ダブルエックス[part5] ショッピングセンターで全ての買い物が終わったのは5時を回っていた。殆ど の時間は僕の品物を選ぶ為に費やされたような気がする。化粧品売り場だけで も一時間は居たであろうか、何も知らない僕の為に基礎化粧品からメーキャッ プまで全て僕の顔で実演したのである。今、鏡を見ると朝の僕とは全く別人と なってしまっている。カツラまで購入し今の僕はセミロングになっていた。 先程、真砂子とは別れた。彼女は所有者と記載されている黒田省吾の元へと向 かったのである。ショッピングの時はすっかり忘れていたのであろう、別れる 時には彼女の顔が急に暗くなったのが非常に気がかりである。 しかし、僕には何もして上げられなかったのだ。これではなんの為に一緒に体 験入国したのか意味がないかも知れないが、もう少し様子を見るしかなかった。 「201号室・・・・ここだ」 僕はチャイムを押した。すぐに中からドアが開き女性が出て来たのである。 「はじめまして、森川真由子です」 「あぁ、聞いてるわよ。どうぞ」 僕が両手に抱える紙袋を一つ受け取り彼女は部屋の中に入って行った。 「なにしてるの?どうぞ、はいって!」 「はい」 「この部屋が貴女の部屋ね」 部屋は中央に8畳ほどのリビングがあり、その部屋を挟むように4.5畳程の 寝室が二つあった。その一つが私の部屋で中央のリビングは協同利用のようだ。 彼女は私は部屋に荷物を置くとリビングに戻った。 「益田恵子です。えっと、真由子さんね。まゆっちって呼んでいい?」 「はい」 「これから宜しくね」 「こちらこそ宜しくお願いします」 「もちろんよ、島田先生にも頼まれていますから」 「あっ、そうだったんですか、いろいろ教えてください」 「えぇ、でもすっかり変わったわね」 「えっ?」 「朝、会った時は普通の男性だと思ったのに、今は立派に女なんですもの」 「・・・・・」 「あれ?わからない?・・・アヌス栓の調子はどう?」 「あっ、検査室の看護婦さんですか?」 「やっとわかってくれたわね。私って印象が薄いのかな」 「そんな・・制服を着てないものですから・・・・すみません」 「いいのよ。笑」 「ところで、プレマリンと下痢止め錠剤を受け取らないで来たでしょ」 「あっ」 「はい」 僕は恵子さんから白い錠剤と赤いカプセルを受け取った。 「カプセルが下痢止めだから今すぐに飲んで、白い錠剤は女性ホルモンのプレ マリンだから、朝、昼、夕食の後と寝る前に必ず飲んでね」 「はい」 僕は洗面所に行って指示された下痢止めを飲んだ。 「来てすぐだけど、そろそろ時間よ。食事の準備に行かないと」 「あっ、はい」 僕は急いで恵子さんの後を追った。 二階にある食堂に着くとすでに20人位の女性が食事の準備をしていた。 「まゆっちはテーブルを拭いて、調味料をセットしてね」 「はい」 僕は恵子さんの指示に従ってテーブルの上を拭き始めました。真砂子が気にな り僕は彼女の姿を探していた。突然、僕の尻を勢いよく誰かが平手で叩いたの である。 「うわぁ」 痛かったと言うより部屋中に響いたお尻を叩く音に驚いたのである。 「何してるの手を動かしなさい」 恵子さんであった。 「あっ・・はい」 「それに女の子は・・・うわぁ、じゃなくて・・きゃぁ・・・と言うものよ」 「もう一度、訓練しますか?笑」 「いえ、結構です。笑」 しばらくすると厨房の中で琴美さんと一緒に料理を作っている真砂子を発見し た。 「ふむ、真砂子さんでしたっけ?彼女が気になるのね」 「いえ、別に・・・・」 「彼女達は今日は料理係りなのよ。女性はグループ別けされていて当番制なの 私達はフロアー当番よ。頑張りましょう」 「はい」 約一時間で男性は殆どの人が食事を終えていた。僕の身体はクタクタである。 「あと5分程で、私達も食事の時間よ。頑張って・・・」 「えぇ、でもクタクタです」 「そうね、今日は酢酸メドロキシプロゲステロンを注射したものね」 「あれは何だったんですか?」 「聞いてなかったの?黄体ホルモンよ」 「それは聞きましたが・・・よくわからなかったんです」 「簡単に言うと女性化させる為のお薬なの。通常だと2.5mgも採取すれば良い んだけど、まゆっちは5.0mg摂取したから女性のあの日と同じ位の虚脱感がある はずよ」 「どうりで疲れると思いました」 「もっとも、人によって効果は違うから、疲れは薬が原因じゃないかも知れな いわ。単に精神的、肉体的な物かも知れない」 「そうですか・・・・・・・・」 「10日程、様子を見ながら続けると言ってたわよ」 「私は普通より早く、女性になれるんですか?」 僕はそれとなく尋ねてみた。 「さぁ、肉体的な物と精神的なモノのバランスを取りながら進めると思うわ」 「そうなんですか」 「あっ、最後の人達が出て行ったわよ。片づけて私達も食事にしましょう」 「はい」 食器を片づけて僕たちは食事を始めた。 「どうしたの?あまり食べないわね。調子が悪いの?」 「いえ」 「今日は緊張したのね」 「・・・・・・・・・この後のことが・・・・」 「あぁ、まゆっちは経験が無いものね。でも、お尻は大丈夫よ。笑」 「でも、連れて行かれた後・・・どんな事をするんですか?」 「それは相手によって違うと思うわ」 「たとえば?」 