Fairy World/美澄 (作:由香

scene-1 【 一人遊技 】

 ボディコンワンピース。ピンキー&ダイアンのボディコンワンピース。黒い
光沢のある、今にも尻裂の見えそうな、マイクロミニのボディコンワンピース。
 それは、まるでハリウッド映画のキャリアウーマンのように、自信にあふれ
た大股でホテルの廊下を歩いていく。筋肉質的な脚は長く、6インチヒールの
エナメルのピンヒールを履いている。
  ノースリーブの、女性にしては広い肩幅から伸びた白い腕は細く見える。い
や、背が高くやや大柄な躰全体のスケールが、長い腕を細く見せているのかも
しれない。
 足を進める度に、緩やかにウエーブのかかった、肩より多少長めの黒髪が揺
れる。レイバンの黒いプラスティックフレームのサングラスをかけた顔が、『
ブロンディ』のキム・ベイシンガーを思い出させる。漆黒の髪と黒いサングラ
スに囲まれて、MACの赤いルージュがいっそう紅みを増して濡輝している。
 彼女は、ホテルの部屋に入ると左手に抱えていたセカンドバッグをベットに
放り、クローゼットの扉に附けられた姿見の前に正対した。ボディコンシャス
なワンピースは肉体にピッタリとフィットし、そのラインを克明に映し出して
いる。
 黒いブライト調のストッキングに包まれた両足を左右に開き、エナメルのピ
ンヒールを踏ん張るように、あたかも見た者を洞喝するような立ち方だ。
 サテンの、これも黒い手袋を嵌めた左手を腰におく。右手は黒いストッキン
グの太腿にあてがわれていた。
 ゆっくりと右手が動き始める。それは、小指から人差し指に順番に、一本一
本が太腿の感触を味わうように、前面から背面へと行われた。
 そして、黒い手袋のサテン地とストッキングのナイロンの擦れるサーという
音から、サテン地と光沢のあるボディコンの・・・・ほとんど摩擦のない・・・・スー
という音に変わる。手袋をした黒い右手は、ストッキングからスカートの裾に
上がり、小振りな尻丘のカーブを登っていく。今度は指と指の間隔を開け、尻
丘の丸みに合わせるように円を描きながら撫でまわす。
 その手をいったん尻丘と太腿の境目まで下ろすと、左手も同じ位置にあてが
う。今度は左右の手が同じ動きをする。ゆっくりと尻丘を上りウエストライン
を通り、躰の背面から前面へ回り込みながら、二つの膨らみのあるバストへと
登っていく。
  大きいとはいえないが形のよい胸の膨らみを、掌で包み込むように持ち上げ
る。ベアバックブラの感触を布地越しに感じながら、膨らみにそってやさしく
撫でる。両側から谷間に向けて押しつぶすように揉みしだく。
 左手はそれを繰り返しながら、右手を谷間の下からへその上、下腹部へと伸
ばしていく。両脚の間に・・・・膝から付け根にかけて徐々に太さを増していく腿
の間・・・・滑りこませた手を、マイクロミニの裾がごと奥へと差し込む。
 指先に少し力を入れた右手を、下腹から両脚の間へ前後に動かす。その動き
に合わせたように、彼女の腰も前後に動きだす。右手が上にくるとヒップを突
き出すように腰を引き、奥に入ると腰を入れて恥骨を押し出すようにする。
  左手で胸の両膨を撫揉しながら、右手で股間を刺激する。鏡の中の彼女の閉
じられた赤いルージュの唇が微かに開き、前後に動く腰に左右のくねりが加わ
っていく。
「あぁ、うーん・・・・」
 乳房を、秘部を、自らの手に蹂躙され、手袋とボディコンの布ずれの音しか
しなかった部屋に、彼女の小さなな吐息が混じる。
 胸の膨らみを撫揉していた左手で揺れる前髪を掻き上る。そして、サングラ
スに指をかける。サングラスを外した彼女の瞳に映ったもの。鏡の中の彼女の
スカート部に浮かび上がった姿形。それは、女性ならばあるあずのない、男性
特有の欲望を膨張させた器官なのだった。
 躰にピッタリとしたボディコンは、知的で颯爽とした女性という外観と裏腹
に、怒張させた器官をクッキリと現出させていた。しかも、カリ首の裏側の形
までもハッキリと見せているそれは、ピクピクと痙攣し感漏していることが容
易に想像できた。
 サングラスを床に落とすと、その手を赤い口元に持っていき手袋の先端を白
い歯で噛み手から外す。細っそりした長い指、赤いマニキュアをした長い爪、
その左手も下腹部に下ろされる。
 左右の手でスカートの盛り上がりを挟み込むように、以前にも増して激しく
前後させた。噛んでいた白い歯が離れ、手袋が下に落ちる。
「ん〜、これ・・・・い、いぃ〜」
 腰を前後左右にくねらせ、吐く息も自然と荒くなる。見事なボリュームの内
腿が黒いストッキングの中で波打ち、6インチという異常に高いピンヒールの
せいもあって、足首からふくらはぎにかけて力が入っている。
 まるで、脚全体が感電したかのようにビクッビクッと動く。そして、大きく
ビクンとしたかと思うと、一瞬、その感電が躰全体に伝わり、上半身を弓なり
に大きく反らした。
 しばらくして凝固が解けると、女性の外見をした者は大きくひとつ息を吐き
出し、満足した躰をベットに崩していった。



