パス 第一章 出逢い


この世界に踏み込んだ切っ掛けは、今でも鮮明に覚えています。それは中学一
年の夏の日の出来事でした。自分で言うのもなんですが小学校の時は家で勉強
をしなくてもクラスでトップクラスでした。しかし、中学になると私の成績は
クラスで20番目と落ちてしまったのです。やはり中学にもなると家で勉強を
しないと試験では良い点数が取れなかったのでしょうか。

心配になった母親は私に家庭教師をつける事にしました。家庭教師と言っても
近所に住んでいる大学生で、私は姉と同室だった為、私が先生のマンションに
行って勉強を教わることとなったのです。そしてそれが水野涼子さんとの出会
いでした。

水野涼子さんは目が大きく長い髪がとても奇麗な人でした。はじめてあった時
はとてもドキドキしてしまい勉強どころではなかった事を覚えています。

ある日のことです。私はどんよりとした雲の中、雨が降っていなかったので傘
も持たずに涼子さんの部屋へと向かったのでした。しかし、家を出るとポツポ
ツと大粒の雨がアスファルトに落ち出すではないですか。涼子さんのマンショ
ンまでは歩いて10分程度の距離だったものですから、私は歩く足を早めるこ
とにしました。

しかし、大粒の雨は急に滝のように激しく降り出したのです。私は全力で走り
ましたか涼子さんのマンションに着いた時にはプールにでも飛び込んだように
頭の天辺から靴の中まで水浸しの状態でした。悪いことは重なるもので、その
日に限って涼子さんは帰宅しておらず、マンションのドアは固く閉ざされてい
たのです。

2、30分も待ったでしょうか、夏とは言え全身ずぶ濡れ状態の私は寒気を感
じはじめていました。

「岬君?」
振り返るとそこには涼子さんが傘を片手に立っていました。
「ずぶ濡れじゃないの。どうしたの?・・・・とにかく中に入って」
そう言いながらショルダーバックから鍵を取り出しドアを開け私を招き入れた
のです。

「ちょっと、そこで待っていてね」
玄関に入るとドアを閉め私に待つように言うと涼子さんは奥の部屋からバスタ
オルを持って来てくれました。

「服もビショビショね。とにかく早く脱いで暖かいシャワーを浴びなさい」
「大丈夫です」
「何を言っているの。風邪でも引かれたら私がお母さんに怒られちゃうわ」
「・・・・・」
「それに、そんなビショビショじゃ部屋が濡れちゃうじゃない」
「・・・はい」

私がシャワーを浴びて出て来ると脱衣所には涼子さんのジーンズとTシャツが
用意されていました。

「私のだけど、我慢してそれを着てね」
私がバスから出て来たのを察した涼子さんが隣の部屋から声を掛けてたのです。

Tシャツは男女兼用のモノでしたが、ジーンズは女性物でした。ハイウエスト
スリムのジーンズでヒップは大き目に作られているのですがウェストが細くな
っています。

「どう?着れる?」
「はい」
「本当だ。ピッタリじゃない」

私の顔は涼子さんのモノを着ていると思うだけで真っ赤になってしまいました。
それを見た涼子さんは私をからかうように言ったのです。

「岬君は女の子みたいな体格をしているのね。笑」
「やめて下さい」
「とても似合うわよ。マジで」
「・・・・・・」

確かに他の男友が成長期になって、日々体格が大きくなるのに対して私は成長
が遅く160cm程度しかなかったのです。多分、涼子さんと同じ位の身長だ
ったと思います。もっとも、今も165cmしかありませんから成長が遅いと
言うより殆どその時点で終わってしまっていたのかもしれません。その後、身
長が伸びなかったのは女性ホルモンの影響だったのかは定かではありませんが。

「それにしても色白で、肌の木目も細かくてお化粧したら可愛くなるわよ」
「冗談、言わないでください」
「あはは、そうね。さっそく勉強を始めましょうか。私が帰るの遅れてしまっ
  たから30分も過ぎてるし」

その日は勉強が身に入りませんでした。涼子さんの服を着ていると思うと気が
集中出来なかったのです。

「まだ、乾いていないわね」
「・・・・・・」
「その服を着て帰っていいわよ」
「でも・・・・」
「そうね。私の服で帰ったらお母さんが変に思うかも知れないわね」
「近くにコインランドリーで乾かして来ます」
「あっ、その手があったわね。お金持っている?」
「はい」

