memo  斎藤芽生

先日木場の美術館のミュージアムショップで過去のカタログをみていたら、色鮮やかで奇妙な花輪の絵が目に留まり、さらに団地の窓がさまざまに象徴的に描かれた「晒野団地入居案内」というシリーズとそのタイトルにも非常に魅かれるものがあったので、その「傾く小屋」という企画展示の図録を買って帰った。

斎藤芽生という画家。

公式サイトも美しい。
http://www.artunlimited.co.jp/meo/

11月に個展があるんだなー楽しみ。

この人の書く文章も、単に筆が立つというだけでなくその思考の深さを知ることができて興味深い。

斎藤芽生の文章引用 :「傾く小屋」カタログより

最後の部分に共感を感じる。うーんこれはすごい。

***

どれだけ質の高い虚構の世界を持ちその中に遊べるか、同時にその虚構から覚醒しているかは、作家の資質として欠かせぬ一つの条件だ。

(略)

芸術家が虚構を通じて現実世界に提案することは政治的煽動とも社会運動とも違う。社会現象と自分の創造性を混同した作品や、影響力を試す装置のような作品は多いが、作品の虚構性とは作家の調合した良質の美しい毒であるべきで、細菌のような伝染力をさすのではない。

その量を加減する腕も必要とされる。
自分の仕掛けた虚構がやがて薄味の悪戯のように軽やかに伝染してゆく快感には警戒が必要だ。

現実と虚構の区別がつかぬことを当然の前提とする感覚の中でいたずらな遊びはすぐに伝染し、その伝染力は、一人の人間が不器用に引きずってきた人生の「質」を呆気なく無化する恐さを持つ。

裏に適切な個人の現実の隠れている虚構を静かに味わいたいものだ。