scene-2 【 秘恥性癖 】

 美澄はシャワーを浴びながら、今日は何を身に着けようか考えを巡らした。
 彼の身長は168センチ、体型はスリムというよりは明らかに細い、手脚も
細く長く見える。雪国生まれのせいではいが、女性も羨むほどに肌が白い。
 浴室を出ると広げたバスタオルを両肩に掛けただけの姿で、冷蔵庫から取り
出したバドワイザーを飲みながら寝室へ向かった。
 クローゼットの中の引き出しから、黒いレースのハイレグパンティを取り出
し足を通していく。
 次にパンティとお揃いのレースをあしらったベアバックのブラジャーを手に
取り、慣れた手つきで背中のホックを止める。ブラのカップにはアメリカ製の
シリコンパット、イントリーグを詰め込む。美澄は両手でブラの胸を撫で、バ
ストの出来上がりに満足した。
 レースクィーンの使う光沢のあるベージュのタイツを穿き、その上に透明感
のある黒いパンティストッキングを重ね穿きする。重ね穿きするわけは、仕事
で着替えることがあり、すね毛を処理できないからだ。同じ理由で会社に女性
の下着を着けて行くことはできない。
 下に穿いたタイツの光沢が、黒いストッキングを通して脚を綺麗に見せる。
パンストだけでも光沢のあるものもあるのだが、美澄はこの方が気に入ってい
たのだ。
 ストッキングを直しながら美澄は、足首から脚の付け根までサラサラとした
ナイロン独特の手触りを楽しんだ。

 クローゼットからハンガーに吊るされた、女性でも着れるのだろうかという
くらい小さな、光沢のある黒のワンピースを選ぶ。そして足から着ていく。ス
トレッチ素材のボディコンにピッチリと包み込まれた感触は、美澄にとって実
に気持ちいい。
  足にはロンドンから輸入された、ヒールが6インチもあるエナメルのピンヒ
ールを履く。ハイヒールを履くことでヒップから脚全体が緊張し、美澄自信ま
るで本当の女性の美しい脚を見る思いだ。
 こうして、身支度を整えると鏡に向かう・・・・

 北川美澄は、某メーカーの中間管理職を勤めていた。美澄の勤務していた会
社は、戦後の復興期も終わりに近づいた頃に創業し、常にトップリーダーとし
て業界を牽引し、世界でも他に並ぶ者のない存在だった。
 バブルの崩壊とともにリストラもあり、経営不振を理由に昇給や賞与なし、
役職手当も付かない。平社員と一緒に体力のいる仕事もこなし、上役には責め
られる。しかし、割に合わない立場にいながらも、私生活はやっと満足できる
もになってきていた。
 ところが、業界トップの会社も長い間の乱脈経営がたたり、創業者である社
長が我が身かわいさに休業にしてしまったのだ。
  失業した美澄は、休職活動の傍らアルバイトをする毎日だった。

 北陸の寒村で生まれ育った美澄が初めて女性の下着に接したのは、まだ物心
のつかない時だった。それを初めて意識したのは小学生の低学年の頃、物置に
落ちていた、片方しかないガーターベルト用のストッキングを穿いたことだっ
た。ナイロンの何ともいえないツルツルした手触り脚触りが、彼に女性の下着
の素晴らしさを意識させた。
 そして、気がついた時には、これなしでは生きて行けない体になっていた。
 姉のタンスから持ち出して着用したこともあったが、実家が洋品店というこ
ともあり、深夜にショーツやブラジャーを盗み、自分の部屋で着て過ごすこと
もあった。それはだんだんエスカレートし、パンスト・ガードル・スリップと
増えていった。
 学生時代は、ボディスーツやペアになったブラ・パンティなどを、アルバイ
トで貯めたお金で買いに行くようになる。それが、水着やハイヒール、黒の下
着となっていった。ファンデーションからランジェリーへの変わり目でもあっ
た。
 上京してからは、新宿、渋谷、池袋などのデパートやショップを廻りまくる
ようになる。この頃には、ガーターベルトやスリーインワン色も黒オンリーと、
セクシーな嗜好になっていた。
 社会人になると経済力もあり、ワコールなどのメーカー品やインポートのセ
クシーな物を買い求めるようになり、ラバーレオタード、PVCのボディコン、
腿まであるエナメルロングブーツなど、ビザール系に傾倒していた。
 この頃美澄は、高校時代から付き合っていた女性と結婚している。付き合い
始めて程なく彼は、彼女に自分の秘密を打ち明けている。彼女は理解を示した
ばかりか、美澄に協力的で結婚もしてくれたのだ。ところが、彼女の不倫が発
覚すると、二人の親兄弟に美澄の秘密を話し離婚を迫ってきた。これにはさす
がに美澄も困惑しきってしまい、失意のうちに離婚を承諾することになったの
であった。
 これが原因になったのか定かではないが、この後美澄の嗜好に新たなものが
加わった。女性の使用済み下着がそれだ。ブルセラなどではなく、直接取引し
ていたのだ。相手の女性は、人妻やOL、看護婦、中にはモーターショーのコ
ンパニオン、果てはSMの女王様もいた。彼女たちからパンティ、パンスト、
等の下着はもちろん、水着、レオタード、ボディコン、ハイヒール、と美澄は
譲ってもらっている。
 これと、光物のハイレグ水着、レオタードやボディコン、流行のブーツや新
機能下着等が美澄の最近の主流だ。

