『せたがやスタ研ニュース』31号【特集】

 特集

 スタンプ活用店徹底研究立川市羽衣振組「狭山園」

 お客さんとの親しい関係づくりやスタンプ活用で
 小さな店が大きな実績 7坪強、3人で年商8000万

店は井戸端に
毎日4、5人、週2、3回来る人を含めると、 10人近くの常連が狭山園に遊びに来る。中には、お菓子や漬け物を持参、2、3時間過ごす人も。
ここでは60、70は「若い者」。70代、80代が何人もいる。ゆっくり話せるよう、7坪強の店に椅子が6人分用意されている。

 2月21日の「スタ研」は、立川市羽衣商店街のお茶屋、狭山園の池谷健治、和子さんご夫婦に「どのようにお客さんとのいい関係をつくり、商品をアピール・販売しているのか? そのためにスタンプをどう役立てているか?」を中心に、たっぷり話してもらう趣向。
 スタ研では、00年の7月にも健治さんから講演していただいたが、狭山園では、その後も環境や福祉への新たな取り組み、そしてスタンプのよりいっそうの活用などで、消費低迷の影響を最小限に抑えている。それらの取り組みが多方面から評価され、今年は農林水産省や東京都から表彰されることになった。そこで、再び、狭山園の特集をする。


夫はデザイン(POPやパネル絵、茶のパッケージなど)や情報紙「いっぷく」、8の会などのチラシ制作、イベント企画、振組の広報事業など、妻はお客さんとの会話・電話や手紙・HPなどによるコミュニケーション、商店街や市商連のおかみさん会、環境活動など、と機能分担がうまくいっている。この数年は、和子さんのやる気が急上昇。(右端はパートの西山京子さん)

■狭山園ってどんな店?

商店街は点在型 店は7坪強、年商は8000万円
 
狭山園のある羽衣商店街は繁華街ではない。商店の多く(約85店)は点在しており、人通りもそれほど多くはない。ただ、隣りに西友のある同店は比較的恵まれた立地にある。多くの商店街同様、廃業する店も年々増えている。昨年は長年頑張ってきたとんかつ屋さん(積極的なスタンプ加盟店でもあった)が、ご主人の体調の問題で廃業、この4月には、スタンプ発行額ナンバー2の八百屋さんが、やはりご主人の体調の問題で廃業する。
 それでも、元気に頑張っている店はある。狭山園もそんな店の1つである。店は7坪強、スタッフは経営者夫婦とパート1人の3人だけ。大半が店売り。それで、年商約8000万円前後を維持している秘密はどこにあるのか?

kキ山園の概要
経営者 池谷健治氏(2代目)
年商 約8000万円
場所 JR南武線西国立駅近く、羽衣商店街内西友西国立店隣り
扱い商品 お茶が売り上げの90%、海苔5%、その他5%
店舗面積 7坪強
定休日 毎月第1〜3木曜日
営業時間 午前9時〜午後8時
スタッフ 池谷夫婦(共に48歳)、パート女性(週5日、1日3時間)の3人
スタンプ年間発行額 約270万円(加盟店全体では約1800万円)

kキ山園の歴史
1952年(昭和27年) 池谷健治氏の父親が現在の自宅に創業
1953年 健治氏誕生
1965年 2つの商店会が一本化、羽衣商店街振興組合設立
1975年 健治氏大学卒業─金子園で1年半ほど修業
1976年 現在地に支店開設と共に健治氏、金子園退職、支店責任者となる
1979年 健治氏、和子さんと結婚。和子さんはすぐ店に
1980年 父親の死去で健治氏、経営者に
1994年 健治氏らが中心となり、10月に商店街有志で「ハローチップ倶楽部」を組織、スタンプ事業(愛称、ハローチップ)を開始
1996年 狭山園初の独自ブランド茶「秋ごころ(減農薬)」(静岡の農家と契約、有機栽培のお茶)を扱う
1997年 本店を閉鎖(母親に任せていたが、高齢化で畳む)
1998年 sニ自ブランド茶第2弾「陽和(ひより、無農薬)」発売
q蜿タさんというアマチュア陶芸家の作品の展示・委託販売(接客用の茶碗や花器も)、青木さんという、山形の農家の手作りの漬け物を扱うようになる。大沼さんは和子さんの知り合い、青木さんは、お得意さんの親類
1999年 健治氏、振組副理事長就任(その前、約10年は事業部長、その前約10年は青年部)
2000年 bT月 店内に生ごみ処理機を設置、自店及びお客から集めた茶殻をたい肥素材にして希望者に進呈
2001年 wァ川商連が始めたHP「あねっくす立川」に自店HP掲載
bU月 和子さん、立川商連女性部の初代部長に
10月 ハローチップ会として、使用済み切手10枚をスタンプ1枚と交換するようになる(集めた切手は福祉施設に寄付)
2002年 bP月 農林水産省と日経新聞主催の「食品流通機構2001年優良店コンテスト」で農林水産局長賞受賞(東京では3店)。
bR月 「環境への負荷の少ない暮らしの普及に取り組み、顕著な功績を挙げた」(茶殻の回収とたい肥素材の製造─提供など)ことで、東京都生活文化局長賞受賞
 

