそれぞれに恋人、メル友や友達などを募集していた。その日僕は
友達と飲んで来たので、少し酔っ払っていた。そのせいかいつもよりも気が大
きくなっていた。僕はためらいもせずに写真とメッセージを掲載してみた。は
たしてメールなどくるのだろうか?などと考えながらその日は布団に入った。
 次の日、起きると昨日のことを思い出し、なにかとても悪い事をしたような
嫌悪感に襲われた。僕はすぐに昨日掲載した写真を削除した。メールなんか来
ていないだろうと思ったけれど一応確認することにした。正直、びっくりした。
25件もの着信メールがあった。メールを読みたかったが、出かける時間も近
かったので帰って来てから読むことにし僕は慌てて学校に向かった。
 メールのことが気になり、その日は授業にも集中出来きなかった。僕は人か
らは可愛いと思われる部類に入るのだろうか。どんな人がメールをくれたのだ
ろうか。

 家に帰ると早速メールを読むことにした。ほとんどが男性からで、女装の人
からも2、3通届いていた。半分くらいのメールは、「プロフ教えて。」とか
「もっと写真見せて。」など一言のみのメールが多かったが、中には自分のこ
とや、僕がとっても可愛いとか色々と一生懸命に書かれたメールも結構あった。
正直、人に可愛いと言われたのは初めての経験だったので、お世辞もはいって
いるとは思ったが、すごく嬉しかった。特に、一人の男性が気になった。40
代の公務員で単身赴任している人だった。メールの文章からも優しさが伝わっ
てくる。恋愛感情までとはいかないが、ラブレターをもらった女性の気持ちが
少しわかったような気がした。
 
 ・・・僕の事を女の子として扱ってもらえる・・・
 
 しばらくの間、この男性とのメールのやり取りが続いた。この男性は、「フ
カエ ユタカ」という名前で、もう2年も単身赴任をしていること、仕事は公
立の大学で講師をしていること、お酒はワインが好きなこと等色々とメールに
書いてくれた。いつのまにかフカエとのメール交換は毎日の日課になっていた。
 ある日、いつもとは違った雰囲気のメールがフカエから届いた。メールには
僕にどうしても会いたくなった旨のことをきれいな文体で書いてあった。僕は
戸惑いながらも本心は会いたい気持ちでいっぱいだった。僕は会ってもいい旨
をメールで送った。


 
 部屋は、6帖ほどの洋室であまり物がなくすっきりしていた。壁には姿見が
あり、隅に机と椅子が置いてあった。机の前には鏡がありライトもついていた。
机の反対側の壁には本棚があり、難しそうな本が並んでいた。ドアを閉めてし
まうとリビングからの音も聞こえず、僕の高鳴った心臓の音だけが部屋に響い
ているように聞こえた。僕は正直逃げ出したい気持ちになったが、思いとどま
り準備することにした。

 男物の服を脱ぎ持ってきたバックにたたんでしまい、ブラジャーとパンツを
付け、ストッキングを履き、持って来た洋服に着替えた。洋服はフカエの希望
もありグレーのミニスカートのスーツにした。着替え終わると僕は椅子に座り
化粧にとりかかった。手が震えて上手く化粧できない。あせる気持ちと緊張で
いつもよりも時間がかかった。なんとか化粧を終え、ウィッグを被りヘアスタ
イルを整えた。アクセサリーはスーツに併せたイアリングとチョーカーをつけ
た。最後に姿見でチェックした。悪くない出来だった。持ってきたヒールを履
こうかどうか迷ったが、やはり部屋の中では変だと思ったので手にもって行く
ことにした。緊張で喉が異様に渇く。恥ずかしさと緊張のせいで、中々部屋を
出て行くことが出来なかった。このまま帰ろうかとさえ思った。僕は部屋のド
アの前で、どうしていいのか解らなくなりただ立っていることしか出来なくな
ってしまった。しかしそんな時間は長くは続かなかった。

 「準備できた?」
ドアのすぐ向こうから声が聞こえた。
 「・・・はい・・」
無意識に返事すると、ドアが開いた。そこには男性がたっていた。男性の身長
は僕よりずっと大きく、なにかスポーツでもしていたのかがっしりしている。
髪は多少白髪が混じっているがしっかりセットしてあり清潔感を感じる。しっ
かりとアイロンがかかったシャツにスラックスという格好だった。男性は僕を
見ると、にこっと笑った。僕は慌てて
 「はじめまして、ゆうきです。」
と挨拶した。男性は落ち着いた声で
 「はじめまして、フカエです。ゆうきくん写真のとおり可愛いね。」
と言った。その言葉で少し緊張が解けたような気がした。フカエは僕の手に持
ってるヒールを見ると、
 「靴履いていいよ。」
と言った。僕は「はい。」と答えヒールを履こうとしたが、バランスを崩しフ
カエに倒れかかってしまった。フカエは太い腕で僕を支えながら
 「大丈夫?緊張してるんだね。リビングに行ってワインでも飲んで落ち着こ
う。みんな待ってるし・・・。」
といった。僕は頷いた。
・・・みんな?聞きまちがえたかな?・・・・
僕はフカエの後をついていった。

