ダブルエックス[part1] 「今日はお忙しいところありがとうございます」 「あまり時間が無いので手短に頼むよ」 「はい」 リポータの嶋崎真砂子と僕は名刺を黒田省吾に手渡すと勧められたソファーに 座り早々とインタピューを始めたのであった。 今回の取材は黒田省吾が経営する男性王国についての取材である。黒田は九州 の南に位置する小さな島を買い取り、そこに自分の理想とする国を作ったので ある。国と言っても日本国の中での話しであり独立をするなどという物騒な事 ではなく、一種のコミニティーのような世界を作ったと考えた方が良いであろ う。しかし、彼の理想というのが少し変わっているのである。それは元来人間 にはサド性とマゾ性があり、この島では男性はサドとして、女性はマゾとして 生活をしているのである。 同僚の嶋崎真砂子は優秀な成績で京大を卒業後、会社でもその力量を発揮して 昨年、同期の中でただ一人チーフに昇格していた。彼女にしてみれば、黒田の ような考えを持つ人間が現在も存在することが信じられないようであった。 「ほう、嶋崎さんはチーフなんかね」 黒田は渡された名刺を見ながら尋ねた。 「はい、昨年チーフになったばかりの新米です」 黒田は嶋崎の返事を聴いていないかのように今度は僕の名刺を眺めて言った。 「森川さんは平社員かな?肩書きが書いていないが・・・」 僕の名刺を見ながら痛いところをついて来たのである。 「すみません、出来が悪いものですから・・・、嶋崎とは同期なんですが扱使 われています。笑」 僕は冗談半分に軽い気持ちで応えたのであったが黒田の顔は急に厳しいものに 変わってしまったのだ。 「それでも男かね!」 「はぁ・・・・・・」 「はぁ、じゃないだろ?男だったら、この女を自分の物にしたいと思わないの かね?それどころか女に命令されて仕事をするなんて何事だ」 「しかし、彼女は実力がありますからチーフになっても当然だと思っています」 「君にはチンポが付いているのかね?」 「えぇ、一応・・付いていますが」 「そんな物!取ってしまいなさい!!」 頭に血が登って来た僕が反論をしようとすると、横に居た真砂子が割って入って 来た。 「森川君、黒田さんは時間があまりないのだからインタビューに入らせて貰っ ても良いかしら?」 「あっ、はい。すみません」 そうであった仕事に来たのである相手を怒らせて喧嘩をしたのでは仕事にならな かった。真砂子はいつも冷静である。それを聞いた黒田が、また言葉を挟んで来 たのである。 「おい!また、女の言いなりかね?」 「失礼しました」 真砂子が怒らせてはインタビューが出来ないと考え、黒田の発言に対し鄭重に 対応しようとしたのだが逆効果だったようである。 「キミに言ったんじゃない。こちらの森川君と話をしているんだよ」 「・・・・・・」 気まずい空気が部屋の中に流れてしまった。 その時、ドアをノックする音がしたと思うと、女性がコーヒーを持って入って 来たのである。 「失礼いたします」 その女性は透けるような白いブラウスに下着が見えるようなミニスカートを穿 いていた。スラっと伸びた長い足の先には、これで良く歩けると思う程の高い ハイヒールを履いている。 彼女はソファーに座る僕の隣に膝ま付きコーヒーをテーブルの上に静かに置い た。ブラウスの下で丸い弾力性のあるものが揺れているのがわかる。彼女はブ ラジャーを着けていなかった。近くで観ると透けるようなブラウスの下にある 乳首がハッキリとわかるのである。 「琴美。私の隣に来なさい」 「はい」 黒田はコーヒーを持って入って来た女性を自分の横に立たせると僕たちの見て いる前でミニスカートの中に手を入れたのである。 「あぁ・・」 「どうだ?知らない人の前で触わられるのは」 「・・・・」 「うん?聞こえないぞ」 「濡れてきました」 その女性は顔を赤らめながら黒田の質問に答えたのである。 「どうだね、森川君」 「と、言いますと?」 「男性として感じるだろ?君の上司も濡れているんじゃないかね?」 