第1話  アイドル歌手


「美沙さん、喉乾いたぁ。オレンジジュース欲しいわ」
石坂めぐみは付き人の神保美沙には顔も向けずにオレンジジュースを買って来るように命
じた。
「はい、行って来ます。ちょっと待っててくださいね」
そう言うと美沙は慣れた様子で応接室を静かに出て行く。石坂めぐみは16歳で歌手デビ
ューをしてから芸能生活も5年目を迎えている。美沙は彼女がデビューした当時からの付
き人で影に日向にめぐみを支えているのであった。

接客用のソファーが置かれている応接室には石坂めぐみの他に彼女の所属する芸能プロダ
クションの専務である佐々木拓也と彼女を担当している営業マンの黒田慎一が残っていた。

5年前は莫大な費用を投じアイドルとして売り出しためぐみは、有名ランキングのベスト
5にまでデビュー曲がチャートインしたのであった。しかし、二曲目は同様な費用を投じ
たにもかかわらず、ベスト10に入る事なくチャートから消えてしまった。その後はタレ
ントとしてバラエティー番組に出演していたのだが、最近では出演番組も少なくなる一方
で、週の内半分はOFFの状態が続いていた。

黒田はめぐみを売り出すべく懸命に営業活動を行っているのだが、若い新人に役を取られ
てしまい、必ずしもめぐみの将来は明るいものでは無かった。正確に言うと良くて1年程
の芸能生活であろう。

「やるなら、今しかないよ!めぐみ。写真家の篠川先生も、是非撮りたいと言って下さっ
てるんだよ」
「でも、篠川先生ってヘアーヌードの写真家なんでしょ?私自信ないもの」
「大丈夫だよ、めぐみちゃんのプロポーションなら」
「めぐみちゃんも20歳を過ぎて大人なんだから、ヌードぐらい我慢しないと」
「今時、20歳を過ぎて普通のフォトアルバムじゃ話題にもならないよ」
「先生も今回は斬新的なアルバムにしたいと言って下さってるんだし」
黒田は懸命に石坂めぐみを説得していた。水面下ではプロダクションの合意も取っており
写真家の篠川とも話しがついているのだ。

その時、両手にジュースを抱えて美沙が戻って来た。
「はい、どうぞ。佐々木専務と黒田さんも」
買って来たオレンジジュースをめぐみに渡し、専務には烏龍茶、黒田には缶コーヒーを渡
すと美沙はめぐみの横に座った。美沙はみんなの好みを把握しており、それぞれの嗜好に
合ったものを買って来たのである。
「いつも気が利くね美沙ちゃんは」
佐々木は嬉しそうに烏龍茶の栓を開けた。
「ねぇ。美沙さんどう思う?」
黒田の提案を考えていためぐみは自分で判断出来ず、美沙に助言を求めて来た。彼女も自
分の置かれている状況は十分理解しており、内心は承諾せざるおえないと考えている。し
かし、みんなから勧められ承諾した形にしておきたかったのだ。

「冷たいようだけど、めぐみちゃんが結論を出す事だと思うわ。」
「美沙さんが私の立場だったらどうしますぅ?」
「芸能生活を続けるつもりなら、お受けすると思いますよ」
「ふーん、やっぱり自分がヌードになるんじゃ無いから簡単に言えるのよね」
「・・・・・代れるなら代ってあげたいけど私がヌードになってもね(笑)」
実際にはめぐみがデビューする時22歳だった美沙であるから今は27歳であるはずなの
だ。しかし、外見的には殆ど年を取っていない様に見える。二人が並んでいるとどちらが
年上だかわからなくなる。容姿にしても目鼻立ちのハッキリしている美沙は付き人と言う
よりタレントにした方が成功するとプロダクション側では思っているのだが彼女はガンと
して承諾しないのである。




結局、写真集の撮影を承諾しためぐみは篠川のスタジオに居た。撮影は朝の10時から始
まり2時間を経過していた。しかし、順調に進んでいた撮影が暗礁に乗り上げていたのだ。
斬新的な写真集とはSM写真集だったのである。ヘアーヌードは覚悟していた石坂めぐみ
であったがロープが小道具として出されると絶対拒否をし撮影をボイコットしているので
ある。
「めぐみちゃん仕事なんだから頑張ってよ」
黒田は懸命に説得している。美沙もその横でめぐみの説得を続けていた。
「黒田さん?、めぐみちゃんに話しをしていなかったのかね?」
篠川は少し呆れてしまっていた。
「休憩しようか。その間に・・・頼むよ!」
篠川はそう言うとスタジオを出て行ってしまった。

「美沙さーーん、なんとかしてよ。あなたも聞いていたの?こんな話し」
「えぇ、でも、めぐみちゃんも知ってると思っていたわ」
「知るわけ無いでしょ。知ってたらこんな仕事、受けないわよ!」
困惑している美沙に向かってめぐみは続けた。
「美沙さん。代れるなら代ってあげたいって言ったわよね」
「えっ?」
「言ったわよ。あなたが代りに縛られてよ」
「そんな・・・・」
「最近はコンピュータ処理で合成も出来るからわからないわよ」
「そんなこと篠川先生が承諾するわけがないでしょ」
「美沙さん私なんかより奇麗だから大丈夫よ。先生に聞いてきて、黒田さん」
黒田は美沙の身体を見て
「いいかい?美沙ちゃん」
「黒田さんまで・・そんなこと」
「取りあえず聞いて来るだけだよ。でも駄目だったら覚悟を決めてくれよ。めぐみ」
「わかりました。でも私の前で先生に確認してね」
「信用されてないな」
「当たり前でしょ、こんなことして」