 ・・・・仕上げにMACの赤い口紅を引く。最後に予め赤いマニキュアを塗って
トップコートしたつけ爪を貼り、黒いサテンの手袋を嵌めた。美澄は姿見で全
身を隈無く確認する。
 由香の出来上がりである。
 寝室を出て玄関まで行き180゜向きを変えると、由香はサングラスを掛け
大股で歩き始める。美澄のマンションの玄関から寝室までの短い廊下が、今日
はホテルの廊下の代わりだ。


 scene-3 【 妖精世界 】

 美澄は、妙な寝苦しさで目が覚めた。ベットにうつ伏せで寝ているのだが、
どうも落ちつかない。ブラにシリコンパットを入れて、うつ伏せになったよう
な違和感。いや違う、パットに胸があたっているのではない。胸が直接ベット
のシーツにあたっている。
 そう感じた瞬間、美澄は飛び起きた。
 胸に両手をあてる、パジャマの上着を脱ぎ捨てる、胸を見る。そこには、な
いはずのもの、丸い膨らみがあった。ソフトボールを半分にしたような、球状
の膨らみがそこにあったのだ。
 美澄は、慌ててパジャマのズボンに手を突っ込んだ。
 そこには・・・・
「ないっ!」
 美澄は、思わず声をあげた。あるはずのもの、細身の体に似合いの決して立
派とはいえないが、男であることを証明する器官がなくなっていた。
 代わりにそこにあったものはまぎれもなく、かつて美澄の分身を受け入れて
くれたものと同じ快貝、美澄の欲望の爆発を受けとめた濡貝と同じものがあっ
たのだ。
  美澄はパジャマのズボンとトランクスを脱ぐと、自らの目で股間をのぞき込
んだ。その光景は目で見ても変わらなかった。あるはずのものがなく、ないは
ずのものがある。
 そして思いだしたようにクローゼットを開けると扉の内側についた鏡を覗く。
「お、女!」
 やや彫りの深い日本人離れした、どことなくシャロン・ストーンのような趣
のある、美澄好みの美人の顔があった。黒い髪は緩やかにウエーブのかかった
ロングヘア、対象的に肌は透き通るように白い。その白い肌の感じは20歳前
後、だが、彼女の顔立ちは26、7歳に見えた。
 それから姿見に素っ裸の全身を映す。そこに映っている人物は、どこから見
ても女性そのものだった。
 身長は以前と大差ないようである。やや張った肩幅も前ほど広くはないが丸
い。
 腕は細く、同じく細い指の先には、綺麗に伸びた爪が生えている。
 胸には大きくはないが形のいい乳房が二つ。ウエストはいっそう細く、真ん
中に縦長の小さなおへそがある。
 以前より明らかに広く大きくなっているヒップは、豊かな丸いカーブを形作
っていた。ウエストからヒップにかけてのこのラインは緩やかなS字を描き、
いかにも女性らしいアウトラインをつくっている。
 長い脚の付け根はある程度ボリュームがある。そこからから膝にかけて徐々
に細くなっている。ふくらはぎで少し外側に膨らんだラインは、実に細い足首
へと続いている。
 全体として、女性の標準的なサイズより少しグラマラスではあるが、女性と
しては高目の身長に比べるとスラッとした印象だ。まさに、美澄の理想として
いる見事なプロポーションだ。
 美澄は驚喜乱舞していいはずだった。自分が以前妄想したことが現実となっ
たのだから。だが、実際は何か複雑な表情で、ベットの端に腰を下ろした。
 美澄は自分の妄想が現実に起こった場合を考えたことがあった。そこで、非
常に困った問題があることに気がついた。つまり、ある日突然、自分が実在し
ない人間になる、これが美澄であると証明できなければ、こらから先生きて行
けないことになるのだ。
 ニューハーフのように徐々に変化し、それを周囲に認知させていけば問題は
ない。突然変わるのである。美澄は失踪し、誰にも知られていない女性が出現
したことになる。特に日本のように戸籍制度のしっかりした国ではなおさらで、
美澄であることを強調すれば、マスコミや生物学者の餌食になることが目に見
えている。

 美澄はしばらく考え込んでいたが、コンビニに行こうと思った。こんなとき
にお腹が空いたのだ。
 女物を着ようかとも思ったが、どれも派手なものばかりで、着て出れるよう
な服は無かった。まして、美澄は人目を引きたくない心境だった。
 だが、下着だけは着けようと思いなおし、マドンナブルーのシェイプパンツ
と揃いのブラを手にした。男のときの美澄のスリムな体型が幸いし、シェイプ
パンツはウエストがやや緩いだけでぴったりだった。問題はブラで、Aカップ
のそれに今の美澄の乳房は入りきらなかった。逆にアンダーに余裕があった分、
背中のホックを止めることができた。
 ブラのアンダーが浮いてしまい、みっともないことになった。しかし、いつ
もは隙間の開くカップに、本物の自分の膨らみが入った感触は、美澄を感激さ
せずにはおかなかった。
 ブラの上から楽しむ膨らみに、後ろ髪を引かれながらもポロシャツを着る。
ジーンズに太腿を突っ込み、どうにかお尻を押し込んだが、案の定ジッパーが
閉まらない。美澄はジーンズをあきらめて、スエットパンツを穿いた。