 リビングは、思ったより広く高そうなヨーロッパ調の家具が置いてあった。
間接照明により落ち着いた雰囲気が出ている。部屋の奥には大きなベットが置
いてありベージュのベットカバーが掛かっていた。部屋の中央にはL字型のソ
ファーが置いてあり、硝子のテーブルがソファーの前に置いてあった。テーブ
ルの上にはワインクーラーにワインが冷やしてあり、グラスが4つ置いてあっ
た。
・・・4つ?みんな?・・・!?他にも人がいる!?・・・
 ソファーには男性が二人座っていることに気付き僕はびっくりした。一人は
眼鏡をかけた40才くらいのサラリーマン風の男性でスーツを着ていた。もう
一人は小柄でちょっとはげかかった小太りな中年だった。フカエはびっくりし
ている僕に気付き振り向いて
 「ゆうき君の写真見せたらどうしても会いたいっていうから・・」
とニヤニヤしながら言った。僕はどうしたらいいか戸惑うとともに怖くなった。
 「大丈夫だよ。まあ、座ってワインでも飲みなよ。」
 フカエに促せるままソファーの角の所に座らされた。左にフカエが座り、小
太りの男性が右になった。小太りの男性にグラスを渡され、そこにフカエがワ
インを注いだ。僕はドキドキしながらワインを一口飲んだ。
 「話の流れでこうなっちゃってさあ。」
 「で焉A前もって言ってくれればよかったのに・・」
 と僕が言うと、
 「言ったら、あわなかったでしょ?」
 ・・・それはそうだ・・・会う訳がない・・・
 「・・・・うん。・・・」
 僕は小さく頷いた。
 「まあ、もうここまできちゃったんだから、みんなで仲良く楽しもうよ。」
 とフカエはワインを一口飲んだ。僕は勇気を出して
 「みなさんどういった関係なんですか?」
 と聞いてみた。すると小太りの男が、
 「ネット仲間だよ。色々女装子の情報交換しているんだ。みんな今日会うの
は初めてなんだ。」
 と言った。確かにみんなどことなく他所よそしかった。お陰で少しは安心す
ることが出来た。ある程度話して適当なところで帰ろうと思った。
 ワインを飲みながら色々な話をした。話といってもほとんどが僕へ対しての
質問だった。「なんで女装をはじめたの?」だとか「彼女はいるの?」だとか
「男性が好きなの?」だとか普段疑問に思ってることを全部聞き出そうとして
いるようだった。僕は緊張していたせいかかなりの量のワインを飲んでいた。
酔ったせいで緊張も溶け、みんなと色々な話をした。いつのまにかみんな僕を
女の子と思って話してくれていることに気付き、心地よかった。
 「本当の女の子と話しているみたいだね。」
 と眼鏡のサラリーマンの男が言った。この言葉が僕にとってはすごく嬉しか
った。
 いつのまにか、時間は話し始めてから2時間が過ぎていた。僕は酔ってはい
たものの、そろそろ帰ろうと思い、
 「そろそろ帰ります。楽しかったです。」
 と僕が言うと、3人は急に口を閉ざし何か目配せしたように見えた。ちょっ
と怖くなり立ち上がろうとすると、小太りの男が僕の手を掴み、再度ソファー
に座らせた。
 「酔ってるから少し休んでいった方がいいよ。・・そうだ。酔い覚ましの薬
あるからのみなさい。」
と言ってカバンから薬と思われるカプセルを渡された。ちょっと不安だったけ
ど、僕は言われるままにカプセルを飲み込んだ。話の中で小太りの男は医者だ
ということが解っていたし、本当に心配そうな顔で渡されたので僕は大丈夫だ
ろうと判断した為だ。その判断は間違っていた。酔い覚ましの薬なんてあった
らきっと世間でも大ヒット商品になっているだろう。そんなものがある訳がな
いのだ。酔っていたことと、初めての環境で僕の判断力は鈍っていたのだ。

