蝋燭能  殺生石

薪能@吉祥寺月窓寺のはずだったんだけど、このお天気で、武蔵野市民文化会館に。

おととしだったか、明治神宮の薪能のときも雨天でホールになって、そのときは入り口で松明をぼんぼん燃やしていたけど、舞台は普通の照明だった。

今回は、ホールは普通だったけど、「蝋燭能」ということで、蝋燭照明で舞台はゆらめく炎にほの暗く照らされて趣があった。

【仕舞】  ・江野島  関根 祥丸
       ・ 井 筒  寺井 栄
       ・ 善知鳥  関根 知孝

【舞囃子】 ・葛 城   関根 祥六
【狂言】   ・箕 被   山本東次郎 山本 則孝
                  
【能】   ・殺生石   関根 祥人 村瀬 純

(観世流)

    
「殺生石」は、わたしの好きなキャラ、アジアン・ファムファタルであるところの玉藻前の話なので楽しみだった。

前半は生身の女であらわれるので静かなのだけど、後半殺生石から白頭で現れて激しく踊る様は異形ながら美しい。

演奏のほうも素晴らしく、邦楽は全く詳しくないけど、特に大鼓(亀井実氏)の響きが、ほんとにこの世のものではないような、これが幽玄というものかなあと聴き入った。

他の舞台の写真で見ると、シテは赤いカツラに赤い着物のものもあるようだけど、今回のは白頭に衣装も白や金や黒でシックな感じで、夜の能にぴったり。

わたし的に非常に好みだったのだが、こういうのはなにか違いがあるのかなとちょっと調べてみたら、やはり演出としていろいろな種類があるらしい。

白頭のときは、「よりどっしりと重量感をもたせ、より硬質な大きな力を表現しながら舞うのが心得」だそうだ。

http://awaya-noh.com/modules/tinyd1/rewrite/tc_58.html 

面も、普通の女面を使うのもあるらしいが、今回は「野干(狐)」で、しかも髪に隠れてちらちらとしか見えず、そこがいっそう凄みがあった。


若いころは歌舞伎が好きだったけど、このごろは能が断然おもしろいと思うのだった。