原子と原子の結合は,共有結合・イオン結合・金属結合・配位結合・水素結合など様々な様式に分類されますが(例を参照),実際の物質では,その状態(固態・液態・気態,温度,溶液状態,他の物質との共存状態など)により様々に変化しますし,同じ条件でも個々の分子・イオンに着目すると異なっていたり時間的に変化したりしています.
例えば食塩の結晶はイオン結合でできているとされますが,厳密にはイオン結合性が約90%,共有結合性が約10%などと計算されています.
以下は有機化合物の塩の代表例である酢酸ナトリウムの場合で,学校の教科書などでは1のような書き方が多いですが,より厳密な2のような書き方をすることも増えてきました.この点は,アミノ酸の構造式が本によって異なった書き方をしていることとも関係します.一方,分子科学計算においては,分子力学計算や量子化学計算に基づいた様々な計算手法があり,扱う分子や計算目的によって使い分けるようになっています.前述のような理由もあってイオン結合が入ると計算手法・計算条件の選定が難しくなるのですが,本データ集ではその計算には不向きの面のある分子力学計算(計算時間が短く比較的大きな分子も計算可能なことから採用)により分子を組み立てているため,厳密な考慮をせずに以下の1aのような条件で計算して表示しています.
したがって本データ集の分子データを教育目的以外に利用する際は,利用者の必要な条件で再計算し直す必要がありますのでご注意下さい.
【HyperChemによる分子力学計算】(本データ集で採用している計算方法)
結合表示の形式 | 表示例 | ||
---|---|---|---|
a | b | c | |
1 | |||
2 |
参考【Chem3DによるMOPAC計算】 ※溶媒中での計算結果ではありません
Theory | 計算結果例 | ||
---|---|---|---|
I | II | III | |
AM1 | 電荷を-1(O),+1(Na)で指定 O-Naの距離=0.2558nm |
IIのO-Na結合を削除して計算 O-Naの距離=0.2559nm |
|
PM3 | 同上 O-Naの距離=0.2530nm |
同上 O-Naの距離=0.2530nm |
[注]ChimeでWireframe表示・Sticks表示にすると,他の原子と結合していない単一の原子・イオンは表示されませんので,本データ集や他のサイトのデータを参照する際にはご注意下さい.上記の分子モデルの表示変更(マウス右クリックで表示されるメニューの Display→Wireframe を選択)で試すことも可能です.