『せたがやスタ研ニュース』30号【講演】

 講演

 相模原市・大野台商店会・前会長・福田浩氏

 スタンプを惜しむな、気を遣え身体を遣え


 スタ研では、10月23日に、神奈川県相模原市・大野台商店会の福田浩前会長を招いて講演会を開催した。この日は、区商連青年部と共催したこともあり、55名と多数の方々が参加した。
 同商店街は、立地条件には恵まれず、商店も点在、スタンプ加盟店は10店と少ないなどいくつかのハンディを持ちながらも、年間を通して個店の創意を生かすイベントを促進、年間約300万円のスタンプを発行、小規模ながらも参考にすべき点が多々ある。
 福田氏の講演内容は、スタンプの技術的な話だけでなく、経営論から夫婦円満の秘訣まで多彩な話題と迫力ある話ぶりに多くの参加者が引きずり込まれた。


 私は昭和60年までサラリーマンとして東京に勤めていたが、どうしても事業がやりたくて会社を辞め、61年に商店街に入ってすぐ副会長になり、62年に会長を受けてから今年1月まで15年間会長をやっていた。
 相模原市には商店街が74あるが、大野台商店会は人員規模では43番目。うちの商店会を知る人は誰もおらず、商工会議所からも認知されていないほどだったが、会長を受けたからには何か日本一にしてみせるという意気込みで一生懸命頑張った。
 商店街はJR横浜線古淵駅まで2・5キロ。大変のどかなまちだったが、日本一のディスカウントストアの激戦地区の国道16号線に近く、大型店のジャスコとイトーヨーカドーも3万平米の規模で出店して現在年商300億円でやっている。
 私共は33店舗で約 15億円という小さな商店街だ。何もやっていなかったならば、たぶん今は売り上げは半分以下に落ちていただろう。

■スタンプを出し間違えるなら、余分に間違えよう

 スタンプは、ジャスコがオープンする1年前の平成4年4月に立ち上げた。スタンプについては何もわからず、ただ一生懸命やってきた。振り返って見ると、この時立ち上げたスタンプは、今主流になっている俗に言う烏山方式と同じだった。
 スタンプを出す立場ではなく、もらう立場になって考えること。自分がもしスタンプ会の仲間の店で買い物をして、スタンプをもらえなかったら、忘れたふりをしているなんて顔も見たくない、となるだろう。仲間同士でさえそうなるんだから、お客さんならなおさら。 私は時々、間違えてスタンプを余計に出してしまう。間違えるなら余分に出すこと。これが将来の販促につながる。それを、出さなければ得をしたと思うような考えを持っているから売り上げが落ちてしまう。
 99%スタンプを出して来ても、たった1%出さなかっただけで売り上げは10%減る。私は、徳島ナンバーの車で来たお客さんにもスタンプを出す。二度と来ない人かもしれないが、来るか来ないか自分で判断してはダメ。初めての人には必ず出して懇切丁寧に説明する。これが新規開拓。お客さんが「もう来ないから要らない」と言っても、要らなければ捨ててください、といってもらってもらう。
 タバコにスタンプを出そうと言っているが、タバコは10%しか利益がないからイヤだと言う。でも売れてはじめて10%、売れなければゼロ。
 この品物は原価を割っているからスタンプは出せないという店がある。ダメな条件、悪い条件は皆知っている。問題があれば絶対に解決してやるという姿勢が大事だ。