僕が隣に座っている真砂子を見ると彼女は目の前の光景を見てはいけないもの かのようにソッポを向いていた。 「この娘も東大を卒業して、半年前までは一流企業で課長をしていたキャリア だよ。多くの男性を部下として使っていたよな」 「そうなんですか・・・・」 「だよな!琴美」 黒川の手が琴美と呼ばれた女性のスカートの中で動いた。 「あぁぁ・・」 「あぁ、じゃないだろ。質問をしているんだよ」 「はぁ・・い」 「私の質問を聞いていたのか?わかって返事をしているんだろうな?」 「あぁぁぁぁ、すみませんぅ。聞いておりませんでした」 「まぁ、良い。お前はしっかりここで感じていろ」 「はい。ありがとうございます」 琴美と呼ばれた女性は立っているのが辛そうである。 「さて、時間があまり無いが・・・インタビューを始めよか?森川君」 「はい、でもインタビューはチーフの嶋崎が行います」 「私は君のインタビューなら受けても良いがそちらの女性のインタビューは受 けたくないな」 「そんな事をおっしゃらずにお願いします」 「もっとも、そっちの女性もする気が無いようだよ」 僕が真砂子を見ると彼女はソッポを向いていたままなのである。これではイン タビューが出来ない。 「申し訳ありません。日を改めてお願い致します」 「それは構わないが条件がある」 「なんでしょうか?」 「次のインタビューの日まで、この国に滞在しなさい」 「えっ?」 「私は明日でも明後日でも時間を取るから、君たちも良くこの国を見てからイ ンタビューをしてくれたまえ」 「はい。本日はお忙しい中、申し訳ありませんでした。また、お電話をさせて 頂きます」 僕と真砂子はオズオズと部屋を後にした。 「どうしたんだよ。真砂子」 「うん、なんだか呆気にとられてしまって・・・ゴメン」 「まったく、黒田のペースでインタビューどころじゃなかったよな」 「あの人の目を見ていると、なんだか自分が自分じゃなくなるような気がして」 「おいおい、真砂子らしくないな。あきらめて帰るのかい?」 「とんでも無い!!」 「あはは、やっといつもの真砂子に戻って来たな、笑」 「次はキッチリ、インタビューを取ってやるわ」 「そうだな。明日にでもアポを取って終わらせよう」 「森川君はずっと居たいんじゃないの?笑」 「あはは、ここにずっと居たら変な癖がついて会社に戻ってからセクハラをし てしまいそうだよ。笑」 取りあえず二人は黒田に用意してもらった宿舎に行くことにした。この島の住 人は殆どがこの宿舎に寝泊まりをしているようである。二人の案内された部屋 はゲストルームのようであり一流ホテル並であった。 「思った以上に奇麗な部屋ね。もっと汚いところを想像していたわ」 「どうする?まだ、5時だからこのまま住人にインタビューに行こうか?」 「う〜ん、一度、お風呂に入りたいわ」 「OK、僕の部屋は隣だから6時にまた迎えに来るよ」 「わかったわ」 僕も自分の部屋でシャワーを浴びてベットで横になっていたのだが、いつのま にか寝てしまったようである。ドアをノックする音で目が覚めたのであるが、 時計を見ると7時を回っていた。 「真砂子かな?どうぞ!」 「失礼します」 入って来たのは、先程、琴美と呼ばれていた女性であった。 「君は・・・」 「琴美と申します。ご主人様に森川さまの御面倒を見るように言われてまいり ました」 「ご主人様?・・・あっ・・そうか黒田さんですね」 「はい、食事の用意が出来ましたのでご案内いたします」 「そうですか・・・すみません」 「嶋崎様は先にご案内しております」 「そうですか。迎えに行かなかったので怒っていたかな?」 「いえ、私が6時に御迎えに行った時にはそのようでもありませんでした」 「6時に?一時間も前か!こりゃたいへんだ」 「彼女には食事の準備をして頂いております」 「そりゃマスマス大変だぁ。チーフに食事の支度をさせて僕が寝てるなんて」 僕は琴美さんを急かすように食堂へと向かったのであった。真砂子の頭から湯 気の出ているのを想像しながら気ばかり焦っていた。 食堂に入ると数十人の男性がテーブルで食事をしていた。