しばらくして黒田は写真家の篠川を連れて来た。
「この娘なんですが」
黒田が美沙を紹介すると篠川を彼女を舐めるように上から下まで眺めるた。
「いいんじゃない」
あっさりと言ってのけた。
「せんせー!」
美沙は予期しない言葉に自分の耳を疑った。しかし、篠川は、めぐみと美沙がスタジオに
揃って入って来た時、どちらかと言うと美沙の方に写真家としての欲望を感じていたので
ある。彼にとっては好都合の展開である。
「しかし、私のファンを騙すことは出来ないから、彼女の後は君も頼むよ」
篠川が言うとめぐみはコックリ肯いた。心の隅でめぐみのジェラシーが働いたのである。




30分後、全裸で椅子に縛られている美沙がいた。腕は椅子の背もたれに後ろ手に縛られ
両足は大股を広げられた恰好で椅子に括られている。正面から篠川は女性の陰部にレンズ
を向けて自動連射のシャッターを押していた。美沙は正面を見ることができず。出来るだ
けカメラから顔をそむけているのだが、その表情がかえって目鼻立ちのしっかりした美沙
を色っぽいものにしていた。
「美沙ちゃん、セクシーだよ」
篠川はシャッターを押し続ける。しばらく、いろいろな角度からシャッターを切っていた
篠川であったがカメラのシャッターから手を放した。
「猿轡を持ってきてくれる?」
アシスタントカメラマンが慣れた動作でゴルフボールのようなものが付いた猿轡を美沙の
口に嵌めてしまう。次に篠川は下腹部を残忍な目で眺めていたと思うと
「ちょっと、濃すぎるかな」
アシスタントがシェービングクリームと剃刀を持ってくる。篠川はアシスタントからそれ
らを奪い取ると美沙に近づいて来た。
「動くと危ないから動かないでね」
シェービングクリームを陰毛につけ、手のひらで少し擦り付けると剃刀で美沙の陰毛を剃
り出したのだ。
「うぐぅぅぅ・・・」
猿轡が美沙の懇願を塞いでいた。訴えが声にならないのだ、剃刀は身体を動かすことも許
さない。美沙は無抵抗の状態で篠川の行動を受け入れる他なかった。
「もう少しかな・・・」
篠川は剃り続ける。
「いいか、丸坊主にしちまおぅ・・」
篠川が美沙の身体から離れた時は美沙の陰毛は奇麗に無くなっていた。
「いいねぇ、奥までしっかり見えるぞ」
カシャカシャカシャ・・・とシャッターの音が鳴り続ける。

「ちょっと、ごめんね」
そう言うと篠川は美沙の乳首を両手で揉み出した。
「うぐぅ」
美沙の乳首はすぐに固く大きく立ってしまった。それと同時に隠す物が無くなった陰部か
ら愛液が溢れ出した。ねっとりした液体はそのまま下に向かって白い身体を流れて行く。
「よしよし、美沙ちゃんも感じてくれてるね」
そう言うと篠川は再びカメラを向けてシヤッターを押し出した。もう何百枚撮っただろう
か。フイルムが無くなるとアシスタントが用意していた別のカメラを渡するである。篠川
は常時2台のカメラをなにやら用途に応じて使い分けシャッターを押していた。

「もう、いいかなぁ?」
これでやっと開放されると思った美沙であった、しかし、それは大きな間違いであった。
「準備が出来たみたいだな」
猿轡で塞がれ唾も呑み込めない口の中は唾液でいっぱいになってしまった。気を許すと口
元から唾液を垂れ流してしまいそうなのだ。

美沙の目の前に大きなペニスが突然現れた。と言っても電池で動くバイブレータである。
それはブーンと音を発てながらクネクネ卑猥な動きをしていたのだ。
「もう、十分入るだろう?」

アシスタントが美沙の秘部からお腹の中に向かってジワジワ挿入しだした。篠川はその間
連続シャッターを押し続ける。
「いやぁー・・・うぅぅ・」しかし、声は美沙の口の中からは出ていかない。
お腹の奥まで突き刺さったペニスは止まることを知らないように動き続ける。
「うぐぅぅ」
「声が聞きたいな、猿轡を外してくれる?」
篠川の言葉にアシスタントが動く。
ネットリした唾液と共に猿轡が外されると美沙の可愛い半開きの唇から唾液が溢れ出た。
縛り上げられている両腕はそれを拭うこともできない。
「あぁぁ・・・」
下半身と口元から液体を流しながら涙でぼやけた視界にニヤニヤしている黒田と、すっか
り服を着込んだ石坂めぐみがいた。

