環境ホルモン関連分子の化学的ハードネス


 多数の化合物の中から環境ホルモンとして作用しそうな化合物を選び出していくために様々な試験法が考案されているが,近年発達してきている計算化学の手法を援用しようとする試みも多数あり,例えば小林茂樹らにより化合物の生物活性と化学的ハードネスとの関係の解析が報告されるなどしている。

 以下の図表は,小林らの計算値と,分子モデリングソフトのChem3Dで分子軌道計算した結果を比較したものである。小林らの「構造-毒性活性相関」によるダイオキシン類などの解析結果によれば,分子の毒性やエストロゲン様作用は絶対ハードネスに強く依存するとされる。なお,柔らかい(ソフトな)化合物とは電子が移動しやすいと解釈されるものである。

絶対ハードネス  η = 1/2(εLUMO - εHOMO
絶対電気陰性度  χ = - 1/2(εLUMO + εHOMO
  化合物 εHOMO /eV εLUMO /eV Δε/eV χ/eV η/eV
小林ら 1,4,6,9-TCDD -9.0419 -0.6036 8.4383 4.8228 4.2192
2,3,7,8-TCDD -8.7989 -0.7841 8.0148 4.7915 4.0074
本間(Chem3D) 1,4,6,9-TCDD -9.198563 -0.487552 8.7110 4.8431 4.3555
2,3,7,8-TCDD -8.221392 0.222116 8.4435 3.9996 4.2218
bisphenol A -11.912083 -1.145336 10.7667 6.5287 5.3834
DES -11.988889 -0.968711 11.0202 6.4788 5.5101
17β-estradiol -12.158271 -0.684811 11.4735 6.4215 5.7367