■スタンプを出し間違えるなら、余分に間違えよう

 私共のスタンプ会の年間売り上げは約300万円。このうち3割、90万円はイベント費用として先取りしてしまう。商店会から30万円、模擬店などでの儲けや私の講演謝礼なども入れて、イベント費用は合計年間200万円になる。
 イベントは、どうしたらスタンプをいっぱい発券できるかを考えて企画を立てている。
 そして、翌1年間の予定を前の年に全部立てて年間スケジュール表を作り、12月26日には新聞に折り込んで近隣のお客さんの手元には届ける。これを年間通じて店頭に貼っており、お客さんはこれを見ながら買い物してくれる。
auGOGOまいちゃん」(会のイベント・年間12 回)
 谷中商店街の「スタンプゴー」から取ったイベント(スタンプ台紙による抽選会)。毎月第一土曜日午後6時から、駐車場で実施(先着50名)。台紙1冊で抽選。出た玉の色で、1等5000円、2等3000円と出た金額分のシールを台紙に貼る。有効期限は翌月の月末(約2カ月間)。期間中に使い切らないともとの500円に戻る。持ち出し経費は年間約80万円。
 (このイベントを見学してきた岩切氏注・現会長がハンドマイクを持って、一番最初のお客様に「○○さんの奥さん今日は一番乗りですね」と声をかけている。ここの商店会はお客様の名前を一人一人覚えている。そして、「赤い玉は5000円だから赤が出るといいね」と実況中継をしている。そうしたら本当に赤い玉が出た。お客様にとっては、名前を呼ばれること、出た玉の色も言ってもらえるので確認できる。おずおずと参加している男性客には、「○○さんのご主人、今日は奥さんの代わりですか」と言いながらやっていくうちに次第に気分が盛り上がっていく。商圏人口1万人規模のまちなら真似ができる。)
auハッピーまいちゃん」(個店イベント・各店1回×10店=年間10回)
 店で買い物をしたら、くじを引いて、出た倍数(2〜5倍)のスタンプを貰える。私は加盟店に、たった1日なんだから全部5倍入れようと言っている。
auありがとうまいちゃん」(個店イベント・年間約20回)
 例えば、美容院では1月10日にスタンプを1冊持って来ると1500円で使える。お客さんが320枚貼った台紙を店に渡すと季節の花と満貼り台紙をもらえる(花代はスタンプ会負担)。(岩切注・同じ枚数のやりとりに見えるが、発券することによって差額が会に入って運営費となる。)
cn〜イまいちゃん(個店イベント・各店2回×10店=年間20回)
 個店独自の抽選会。スタンプ1冊持参で1000円以上の買い物をするとスタンプ2倍、プラスガラポンに挑戦できる。3回まわして出た玉がすべて同色ならスタンプ600点、同じ色が2つならスタンプ500点、全部違う色なら400点。1回のイベントに対してスタンプ会から4000円補助。
auお買い物まいちゃん」(個店イベント・各店2〜3回=年間約 25回)
 台紙1冊でお得な商品との交換。差額は個店負担。私の店は包装材料を扱っているので、業務用のラップ1500円のものを先着15名に台紙1冊と交換する。朝の7時半からというのにお客さんは6時から並んでいる。15名以上になると、並んだお客さんが、ダメよと言ってくれるので整理はいらない。
 (岩切氏注・年間約70回のイベント自体は難しいものではなく、準備もそれほど要らない。ガラポンは1日1店なので商店街に1台あれば使い回しがきく。大変効率がいい。
 イベントが1年前にはっきり決まっているということで告知力が大変強く、行きたいという気持ちにさせるうまい効果的な仕組みだ。)

■売れる店になるには秘訣がある

 商店会関係での集まりは1年に400回くらいあったが、私にとって健康上200回くらいがちょうどいい。
 商店会の仕事を頼むには、その商店会で一番忙しい人に頼むのがいい。暇そうな人に頼んだら1年たってもできない。やらないから暇なんだ。忙しい人は忙しさが生活レベルになっているからできる。そのことが地域のお客さんに認知される。
 次に、一生懸命仕事ができるのは奥さんのおかげだから、奥さんと仲良くする。そして、奥さんを1日1回褒める。夫婦・家族の笑いが絶えない家庭をつくっている店には必ず客が来る。売れていない店は夫婦仲が悪い。奥さんを褒めて褒めて、褒め抜けば、奥さんのご主人に対するパワーがすごくなる。男を良くするのも悪くするのも女性のパワー次第。
 葬式は自分の顔を売る機会だと思おう。私は会長になって15年間で250回葬式に出た。香典は5000円包むが、香典を人に頼んでしまうと捨て金になる。夏の暑い時に自分が喪服を来て汗を書きながらお焼香するから、その5000円が投資として生きる。私はサラリーマンだったから地域を知らなかったが、葬式の席でいろいろな人に出会い、お客さんになっていただいた。香典5000円で200人くらいに会える、こんなに安いものはない。

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