全ては黒田とめぐみが仕組んだ罠だったのだ。金遣いの洗い黒田は暴力サラ金に多額の借
金があり篠川の撮る美沙の写真を裏ルートで高く売りさばくつもりなのである。石坂めぐ
みも、老いることを知らない美沙に対し強いジェラシーを感じていた為、この黒田の話し
に二つ返事で乗ってきたのだった。

「美沙さん度胸があるのねぇ。もしかしたら付き人なんてしてるよりもSMモデルの方が
向いているんじゃないかしら(笑)」
「めぐみ・・ちゃん、頑張ってね。うぐぅ・・あぁぁぁ」
めぐみがバイブレータのスイッチを強に変えたのだ。
「冗談でしょ。私は変態じゃないもの、こんな恰好人前でなくても出来ないわよ」
「めぐみちゃん・・・」
「あらあら、こんなに喜んでる。女性の体って正直だからぁ(笑)」
「あぁぁ・・・お願・・・い。縄を・・解いて・・」
「ゴメンね、私にその権利はないのよ」
「20万円で黒田さんが篠川先生に一日契約で美沙さんを売ってしまったから」
「そんな・・・」

「はい、これ!モデル代は20万円だったね。写真は後で送るよ。裏で流通させるのは勝
手だが私の名前は決して出してもらっては困るよ」
篠川が黒田に話ししているのが聞こえてきた。なにやら黒田は封筒を受け取っている。

「さて、続きを始めようか!」
「美沙ちゃん、しっかり頑張ってね」
「さようなら」

黒田とめぐみは揃ってスタジオを出ていった。




外を出ると如何にもヤクザとわかる男達5、6人が黒田を待っていた。
「黒田さん、工面出来たんだろうな」
ヤクザは黒田の持っていたバックを強引に奪い取ると、封筒をバックから取り出し中身を
調べていた。
「おいおい、これだけじゃ。利子にしかならないよ」
「ちちょっと・・・待って下さ・・」
言い終わる前に一人のヤクザが黒田のボデーにパンチを入れた。
「うぐっ、・・・明日になったら残りは払いますから、もう少し待って下さい」
「仏の顔も三度までだよ。知らないのかぁ?てめぇ大学出てるんだろ」
「必ず払いますから・・・もう、少し・・・うぐぅ」
2発目のパンチがボデーに入った。

「兄貴、この女、見たことがありますよ」
如何にも頭の悪そうな男が食い入るような目でめぐみを見ながら言った。
「うん?」
石坂めぐみは唖然としてその場に立ち尽くしていたのだ。
「芸能人じゃねぇか?テレビで昔、見たことがあるぞ」
「ほう」
兄貴と呼ばれる男がめぐみに近づき、薬指の無い手で彼女のアゴを掴んで顔を上げさせた。
「黒田さん明日まで待ってあげるよ。その代りこの娘はそれまで預かるからな」
「・・・・・・」
「いいな!」
あろうことか黒田は肯いたのだった。
「黒田さん何を言うの私は関係無いわよ!放してよ」
石坂めぐみは大きな声を出そうとしたが口を押さえられ車に連れ込まれてしまったのだ。
「明日、夕方6時までだからな。それを過ぎるとこの女は香港に売り飛ばすぞ」




翌日の朝、美沙は約束通り開放された。そしてその足でプロダクションに出社し退職願い
を出した。専務に事情を聞かれたが一身上の理由とだけ言ってその場を後にした。

黒田もその日の朝、美沙とは入れ代わりに篠川のスタジオに行った。丁度、篠川が、一晩
かけて撮り捲くった美沙の写真を現像してスタジオを出て来たところである。
「篠川先生、おはようございます」
「あぁ、黒田さん。早いね、美沙ちゃんには先ほど帰ってもらったよ」
どことなく暗い顔をしている。
「あっ、そうですか。っで写真は良く出来てましたか?」
「それが不思議なんだよ、写っていないんだ」
「そんな!先生はプロでしょ!」
「おいおい、写真家としては十分良い写真が撮れてると思うよ。見るかい」
「はい。」
写真を見せられた黒田は愕然とした。。美沙の姿のみが写っていないのである。ピントも
露出も完璧である。椅子も美沙を縛り上げている縄も奇麗に撮れている。しかし、美沙の
姿だけが写っていないのだ。

三日後、以前として黒田の姿は消えたままだったが、石坂めぐみはひょっこりプロダクシ
ョンの事務所に現れた。
「すみません。叔父が急に亡くなったもので実家に帰っていました。」
「忙しくて電話も出来ないで、ご迷惑をおかけしました」
専務の佐々木は嘘だとわかっていたが追求することはしなかった。
「心配したぞ、黒田も雲隠れだよ」
「えっ?そうなんですか?」
「その事は後だ、午後から仕事が一本入ってるだろぅ。早く着替えて」
「はーーい」

衣装に着替える石坂めぐみの白い腕には麻薬中毒者に見られる注射の痕が残っていた。彼
女は二日間、ヤクザの事務所で薬を打たれていたのである。そしてこれからめぐみは彼ら
の為に働くことになっていたのである。高い薬を買いながら・・・・・・・・・。