 美澄はマンションを出て、コンビニへと足を早めた。どこから見ても女性に
もかかわらず、どうも周りが気になってしまう。
 幸い誰ともすれ違うことなくコンビニに着くと、サンドウイッチとカフェオ
レのパックを持ってレジに向かう。レジに店員が居ないので、美澄は店内を見
渡した。店には店員はおろか客の姿も見えない。思いきってカウンターの中に
入り事務所のドアを開けたが、そこにも誰も居ない。
 美澄はマンションを出てから誰にも合っていないのである。
 何とはなく不安を感じた美澄は、商店街を抜け駅に向かった。その途中はも
ちろん、いつもは電車を利用する人々で賑わう駅周辺、改札、果ては乗降客が
居るはずのホームにも一人も居なかった。駅員さえも見あたらないのである。
 美澄は、ドアが開け放たれ誰も乗っていない電車を呆然と眺めていた。が、
突然背後から声をかけられた。
 美澄は驚きと安堵の表情で振り返った。そこには、白いPVCのワンピース
と同じくエナメル調のロングブーツ姿の女が立っていた。
「美澄・・・・いえ、今は由香と呼んだほうがいいかしら?」
 女は、長いストレートな髪をかき上げながら微笑みかけてきた。
「なぜ、名前を・・・・」
 川島なお美に似た美女を美澄は知らない。ところが、彼女は美澄を、女性化
したことを、しかも女装名まで知っているのだ。
「わたし、広畑由香よ。覚えてる?」
 覚えているどころか、美澄の女装名は彼女から頂いたものだったのだ。


scene-4 【 二人由香 】

 美澄が高校に入学して間もなく、彼の級友が隣のクラスに志穂美悦子によく
似た子が居ることを告げた。その子を見に行った美澄は、長い髪の広畑由香を
見て確かに似ていると思った。
 2年に進級すると二人は同じクラスになった。ショートカットにした髪は高
い身長によく似合い、彼女は益々気になる存在となっていった。
 3年の頃には、授業中に手紙のやり取りをするまでになる。何度かデートの
誘いもかけたが、彼女は顔を曇らせるだけだった。
 このとき美澄は、離婚することになる女性とすでに付き合っていた。美澄の
秘密も公認されていたということもあり、それ以上強く誘いをかけずに終わっ
た。
 しかし、美澄の脳裏から彼女の笑顔が消えることはなかった。

「でも、俺の知っている由香は・・・・」
「わたしも朝起きたら、変化していたの」
 彼女は電車の席に座るよう美澄を促しながら話を続けた。
 広畑由香は自らの変化に驚いた。若返っている上に、誰もが羨むゴールデン
プロポーションになっていたのだ。
 だが、その瞬間全てを知ったという。何が起き、何をすべきか。
「美澄のことなら、なんでも知ってるわ」
 彼女は白いロングブーツの長い脚を組み替えながら言った。
 ここは、入り込んだ者の望みが何でも叶う、異世界であること。美澄はその
世界の主人公の一人であること。だから、美澄の体が変化し私が現れたと。
 美澄が望めば、住むところも、食べ物も、気に入った洋服や下着、パートナ
ーだって思いのままになる。今は誰も居ない駅のホームも、いつもの喧騒にあ
ふれたホームにできるのだ。
 美澄にはひとつだけ納得できないことがあった。完全に自分の願望が叶った
わけではなかったからだ。そのことを口にしようとしたとき、美澄の表情を見
て取ったように広畑由香は言った。
「なにか府に落ちないようだけど、それは今にわかるわ。それより、その着て
るものどうにかしないとね。それと、話し方直しなさい」
 そう、美澄はいかにも女、女した言葉遣いが嫌いだったのだ。

 二人はとりあえず近場のデパートに入ると、身支度を整えることにした。誰
も居ない売り場で好き放題に、下着や服、靴や化粧品を選んだ。ただ二人の好
むようなものがあるはずもない。移動する間だけなので、適当に選ぶことにし
た。
 美澄は赤のスーツ、大きくV字に開いた胸元の下は、赤みがかったエリカピ
ンクのブラだけである。タイトミニのスカート、赤いパンプスにはクロスした
ストラップがついていた。
 いつの間にか、由香も白いエナメルワンピースとロングブーツというクラウ
ディア・ヴェルサーチ風から、細いベルトのついたジャケット、ニーレングス
のタイトスカートという、60年代スタイルに着替えていた。深いスリットの
入ったタイトスカートから伸びた脚は、黒い網タイツで包まれていた。
 化粧に手間取っている美澄に、由香は微笑みかけた。
「骨格がはっきりしてるんだから、眉山をペンシルでこう、眉尻は短めに・・・・
チークはブラウン系で、目の下に白でハイライトを・・・・リップはいいのがない
わね、今はこれで・・・・」
 とりあえずの用意を整えて外に出ると、街はいつものように人々で賑わって
いた。
「さて、気に入るものを探しにショッピングに行きましょ。そうね、色々廻っ
て・・・・最終的には新宿」
「それじゃ、車を手にいれなきゃ」
 由香はニコリと笑いながら、美澄は行き交う人々を気にしながら言った。
 二人は、ハイヒールの音を歩道に響かせながら、外車ディーラーのショール
ームへと向かった。
 すれ違う人たちは必ず二人の由香を見る。ごく普通のスーツ姿とはいえ、背
の高い美女が二人、堂々とした仕草で歩いているのである。目立たない方がお
かしい。
 彼女たちを見た者は皆、その素晴らしいスタイルに羨望すると同時に、自信
にあふれた仕草を見て、まるで自らより強い者に出会った獣のように畏縮した。
 美澄がBMW850iを眺めていると、由香に呼びかけられた。振り返ると
そこには、フェラーリ・テッサロッサ512M・スパイダーが用意されていた。
助手席にはすでに由香が乗っており、セールスマンらしき人がドアを開けて美
澄が乗り込むのを待っている。
 V12サウンドを背中に聞くシートに収まると、サングラスを掛けた美澄は、
赤い跳ね馬をホイールスピンさせながら飛び出して行った。