 僕は酔いを覚まそうとソファーに寄りかかり楽な姿勢で休んでいた。薬をの
んで20分も経たないうちに体に変調が出てきた。頭が熱くなり、目がチカチ
カする。体は逆に寒くなってきた。体が震える。僕のそんな状態を確認したフ
カエは、ベットのところにいき、ベットカバーを外している。
 ・・・なにするんだろ?フカエさんもう寝ちゃうのかな?・・・
思考が低下しているのだ。更にフカエは壁にあるカーテンを開けた。そこには
窓はなく、代わりに100インチはあろう巨大なプロジェクターがあった。天
井には映写機がついている。眼鏡のサラリーマンは、なにやらビデオカメラを
いじっている。そんな作業風景をなんとなく眺めていた。

 寒かったはずの体は今度は熱くなってきた。鼓動が聞こえる。聞いたことも
ないような早さで頭に響いてくる。何故か奥歯をかみ締めている。体の芯が痺
れてくる。ふとスクリーンを見ると、僕の脱力した姿が映し出されていた。視
線を移すと、眼鏡のサラリーマンがビデオカメラを僕に向けている。
 「・・ちょっと・・それは嫌かも・・・。」
上手く口が回らない。さっきの薬のせいだと今更ながら気付いた。ぼーっとし
ていると急に体を起こされ抱きつかれた。小太りの男だ。目の前にその男の顔
があった。考える間もなくキスされた。もちろんのことながら、男性とキスし
たのは初めてだった。男の舌が僕の口を割って入ってきた。気持ち悪くてしょ
うがなかったが、抵抗できない。体が思うように動かなかった。力が入らない。
小太りの男の手が脚を触っている。キスをしながら僕の体を弄っている。男の
鼻息が荒くなっていくのがわかった。
 ・・・この男は僕に欲情しているんだな・・・
体と思考が分裂したような感覚だった。小太りの男は、口を離すと今度はかが
みこみ、僕の脚を舐めはじめた。その姿が、スクリーンに映し出されている。
画面の僕の隣にフカエが座った。今度はフカエが僕にキスをしてきた。舌がか
らみついてくる。思考とは別に口からはため息が漏れている。
 「なんだ、ゆうきも感じてるんじゃん。」
 小太りな男が僕の股間を触りながら言った。
 ・・・気持ち悪いに決まってる!しかもなんで呼び捨てなんだよぉ〜・・・
 そう思っているのに、体は反応していることに気付き恥ずかしくってしょう
がなくなった。小太りの男はストッキングの上から脚を舐め回している。僕は
ソファーから下ろされカーペットの上に正座させられた。目の前では、フカエ
がずぼんを下ろサうとしていた。
 ・・・きっと、僕に口でやらせるんだな・・・
容易に想像することが出来た。小太りの男は僕の後ろに回り胸や股間を触って
いる。耳元では小太りの男の荒い息が聞こえた。目の前にはフカエの大きくな
ったものがあった。僕のよりもずっと大きく太かった。
 「舐めて。」
と言われたが、さすがにそれだけは出来ないと首を振ったが、フカエはお構い
なく僕に口にそれを押し付けてきた。嫌な匂いがした。フカエは抵抗する僕の
顎を手で抑え、
 「舐めろっていってるだろ!」
と怒鳴った。体は益々熱くなり、鼓動は早くなり続けていた。涙が溢れてくる。
悲しくなった。フカエは僕の鼻をつまみ、強引に口の中に入れて来た。嫌な味
がした。頭を抑えられ、フカエの大きくなった物が口の中をいっぱいに動きま
わった。徐々に口に嫌な味が強くなっていく。
 「あああー。気持ちいい。いきそうだ。はぁ、はぁ・・・」
フカエの腰の動きが早くなり体に力が入ったと同時に僕の口の中に射精した。
熱いドロドロとした液体がフカエの体の動きに併せて口の中に放出され続ける。
 ・・・早く吐き出したい・・・・
 そんな僕の願いは、すぐに打ち消される。フカエは、自分のものを僕の口か
ら出すと同時に僕の口を手で押さえ、
 「飲め!」
と言った。僕は手を退けようと抵抗したが、体に力は入らなかった。僕は諦め
てフカエの精子を飲み込んだ。

