『せたがやスタ研ニュース』12号【講演】

講演

 シニアアドバイザー・金尾敏郎氏講演

 スタンプ事業低迷の原因とその打開策


■「おまけ」のスタンプで固定客化できた時代は終った

1・スタンプの役割変化の認識を
 同じ物がどこで買っても同じ価格の時代にはスタンプで差別化できた。しかし、平成4年を境に価格破壊が起こり、各業界で定価販売が崩れて、「おまけ」としてのスタンプによる差別化が困難になった。
 その結果、多くのスタンプ会が低迷しており、今後は「おまけ」の発想から、安売りに匹敵する価値をスタンプに持たせるという考え方が、より一層重要になる。したがって、カード化する場合も、これらを認識したうえで取り組まなければ効果があらわれにくいということだ。

2・元がとれる仕組みを
 スタンプ出し惜しみの原因は、出せば経費が増えるのは確実だが、売り上げが上がる保証がないという考え方が支配的だからだ。今の時期にシステムや活用法を見直して、出した経費の元がとれる仕組みにすべきだろう。

3・スタンプを無理やり出させる発想は捨てよう
 スタンプを出さない店に「出してく
ださい」と役員が頼むから、「出してやる」という感覚になる。そんな気持ちで出しているうちは、スタンプ効果はない。また、いろんな策を講じて無理やり出させようとするのも間違い。加盟店が納得するにはスタンプ効果を感じさせるしかない。

4・加盟店がスタンプ効果を感じない理由
(1)台紙の店頭回収が少ない 「スタンプをくれるから買い物」というのが本来のスタンプ効果で、「台紙を回収すれば、出した経費の元がとれる」というのは錯覚だが、そうは思っていない加盟店が多い。
(2)各種のイベントに参加する目的でスタンプをためているお客も、いちいち買い物の際にその事を言わない人が多いので、加盟店がイベントの効果を感じにくい。
(3)スタンプに期待して来たお客でも「くれるから来た」などと言う人は少ないので加盟店がスタンプ効果を実感できない。
 などの理由で加盟店は、「お客さんはスタンプを集めているのだろうか」という疑心暗鬼に陥る。こういう店は、台紙の店頭回収によってスタンプ効果を感じるものだ。しかし、それぞれが回収のための努力をしないと、お客はその店で台紙を使ってくれない。

■台紙の店頭回収促進で加盟店の意識改革

 加盟店が積極的にスタンプを活用するようになるには、その前に、誘い水的な仕掛けを会が作ることが大切。

1・スタンプの流れづくりを
 数年前から、スタンプをたくさん出すイベントを実施した直後に台紙の店頭回収が増える傾向がある。そこで、スタンプを多く出すイベントと有利に使えるイベントをセットで実施し、その流れをわかりやすく広告表現する。
(1)倍々セール(2倍以上出す)でスタンプを集めてもらう。
(2)台紙で買い物をすると常時2倍スタンプ進呈。
(3)さらにWチャンス。台紙(カード)を買い物に使ったお客の中から毎月抽選で商品券等を進呈(これによって台紙の記名率も上がり顧客管理につながる)。
(4)台紙がたまり次第利用できる「常時交換」とスポットの招待企画。

 図で見る【スタンプ事業低迷の原因と打開策】

2・台紙で買い物のお客に全店常時2倍サービスを
 これは一石四鳥の効果がある。
(1)現金客と台紙で買うお客の差別化ができる。
(2)少ない経費と労力でスタンプの価値を高めることができる。
(3)台紙の店頭回収促進で加盟店のスタンプ発行意欲が高まる。
(4)皆で、常時実施すれば台紙で買うお客を優遇する習慣がつく。

 月に1000冊店頭回収のある会なら1倍分を捕填しても1万円の経費(1枚2円で満貼500円の場合)。
 しかも、現金ではなくスタンプで補填するため全額負担にならない。つまり、会が加盟店に補填したスタンプがお客の手にわたり、台紙一杯になって会にかえってきて初めて、回収した分だけの現金が会から出ことになる。
 これを年中やることによって、「現金よりスタンプのほうが価値がある」というイメージ付けができ、これが、安売り対策につながる。さらに、加盟店全体に台紙で買うお客を大切にする雰囲気ができる。
 私の地元の直方スタンプ事業協組で、消費税率が上がった昨年4月に22日間、「台紙でお買物スタンプ10倍」というのをやったら、その間に2万4000冊の店頭回収があった。消費税率が上がって、本来ならば買い控えの起こるときだったが、お客は喜んで台紙を使い、店も売り上げ増で喜んだ。しかし、組合としては1200万円の現金が出て真っ青。
 私は理事長から「あんたがそそのかすもんだから、若い者が調子にのってえらい目におうた」と愚痴をこぼされた。これは初めての企画だったので期間設定を誤ったが、その後も、年に2〜3回、5日間ぐらいの設定で実施している。最初から10倍でやると規模を縮小しにくいので、「台紙でお買物スタンプ5倍」を勧めたい。
 5倍で実施した場合、台紙1冊につき40円分の経費増(スタンプ)で済むが、台紙を700円で使えるというイベントだと、台紙1冊につき200円の経費(現金)が必要になる。

■まとめ

1・目的を明確にした個店活用を
 スタンプの個店活用法には、倍セールとプレミアム回収があるが、スタンプの活用目的は、(1)売り上げが落ちる時期(時間帯)の売り上げ確保、(2)売れる時期の売り上げをさらに伸ばす、(3)利益率を上げる、(4)客単価を上げる、(5)新規客獲得、(6)値引き損を減らす、などいろいろある。
 そのため、単に売り上げ増を目指して倍セールをするというのではなく、今回は、どの目的のためにスタンプをどう使うという、目的を明確にしたきめ細かいスタンプ活用をするべきだ。
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 景気が悪くて売れない。だから安くする。しかし、安くすれば数量を多く売らないと利益が確保できない。ところが、安くてもまとめ買いはしない時代だ。だから、大型店はよそのお客を取らないと成り立たない。しかし、一般の商店は、よその地区へ出店するのは難しい。ではどうするか。できるだけ安売りをしないで利益を確保するしかない。それを個店独自でやるのは限界がある。だから、皆でスタンプを活用する。
 スタンプは自分の店のために出すものだということが納得できて、その効果が手ごたえとして感じられれば出し惜しみなどはないはずだ。スタンプの発行が、加盟店の販売実績を大幅に下回る状態というのは、そのシステムに改善すべき点があるか、加盟店へのスタンプ有効活用法の徹底ができていないかである。

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