scene-5 【 倒錯淫狂 】

 髪をなびかせた美女を乗せた赤いスパイダーは、新宿の高層ビル群のひとつ
に停車した。数件のショップを廻った二人は、すっかり身支度を整えていた。
 美澄と由香は車を降りると、エレベーターに乗り最上階、の一室に向かった。
その一室は壁際の一角にカウンターバーがあり、部屋の中央に広いベットが置
かれていた。窓は床まで一面総ガラス張りで、ブラインドの類は一切なかった。
 美澄は外から丸見えの大きなガラスに戸惑いを覚えた。
「大丈夫よ。45階なんだから」
 後ろに立った由香は、美澄の背中のファスナーを下ろしながら言った。確か
に窓の外を遮る物はなにもなく、副都心の街並が広がるだけである。
 ワンピースが肩から落ちると、美澄の素晴らしい肢体が・・・・まるでSMの女
王様のような・・・・洞喝的な下着姿が現れた。
 濡れたような光沢のある黒いPVC製スリー・イン・ワン、そこから伸びた
ガーターベルトで黒いストッキングを吊っている。同じくPVCのパンティの
後ろはTバックになっており、滑らかな尻裂に喰い込んでいる。黒いエナメル
の編み上げ式ハーフブーツは、細いヒールが5インチ、13センチ近くもある
ものだ。
 由香のアウターは、前と変わらないフィットスーツ姿のようだ。いや、これ
も優に10センチ以上もある、踵の高いハイヒールに履き換えている。この黒
いピンヒールは、足の甲から足首にかけてやや太めのストラップが4連になっ
ている。
 由香は背後から、Tバックのパンティを挟み込む美澄の尻丘を撫で回す。そ
の手の爪は短く切り揃えられ、赤黒いネイル・エナメル・・・・シャネルのルージ
ュ・ヌワール・・・・が塗られていた。ルージュは別名ヴァンプと呼ばれるネイル
に合わせ、黒みがかった赤い色をしている。シルバーのアイライナーが目の輪
郭に沿って描かれたメイクが、いっそうヴァンプらしさを強調している。