 フカエは眼鏡のサラリーマンに
 「代わるよ。」
 と言うとビデオカメラを受け取った。眼鏡のサラリーマンは、スーツを脱ぎ
出し裸になった。眼鏡の男はすでに興奮していて、はちきれそうに大きくなっ
ていた。
 僕は小太りの男に抱えられ、ベットの上に放り投げられた。眼鏡の男は、僕
にキスをしながら僕の体を弄った。時折、フカエが写真を撮る時に光るフラッ
シュが妙に眩しく、その度に僕は現実から引き離されていくような感覚に襲わ
れた。小太りの男は、僕のストッキングを破り、パンツを破った。僕のものは
大きくなっていた。
 ・・・なんで、こんなひどいことされているのに体は反応しているんだろう
 小太りの男は僕の物を口に含んだり、舐めたりしている。
 「んっ・・んん・・ふぅ・・・あっ・・・」
僕の意思とは関係なく声が漏れる。小太りの男は僕の脚を肩にかけ、何かヌル
ヌルするものを僕のお尻に塗った。
 ・・・ああ。いよいよ僕はやられちゃうんだな・・・こんな嫌な思いするな
ら来るんじゃなかった・・・
そんな思いなどお構いもなく、小太りの男のものが僕の体の中に入ってきた。
薬のせいか全然痛くなかった。
 ・・・もうどうでもいい・・・もう何も考えたくない・・・・
 そう思った瞬間、快感が体を支配した。小太りの男の体の動きに併せて声が
出る。
 「んっ・・あっあっ・・んんん・・あっあああ・・・」
 僕はどうにかなってしまいそうだった。体はジンジン痺れ、自然に女の子の
ような声がでていた。眼鏡の男のものが目の前に出された。僕は嫌だとは思わ
ずに口に含んだ。眼鏡の男も僕を見ながら興奮しているのがわかる。僕で興奮
している。そのことが僕の理性を破壊していく。小太りの男の動きはどんどん
早くなる。
 
 ・・・・もう頭がおかしくなりそうだ・・・きもちいい・・・・
 小太りの男の息も荒くなる。
 「ああああ。いきそうだ!口でいくから口でやれ!」
 小太りの男は、僕から抜くと仰向けになり口でするように指示した。僕は言
われたとおりに小太りの男の物を口に含み、丁寧に舐めた。眼鏡の男はちょう
ど四つん這いになっている僕の後ろからはちきれそうになった物を僕に入れた。
 「んっんーーー!」
 小太りの男のものを咥えながらスクリーンを見ると僕の淫らな醜態が映し出
されていた。
 ・・・ああ・・・僕は男なのに・・男の人にやられちゃって感じちゃってる
・・・もうどうにかなりそう・・・
 「あああーいくぞーいくぞー!!」
 小太りの男は一瞬体が硬直したかと思うと僕の口の中に射精した。今度はそ
んなに嫌じゃなかった。僕はそれを飲み干した。眼鏡の男はそんな僕の姿を見
て益々興奮したのか僕を突きまくっていた。色々な体位で僕を犯し続けた。僕
ももうどうにかなりそうだった。さっきから、なんども射精した時以上の快感
が体を突き抜けていた。
 ・・・ああああ・・誰か僕をどうにかして・・・
 僕の声はどんどん大きくなり部屋中に響いていた。
 「中にだすぞー!あああああー!」
 眼鏡の男は、更に早く腰を動かすと僕の中に放出した。同時に僕も射精した。
 
 気が付くと、僕はベットの上で寝ていた。スーツには僕の精液がついて、ベ
トベトになっていた。時計を見ると針は8時を指していた。今が昼だか夜だか
わからなくなっていた。部屋を見渡すとソファーでフカエが煙草を吸っていた。
他の二人は見当たらなかった。
 「気付いた?気持ちよかったでしょう?」
 フカエはニヤつきながら言った。僕は何があったのかを覚えてはいても、現
実のことといして認識出来なかった。
 「ショックです。帰ります。」と僕は言ったが、
 「だってこんなに気持ち良さそうにしてるじゃん。」
 と言って、スクリーンを指差した。スクリーンには、眼鏡の男に後ろを犯さ
れながら狂ったように小太りの男のものにむしゃぶりついてる僕の姿があった。
その姿は狂った淫乱な情婦のようだった。とても僕の姿だとは思えなかった。
僕は慌ててスクリーンのカーテンを閉めた。フカエはスクリーンを消し、
 「お風呂に入りな。」
 と言った。僕はその言葉を無視し、化粧を落とし、着替えてフカエのマンシ
ョンを飛び出した。外は朝の光が眩しかった。涙が止まらず、僕は暫くあても
なく歩き続けた。
 
 こんなことがあってから、僕は女装を辞めた。洋服や化粧品なども全部捨て
た。フカエからもメールはこなかった。ビデオの事は気になったが、全てはな
かったものとする為、忘れる事にした。
 
 現在、僕は再びフカエの家に毎週通っている。結局、体が覚えてしまった快
感が忘れられなかったのだ。普段は真面目に男として働いているが、週に一度
はフカエのところで快感をむさぼっている。もうこれ以上エスカレートはした
くないが、きっと体が求め続けるのだろう・・・。
 
Fin