琴美と同じミニスカ ートに白いブラウスを着た女性達が食事をしている男性の隣で立って控えてい る。男性が彼女達に何かを言うと女性が動き出すのである。人に寄ってはお茶 を入れたり、食器を片づけたり、なにやら男性の指示で動いているようである。 僕は急いで真砂子を探したが見当たらないのである。 「森川様、こちらに掛けてお待ちください」 「あっ、はい」 「今、食事をお持ちいたします」 僕が指示されたテーブルの椅子に腰掛けると琴美さんはテーブルを離れて行っ た。首を伸ばして再び真砂子を探すがやはり何処にも見当たらないのである。 しばらくすると後ろで声がした。 「お待たせいたしました」 「ありがとう」 僕はテッキリ食事を運んで琴美さんが戻って来たのだと思ったが、テーブルに 食事を並べているのは真砂子だったのである。 「あぁ!真砂子」 「遅いよ」 「ごめん・・・つい寝てしまって。でも、その恰好は・・・」 僕は唖然として真砂子の恰好を眺めていた。琴美さんと全く同じ恰好をしてい るのである。すなわち、その他大勢の女性達と同じ恰好なのである。探しても 見つからないハズだ。 「あまりジロジロ見ないでよ」 「どうして真砂子がそんな恰好をしているんだ?」 「話すと長いんだけど・・・」 彼女は僕と別れた後、シャワーを浴び終えてバスルームを出ると脱衣所に脱い だハズの衣服が全て無くなっていたそうなのである。不思議な事に貴重品には 一切手を付けずに衣類だけが下着に至るまで消えていたそうなのだ。 バスタオルを身体に巻き付け途方に暮れているところに琴美さんが訪れて来た ので衣服を借りて食堂に来たのであるが食事の準備を手伝わされてしまったら しい。 「それは災難だったね」 「まったくよ。ここは痴漢の住み処じゃないかしら」 「森川さんに文句を言いに行こうか」 「さっき、琴美さんから伝えてもらったわ」 「でもその恰好じゃ、ここの女性だと思われるよ」 「・・・・・・それで手伝わされてしまったのね」 僕は目のやり場に困っていた。僕の横に立って話しをする真砂子のバストが丁 度僕の目の位置にあり、シースルーのブラウスの下には乳首がハッキリと見え るのである。真砂子は僕の視線に気がついたようである。 「森川君」 真砂子は両手で自分のバストを隠したがそれ以上何も言わなかった。 「もしかして・・・下着を着けていないの?」 「・・・・・・・・琴美さんも下着は持っていないし、売店もなかったの」 真砂子の顔は真っ赤になっていた。なんだかいつもの真砂子より弱々しく見え るのは気のせいであろうか。 「よかったら僕の更えを穿く?」 「結構です」 「あっ、そう。ところでこれは僕の食事?」 並べられた食事を示して聞いてみたのである。 「そうよ」 「そうか、もう食べ終えたんだぁ?」 「違うわよ、さっきまで別の男性の給仕をさせられたわ」 「黙って言うことを聞いていたの?真砂子らしくないね」 「私が何を言っても誰も聞いてくれないのよ」 「それはそれは度重なる災難ですね。笑」 「笑い事じゃ無いわ」 「そうだね。あはは・・・、ところで自分の分は???」 「それが、まだ、お預けみたい。男性が食べ終えた残りしか女性は食べさせて もらえないようなの」 そこに琴美さんが現れたのであった。 「どうかなさいました?」 「丁度良かった。琴美さん、彼女の分の食事を用意して頂けませんか」 「すみません。私は森川さんのお世話しか命じられていないものですから」 「そんなぁ!」 「申し訳ありません」 「じゃ、僕の分を彼女にあげるよ。食べていいよ真砂子」 「結構よ、森川君。この恰好で皆が食事をしていないのに私一人がするのも 気が引けるわ」 「・・・・・・・・」 「琴美さん達と一緒に食べるから気にしないで」 「そうして頂けると助かります」 「そうかい?本当にいいのか?」 「ええ」 「良い機会だからインタビューの他に体験談も書くわよ。笑」 「真砂子は転んでもタダでは起きないな。笑」 この時点では真砂子も自分の心の中での微妙な変化に気が付いていなかったの である。 |