「私の場合は相手が見ている前でオナニーをさせられたの」 「本当ですか?」 「えぇ、でも、ここに来る前からホルモン摂取をしていたので立たなかったの」 「えっ?恵子さん・・・男なんですか?」 「女よ。ここでは・・・笑」 「そうじゃなくて、前の世界で・・・」 「そうね」 「ぜんぜん、わからなかった。テッキリ本当の女性だと思っていました」 「まゆっちも奇麗になるわよ。私と違ってもとが良いから」 「そんなこと・・・」 「ところで、ホルモン治療をすると立たなくなるんですか?」 「そうよ、人によって違うけど6ヶ月もすると完全に男性としての能力は無く なってしまって、もとには戻らないそうよ」 「そうなんですか・・・・」 「恐い?」 「少し」 「ここに入国する時に覚悟が出来ているものだと思ったわ」 「いえ・・・私の場合・・・」 「うん?」 僕は琴美さんに言われたことを思い出した。体験入国を他人に知られてはいけ ないのである。つい話しの流れで恵子さんに話してしまうところであった。 「もっと、すぐに性転換手術をして頂けると思ったんです」 「そうだったんだ?」 「優柔不断な所があるんです。気が変ると困ると思って」 「そうね、私も手術するの恐くないと言ったら嘘になるかな」 「やっぱり、恵子さんでも?」 「そりゃそうよ・・・でも、一週間後に予定しているの」 「そうなんですか、頑張ってください」 「もう、食べないの?」 「・・・・・・・・・」 「いつまでここに居ても仕方ないから行くわよ」 「・・・・・・・・・はい」 ついにその時が来てしまった。僕と恵子さんは食事の後片付けをしてロビーに 向かった。7時45分である。 ロビーの壁には5人程の女性が並んでいた。昨日はソファーに坐って興味本位 に眺めていたのが、ずっと昔の出来事のように思われた。まさかその時は自分 が男達の視線に曝されてここに立つとは夢にも思わなかったのである。 一人の男性が僕に向かって歩いて来た。身長は180cm近くあるであろうか 体格も僕よりずっとガッチリしている。腕力では勝てそうにない・・・・・ 「今日は約束している人がいるのか?」 「・・・・・いえ」 情けない事に応えた自分の声は泣くように弱々しい声である。 「じゃ、今夜、付き合ってくれるか?」 「今日は駄目なんです。すみません」 「そうか・・・じゃ、またな」 「・・・・・・」 パスを1回してしまった。まだ、7時50分だ。30分はここに居なくてはな らない事を考えるとパス3回の権利では8時15分まで持ちそうになかった。 一人目の男が去るとすぐに二人目の男が来たのである。僕は再びパスを行使し たのである。もう、頭をうな垂れて下を向いている他なかった。 しばらくすると床を見ている僕の視線に男性の足が入って、止まったのである。 「どうしたんだね?そんなにうな垂れて」 恐る恐る顔を上げると声の主は黒田であったのだ。後ろには真砂子と琴美さん を引き連れていた。 「すっかり、女になったな。真由子君」 「・・・・・・・・・・」 「とても良く似合っているよ。早く立派にマゾ女になるよう頑張りなさい」 「・・・・・・・・・・」 「今日は君のもと上司をゆっくりと調教することにした」 「そんな!」 「その為の下準備はすっかり終わっているんだ。笑」 黒田は獲物を見るような目で僕の身体を嘗め回しているのである。真砂子は黒 田の後ろで何かにじっと絶えているかのようである。良く見るとミニスカート に薄っすらと染みが出来ているではないか。 「それは!」 「そう、食事の間、ずっと・・・このリモコンのスイッチをONにしていたん だよ。君にもこのリモコンは見覚えがあるだろ?」 「それは・・・壊したはず」 「試してみるかい?ほれっ!」 黒田はレベルを最高の一つ前まで上げたのである。 「あぁぁぁ・・・」 黒田の後ろで真砂子の悲鳴が漏れたのだ。彼女の内股を伝って愛益が流れだし ていた。彼女は足をガクガク震わせその場にしゃがみ込んでしまったのである。 黒田はそれを見るとリモコンのレベルを下げた。 「おい、真砂子!そんなところに坐るんじゃない」 「あぁ・・・は・・い」 真砂子は黒田の命令に従順に従い立ち上がったのであった。 「残念だったね。リモコンはいくつもあるんだよ」 「・・・・・・・」 「あはは、楽しみだ。お前も誰かに可愛がってもらいなさい」 黒田は僕にそう言うと真砂子達を連れて消えていった。 「黒田さんと何かあったの?」 心配そうに恵子さんが僕に尋ねた。 「いえ、なんでもありません」 「そう?それなら良いけど・・・ここでは彼は王様のようなものだから」 「そうですね」 「お待たせ」 検査室のドクターであった。 「真由子君、調子はどうかな?」 「少し疲れました」 「うん、明日も診察に来るんだよ」 「はい」 ドクターは恵子さんを連れて消えて行ったのである。8時10分であった。 三人目の男性が現れた。それはカウンセリング室の島田先生であった。それを 見た数人の男達がソファーから腰を浮かしている。 「まだ、今夜の予約は入ってないかな?」 「はい」 「じゃ、今夜は僕と付き合って貰えるだろうか」 「はい、お願いします」 島田さんが僕には救いの神様のように見えたのであった。 |