 由香は撫でていた尻丘をパンと叩いたて、ガラス張りの窓まで行くように促
した。そして、意地悪く言った。
「わたしとしたいんでしょ? だったら、わたしをその気にさせてごらん」
 美澄は振り向いて由香に触れようとした。
「おっと、それはだめ」
 美澄は不満げな顔をした。それを見て由香はいかにもヴァンプ・・
・・妖女らしく振る舞いだした。
「おまえのことは、何でも知っていると言ったはずよ。おまえは、見る者を威
圧するような顔をして、いかにも女王様のような格好をしてる。けど、本当は
違う。強くて美しい女に命令され、服従したいのよ。そうでしょ?」
 そのとうりだった。スパンキングやスカトロ、縛りなどの拘束には関心がな
かった。しかし、美澄は女装して素晴らしいプロポーションの美女に、卑猥な
言葉を掛けられ、淫らな行為を命令されることが望みだった。
「そんなことを考えて毎晩オナニーしている。淫らな女装マゾ。それが、おま
えの正体よ。さあ、四つん這いにおなり!」
 屈辱感と羞恥心に感じ初めていた美澄は、ゆるゆると四つん這いになった。
黒い光沢のあるTバックが尻裂に喰い込み、かろうじて秘部を覆っている。誰
もがそそられる光景だ。
 由香は美澄の鼻先に回り、ベットに腰を下ろすと長い脚を組んだ。そして、
ハイヒールの爪先で美澄の顎を持ち上げ、自分の顔に向けさせた。
「まだ不満がありそうね。マゾだと認めなさい。わたしのハイヒールに口づけ
して、匂いを嗅ぎたいんでしょ? 舐めまわしたいんでしょ? 認めれば好き
なことができるのよ」
 そう言いながら、ハイヒールの爪先を美澄の目の前に突き出した。我慢しき
れず、美澄はハイヒールに口づけた。黒いエナメルの爪先からヒールまで舐め
た。その口づけが、4連になったストラップの一番上、足首まで来たとき、由
香は組んでいた脚を下ろした。
「そこまでよ。あとは、わたしをその気にさせることね」
 美澄は、今度は明らかに不満な顔をした。由香はそれを無視し、美澄を総ガ
ラス張りの窓に立たせた。
「さて、どうするか。見物させてもらうわ」
 美澄は掌から肘にかけて窓ガラスにつけ、両足を広げて立った。そして、腰
を左右に振り、まるでストリッパーのように上から下、下から上と繰り返した。
 由香はそれを見ていたが、スーツを脱ぎ捨てながらカウンターバーに向かっ
た。
 贅沢なレースをあしらったパンティ、お揃いのブラジャー、ガーターベルト、
脚にはネットのストッキングを履いている。ストラップが4連になったエナメ
ルのハイヒールがボンデージさを強調していた。
 緑色のラインの箱からラーク・マイルド・メンソールを取り出し、火を点け
る。カクテルを注いだグラスを片手に、また、ベットに腰掛けると網タイツの
脚を組む。
「パンティを脱いでオナニーなさい。さあ、指を入れて、自分の感じるところ
を虐めるのよ!」
 美澄がPVCのパンティを脱ぐと、下腹部には小さな逆三角形した秘毛が現
れた。生まれて初めて自分の未知の器官に右手を触れた瞬間、ビクンと背中か
ら脳髄に快感が走った。触れただけでこれだ。指を入れたらどうなるんだろう。
そんな思いの中で、恐る々自分の秘穴に中指を入れていく。
 入れただけで愛液が噴出したのがわかった。そして、感じるところを探すよ
うに指を使った。膝が震え、丸かった尻丘の両則面に力が入りくぼみができた。
 腰をグラインドさせ、指を出し入れしている後ろ姿を由香はしばらく眺めて
いたが、厳しい口調で言い放った。
「そんな独りよがりでわたしが感じると思う? そんなんじゃ男だって立ちゃ
しない」
 美澄は自分の快感に酔い、由香のことすら頭になかった。無意識の内に、残
った左手でスリー・イン・ワンのブラの上から、膨らみを揉み込んでいたのだ。
それを指摘され、うっすらと汗をかいた額をガラスにつけ、動きを止めるしか
なかった。
「ふっ、わたしがうかつだったわ」
 由香はタバコを消すと、不気味な微笑みを浮かべながら立ち上がった。左手
のカクテルグラスはそのままに美澄の背後に近づく。
 中指の入ったままの秘穴に由香も指を差し込んだ。中指を入れ、人差し指を
加えていく。
「すごい、もうこんなにビショビショじゃない。女はいいでしょ?こんなにも
感じるのよ」
 言い終えると、由香はカクテルを口に含み、振り返るように後ろを向いた美
澄に口づけた。「007」の女スパイをイメージとした
「イヴ・サンローラン ルージュ・ピュール 23レッド」の赤い唇と、「ラ
ンコム ルージュ・マジック 421」の赤黒い唇が触れ合う。そして、口移
しにカクテルを注ぎ込む。強いカクテル・・・・ラスティ・ネール・・・・に美澄が一
瞬クラッとした瞬間、由香は秘穴に入れた指を強く握り絞めた。
「痛いっ、」
 由香は、二人の顔の間に上げた指を見せて言った。
「SEXを知り尽くしたような顔をして、処女だなんてね」
 美澄には秘穴から内腿を伝わって、ガーターベルトに吊られたストッキング
に染み込んでいく液体が何なのか、由香の指を見るまでもなくわかっていた。
 赤黒い爪の指に、美澄の処女の鮮血がまとわりついている。由香はその処女
の証を赤黒い唇で啜った。まさに血を吸うヴァンプそのものだ。さらに美澄の
脚元に膝まづくと、内腿の鮮血を舐め取っていく。それは、徐々に上へと進み、
最後には美澄の秘部にまで達した。
「あっ、」
 これも生まれて初めての快感。秘部を吸いたてられ、子宮に舌を絡ませられ
る快感。
「うゥ、ああん・・・・」
 美澄は膝を震わせて、窓にあてた手をガラスを掻きむしるように握り締めた。
あっという間に登りつめようとしていた。ところが、それを見計らったかのよ
うに、由香の唇は美澄の秘穴から離れてしまった。
「だめっ、お願いもっと・・・・」
 美澄の哀願に由香は答えようとしない。ガラスにあてた手を取り秘部に導い
た。美澄に自分でしろということだった。
 もっとして欲しかった。あの快感、あの舌の感触をもっと味わいたかった。
だが、一度火が点いた躰は止められるはずもなく、美澄は自らの指を深く、浅
く、出し入れし始めた。

