宇宙から観察する地球の姿は、たとえようもなく美しいということです。「原子」というミクロの世界も、拡大して 見ると実はとても美しいのです


原子の本当の姿

学が進歩した現在でも、原子の中を直接見ることはできません。原子の中には電子があります。この電子のありさまを描写できれば、原子の本当の姿の一部がわかるはずです。国立科学博物館では、このような電子の様子をあらわした拡大模型を展示しています(図1)。この展示の説明には、「電子雲(でんしうん)」という言葉が使われています。しかし、このような模型からは、「雲」のイメージはまったく湧いてきません。電子の「雲」を、それらしく表現する方法はないのでしょうか。「ネビュラ(雲や霧の意)」は、そのために開発された新しい彫刻模型です



図1 国立科学博物館地球館B3フロアの展示
    (撮影:時田澄男)



電子の姿の描き方


原子は、原子核と電子でできています。ラザフォード(英)は、1911年、「電子が原子核のまわりを回っている」というモデルを提案しました(図2)。電子を単なる粒子として考えるこのようなモデルは、原子の本当の姿を表わしていません。電子は、「粒子性」と「波動性」という二重性をもっているので、太陽の周りを惑星が回るような軌道は描くことができないのです。ノーベル物理学賞を受賞した 朝永振一郎博士は「量子力学」という著書(みすず書房、1952年)を出版しました。この本には、羽根車を使って、水素原子のなかの電子の状態を本物らしく撮影する方法がのっています。現在では、コンピューターを用いて、もっと正確な図を描くことが可能となっています(図3)。これらは、雲のように見えることから、電子雲とも呼ばれています。正確には、電子がどこにいるだろうかを示す「確率密度」という量を表わしています。雲が濃いところに、電子がいる確率が高いということになります
 



図2 惑星型モデルは、原子の本当の姿ではない


図3 コンピュータで描いた電子雲 (2次元的な描像)

                             


3次元的な電子の「雲」

空に浮かぶ雲の大きさや奥行きは、一見しただけではよくわかりません。原子のなかの電子は図3のように平面的に分布しているわけではなく、に浮かぶ雲のような3次元の広がりを持っています。最新のレーザー彫刻技術を使って、ガラスの塊のなかにこの「雲」を表現したら、立体的に見え るでしょうか。私たちは、このような興味から、ガラスブロック内での電子状態の可視化という新しい試みに挑戦してみました。結果は、どれも美しい対称性を示していて、電子の本当の姿の表現に新しい世界を切り拓くこととなりました。写真に撮るとギャラリー)、2次元に変わるのでその本質をお伝えすることはできません。是非、実物をお手元に置いて、鑑賞していただきたいと思います。




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