そう言うと私は近くのコインランドリーに雨で濡れた自分の衣服を乾かし行っ
たのでした。

今から考えると、とても些細な出来事のようですが、私にとってはこのことが
人生の分かれ道だったように思います。




ある日、いつものように涼子さんのマンションで勉強を教えてもらっていると、
彼女が言い出したのです。

「聞いてるの?」
「えっ?」
「さっきから私の胸ばかり見てない?」
「そんなことありません」
「岬君も年頃だから異性に興味をもつことが悪いとは言わないけど、何だか視
  線を感じちゃうわ」

確かに涼子さんのバストが気になっていたのは事実です。好奇心もありました。
その日は以前、私が雨の日に借りて着たTシャツを彼女が着ていたのです。
しかし、彼女が身につけたTシャツは私が着たそれとはまるで違って見えまし
た。くびれたウエストに膨らんだバスト、全体に丸みを帯びた身体を包むTシ
ャツは薄っすらと下に着けているブラジャーのラインを浮き彫りにしているの
です。

「取り返しのつかない事が起きたたら大変だから、家庭教師を辞めることにす
  るわ」
「そんなこと言わないで下さい」
「だって、岬君、ずっと私のバストばかりみてるじゃない。勉強にも身が入ら
  ないようだし。岬君が女の子だったら問題なかったんだけど」
「・・・・・・そうじゃないんです」
「そうじゃないってどう言う意味?」
「確かに、気になってましたが・・・・羨ましかったんです」
「羨ましい?」

私はその時、なんてことを言ってしまったんだろうとも思いましたが素直な気
持ちでした。

「はい」
「なにが羨ましいの?」
「その・・・バストが・・・」
「バスト?」
「・・・・」
「そうか、岬君は、そういう子だったんだ」

「すみませんでした。へんな事を言って」

私は広げていた勉強の教材を片づけて帰ろうとしました。

「いいのよ」
「・・・・」
「その方が二人の関係にとっては良いかも知れないわね。あなたがそうなら変
  なことは起きないわね。家庭教師を辞めないで済むもの」
「本当ですか?」
「えぇ、その代り・・・岬君は、ここでは女の子よ。いい?」
「・・はい」
「よし、じゃ・・・ちょっと待って」

すると涼子さんは自分の整理タンスを開け中から何かを取り出したのです。

「なんですか?」
「これを着けて」
「えっ?」

涼子さんの取り出したものはピンクのブラジャーだったのです。
「着けてみたかったんでしょ?」
「そんなぁ・・・いいです」
「遠慮しなくていいのよ。二人だけの秘密にしてあげる」
「・・・・・・」
「嘘だったの?」

私は無言で首を横に振りました。

「だったら、早くブラジャーをしなさい」
「・・・・・・」
「仕方ないわね!手間のかかる子」

言い終わらないうちに涼子さんは私に近づいたと思うと着ていたTシャツを脱
がせたのです。

「こうやって着けるのよ」
私は着せ替え人形のように抵抗するでもなくじっとしていました。

「きつく無い?」
私は再び無言で頷いた。すると涼子さんは脱がせたTシャツを再び私に着せて
くれたのでした。

「これからは、いつも女の子になってから勉強するのよ。いいわね」
「はい」
「名前も変えましょう。いい名前無いかしら・・・岬だから・・・ミサちゃん
  にしましょう」
「・・・・」
「じゃ、ミサちゃん勉強の続きをはじめましょうか」

それから一時間、私は涼子さんのブラジャーを着けたまま勉強をしました。

「それじゃ、今日はここまでね」
「ありがとうございました」
「ブラを外さないとね。お母さんにばれたらビックリしちゃうから。笑」

私はブラジャーを外すと涼子さんに手渡しました。

「本当に二人だけの秘密にして下さいね」
「わかってるわ。笑」
「失礼します」
「あっ、次は月曜日だったわよね。いつもより一時間早く来れる?」
「はい」
「じゃ、そうしてくれる?これからは女の子の勉強も教えてあげるから」
「はい」

私はブラをしている感覚を残したまま、涼子さんのマンションを後にしたので
した。