 自らの指で慰められ、美澄の目は焦点を失っていた。そのトロンとした瞳に
新宿の街並、行き交う電車や車が小さく映っている、・・・・はずだった。
「いやっ、嘘よ。いやよ、こんなの」
 悲鳴に近い声をあげ、美澄の目が大きく見開かれた。
 突然、目の前の光景がロールカーテンを巻き上げるように無くなり、美澄が
そこで見たものは、新宿駅東口、アルタに取り付けられた大型ビジョンを見上
げる大勢の人々、その視線の先には美澄。
 高層ビルの最上階、45階に居るはずだった。ところが今、美澄の居るとこ
ろは、わずか2階。アルタのガラス張りショーウィンドウのようなスペースだ
った。
 そればかりか、アルタの大きなビジョンには美澄の淫らな行為が、後ろから、
右から、左から、一部始終映し出されていたのだ。
 恥ずかしさのあまりしゃがみこもうとする美澄を、由香が背後から押さえつ
けていた。
「何を今更、ここのガラスはマジックミラーのようになっているの。始めから
みんな見られていたのよ。信じられないことが起こる世界よ、ここは」
 見せたいとか、見られたいという露出願望を、美澄は考えてもみなかった。
自分の望みどうり叶うなら、こんなことが起こるはずはなかった。
「いや! こんなの。見られるのはだめっ」
「じゃあ、これはどういうこと?」
 指でなぞられ、目の前に突き出されたもの。濡れ光る液体を見せられ、美澄
は初めて気がついた。さっきまで自分の指で弄んでいたとき以上に濡れている。
その上、内腿を処女の証とは違う多量の液体が流れ落ちているのを。
「そんな・・・・」
 美澄の力が抜け、抵抗するのをやめた。自分でも思ってもみなかった行為に
濡れている。頭で否定していても躰はそれを望んでいる。車道にまであふれた
人々、大勢の男女が美澄の淫行に注目していた。

 由香は美澄の胸に手をまわすと、スリー・イン・ワンのブラのカップを引っ
張った。カップだけが取れるようになっており、乳房の下のワイヤー部分だけ
がまるく残り、形のいい膨らみが人々の目に露になった。
 呆然と観衆を眺めていた美澄だが、何かに憑かれたように両手で白い乳房を
撫でまわし始めた。腰を上下左右にゆっくり振り、スリー・イン・ワンのウエ
ストから撫で上げ、乳房を持ち上げるように揉む。一転して見せつけるように、
公衆ストリッパーと化した。
 それを見て由香は後ろに下り、どこから取り出したのか、シリコン製のディ
ルドゥの付いた皮パンティを手にしていた。ディルドゥはパンティの外側と内
側に1本ずつある。そう、レズビアンが用いるものだ。
 由香はディルドゥを舐めながら、片手でレースのパンティを脱いだ。そして、
唾液で濡れたディルドゥを自分の秘部に押しつけ、妖女のような顔が一瞬歪み、
奥へと挿入していった。皮パンティの両側の金具を止めると、疑似シーメール
の出来上がりである。
 いつの間にか美澄は左手で乳房を揉み、赤い爪の指先で乳首を刺激しながら、
右手の指で秘穴を掻き回していた。オナニーショーをしている美女の背後に、
由香はディルドゥを握りしめ歩み寄った。
「ついに正体を現したわね。この淫乱なマゾ女」
 美澄は背中でビクッとした。驚いたのではない言葉に感じたのだ。
 由香はハイヒールの足で美澄のブーツの足を開かせ、網タイツの脚をストッ
キングの脚に割り込ませた。
 由香の腰が近づき、ディルドゥの先端が美澄の秘穴の入り口に触る。それに
気づいた美澄は秘穴の刺激をやめ、また右手を窓のガラスにあてる。
 由香の腰が前に突き出される。美澄は目を閉じそれを迎え入れる。
「ああっ」
 さっきまで赤い爪をした指に弄ばれ、内腿まで濡らした秘穴はやすやすと太
いディルドゥを受け入れた、深く、深く。
「どう、喰わえ込んだ気分は?」
 由香は左手で美澄の腰を引き寄せ、右手でカップのなくなったスリー・イン
・ワンからこぼれ出た乳房を鷲掴みにした。そして腰をゆっくり、ゆっくりと
前後に動かす。
「いい、感じるぅ。こんなに・・・・いいなんて」
 美澄は大勢の観衆の前で感じ、悶えた。その声はスピーカーを通して外にも
聞こえていた。
「そう、いいの。じゃぁ、もっとよくしてあげる」
 そう言うと由香は、左手を美澄の繁みの中へ滑り込ませていく。
 堅いディルドゥの腰を動かし、乳房を揉み、そしてクリトリスに愛撫を加え
る。
「ああん・・・・んう〜・・・・」
 美澄の歯並びのいい唇から吐息が漏れる。由香は唇をひとつ舐めると、美澄
の首筋に口づけをあたえる。ツンと勃起したクリトリスへの愛撫が高まるにつ
れ、美澄の脚は震え下腹部が痙攣しているのがわかる。と、突然、
「ああ〜〜・・・・」
 美澄がひときわ高い声をあげると、クリトリスの小さな勃起が大きく膨張し
た。巨大に膨張したそれは、もはやクリトリスと呼べるものではなかった。
 まぎれもない、男性特有の器官だった。雁首をもたげよだれを垂らしたたそ
れは、猫科の動物のもののように体内に内蔵されていたのだった。
 白人女性のようなやや彫りの深い顔の美女、どこから見ても非の打ちどころ
がない見事なプロポーションの女性。その内に隠されていた器官を目の当たり
にした人々から、「おおっ」という驚きと、「ええっ」という疑問の声があが
った。
「これで納得いった?」
 由香から「なんでも望みが叶うこの世界」のことを教えられたとき、自分の
願望が完全に叶っていないことに納得がいかなかった。
 美澄の願望は、アンドロギュノス・・・・両性具有者・・・・女性器と男性器の付い
たそれだったのだ。しかも、美澄の望みどおり女性ベースで、袋は体外に露出
しない内蔵式で、竿の部分だけが出し入れできるという、特殊な男女両性者だ
った。
 由香はこの美しい両性具有者を責め続ける。右手で半球状の乳房を撫で、左
手でペニスを愛撫・・・・軽く握るように揉みながら、親指に先から出たよだれを
つけては雁首を刺激・・・・する。
 さらに、由香のペニス・・・・ディルドウをゆっくり出し入れする。その度に、
美澄の愛液で濡れたディルドウがテラテラ光っているのが見える。その様子は
ガラス越しに人々の面前に繰り広げられ、見えない部分はアルタビジョンに大
映しになっている。背後から、右に左にパンし、ときには下からアップで映し
だされていた。
 それを見ている大勢の人、人、人。何度も生唾を飲み込む人、口に手をあて
目を見開いている女、何かを語り合う男女、ついには自分の欲望をズボンのフ
ァスナーから出し、しごいている者までいる。

「お入り」
 由香が言うとドアが開き、レースクィーンのような水着姿の女性が入って来
た。アルタの前を埋めつくす人々にざわめきがおこった。それは、快感に溺れ
ている美澄にもわかる位大きなものだった。
 由香が美澄の体を窓ガラスから少し引き離すと、ハイレグ水着を着た女性は
美澄の目の前に立った。
「正真正銘、本物の森高万里よ」
 なんとそこには、人気絶頂の歌手が立っていたのだ。
 森高は普通なら決してするはずのない、泊を全面に散りばめキラキラ輝くピ
ンクのハイレグ水着を着ていた。そして、キャンギャルのように光るベージュ
のエアロビクス用タイツを穿き、白いエナメルのハイヒールを履いていた。ハ
イレグカットの水着は、綺麗な長い脚をいっそう引き立てていた。
「挨拶なさい」
 由香に命じられると、森高は美澄に口づけをしてきた。二度、三度と唇を合
わすと舌を入れてくる。森高の舌は美澄の舌に絡まり、長々とディープキスを
加えた。多くの人々の憧れの人気歌手が口づけてきたのである。美澄の男はピ
クンピクンと宙を跳ね、ねばっこいよだれが長い糸を引いて垂れ出した。
「さあ、万理。あなたもこのマゾ女を楽しませるのよ」
 森高は膝まづくと、美澄の男から垂れ下がったよだれを口で受けとめ、それ
を伝うように上がっていくと堅く膨張した器官を喰わえ込んだ。美澄の男に手
を添えると、茎を舐め、雁首に舌を絡め、亀頭を可愛らしい唇で吸った。
「あう〜ん・・・・気持ちいい」
 悪いはずがない。近づくことさえ叶わない森高万理が、自分の男根をしゃぶ
っているのだ。
 森高は頭を前後に動かし、舌を使い、吸った。手で美澄の尻丘を愛撫し、ふ
くらはぎから太股を撫で回す。由香はその動きに合わせるように、美澄の女へ
の責めをリズミカルにしていった。
「いぃ・・・・いい〜・・・・」
 由香に乳房を揉まれ、女の部分を貫かれ、森高に尻丘を脚を撫でられ、男を
刺激され・・・・それは、あっという間に訪れた。
「もう、だめぇ・・・・いきそう」
 美澄の躰はガタガタと震え、背中を大きくのけぞらせた。
「いくぅ〜」
 美澄の体内の肉壁は初めての痙攣を体験し、体外の肉棒は森高の口内に射精
した。
 由香は自らの快感に耐えるような表情をしている。由香の体内にもディルド
ウが入っているからである。森高は美澄の放出した白い液体を、喉をゴクゴク
いわせ飲み込んでいった。

「万里、お立ちなさい」
 由香が言うと、光る水着姿の森高が立ち上がる。
 ディルドウをバックから挿入したままの由香は、美澄の男をまるで自分の物
のように扱いながら、森高の脚の間へと操っていく。
 森高の秘部は何も着ていないかのように、美澄の男を受け入れた。ハイレグ
の水着とブライト調のタイツには、スリットが入っていたのだ。その様子はア
ルタビジョンに大映しになっていた。
 今度の由香は、前と違って激しく腰をつかった。
 由香の秘穴に押され内側のディルドウが動く、その動きが外側のディルドウ
を伝わって美澄の女を濡らす、それがさらに美澄の男に伝染し森高の秘穴を刺
激する。三人が三人共感じ、それぞれの嗚咽を漏らす。
 アルタの前では男だけでなく、女性までが下腹部に指を入れ慰めだした。三
人の行為を見ながら自分たちも行為を開始するアベック。果ては、見知らぬ男
女の即席カップルまでが行為に参加している。
 由香は二人を犯しながら、責めながら感じた。
 森高は女として純粋に感じた。
 美澄は後ろからディルドウに女を貫かれ、一方前では男で女を貫く。男と女、
両方の快感を同時に味わっている。まさに、究極の快楽に溺れていた。
「女のSEXには、果てることがないのよ」
 確かに由香の言葉通り、三人は何度もいった。三人の女はもちろん、美澄の
男も女がいき続けるかぎり何度もいった。
 果てしない淫行・・・・