■お客との強い信頼関係

7坪強の店に椅子が6人分
 POPやプライスカード、季節ごとに健治さんが随時描き変えるパネル絵、ボリューム感溢れる商品陳列。そしてゆっくり世間話を楽しむお客用に置かれている3脚の椅子(話し込むお客さんが増えた時には店の隅に置いてある3人掛けの長椅子を出す)。
 この店内の様子を見るだけで、同店の特徴がわかるだろう。お客さんとの親しい関係づくりと情報発信に力を入れていることである。
 そしてその結果が出ている。毎日のようにお茶を飲みに来る常連が 人前後いて、後から来たお客さんも加わり、茶飲み話に花が咲くことが珍しくない。それも70代、80代の高齢者が多い。ちょっとしたデイケアセンターである。

手渡し情報紙やDMをひんぱんに
 お客さんにひんぱんに情報を提供していることも同店の大きな特徴だ。
 店内のPOPやプライスカードのほか、「いっぷく」という手作りの来店客用情報紙を毎月2回程度発行している。通常はA5判で1色、500枚程度で、来店客へ手渡し。内容は、同店及びスタンプ関係の売り出し情報も入れるが、お茶や海苔など商品の豆知識的な情報など、茶飲み話のネタになるような話題も毎回入れる。
 イラストも入れ、読みやすいものにしている。原稿書きからパソコンによる版下づくり、軽印刷機による印刷まで全て健治さんの手作り。
 このほか、はがきDM(2000通)が年6回程度、「いっぷく」の拡大判の新聞折り込み(1万5000枚)が新茶と蔵出し茶の時期に各1回。新茶、蔵出し茶、年末の贈答シーズンには、印刷物のほか、お得意さんに手書きの手紙を出すのは和子さんの仕事だ。
 昨年からは、立川商連のHPの中で同店のページを掲載しているほか、同HPのニュース欄に毎日のように情報を流している。売り出しだけでなく、お客さんとの会話で拾った地域の話題なども盛り込むので、ネタは十分ある。

「いっぷく」
毎月2回は発行する来店者向けの手渡し情報紙。原稿書き、レイアウト、印刷まで健治さん。A5判と小ぶりだが、店とお客をつなぐ大きな媒体となっている。

口コミ攻勢、そして来店促進の仕掛けも
 しかし、最も強力な告知媒体は狭山園の3人のスタッフ、特におかみさんの和子さんからの口コミである。商売だけでなく、健康から旅行、教育、オリンピックなど話題は無尽蔵。その中で、「今度の土曜はサービスデーだから来てよね」といったイベントや店の売り出しなどの話も自然に出てくる。
 また、自店から出た買い物券当選者には必ず、「おめでとう 当たったよ」と電話をして来てもらう(ハローチップ倶楽部では、年に数回、加盟店に抽選券・ラリー用紙などをお客が預け、当選者には預かった店から電話で連絡してもらう企画がある)。そういう場合、狭山園では必ずスタンプの2倍サービスをする。その日が2倍の日なら3倍にする。
 新茶や蔵出し、年末などには、店独自で10 枚サービス券や3倍券などを配っている(手渡しやDMで)。

オリジナル商品
 静岡の茶農家と契約した有機栽培のお茶2種類を同店のオリジナルブランドとしたり、親しくなったお客さんの手作り陶芸品を受託販売したり、山形の農家でつくった無農薬の漬け物なども扱う。
 同店がお客さんから集めた茶殻を乾燥させた素材を使って「エコドール」をつくる人も出てきたので、それも置いている。
 
マスコミ掲載も増加
 それらの動きは行政や商工会議所、商連などを通して新聞などマスコミ掲載につながっていく。この1年、地元紙、全国紙多摩版はもとより、全国版にも写真入りで掲載された。

■スタンプ活用

延べ年間300日近く何らかのイベント
 定番企画は、毎月3回の「8の市」2倍セール、毎月第4土曜日の商店街サービスデー、そして毎月第2日曜日の和菓子店とのタイアップセールを合わせ60日。
 このほか、ハローチップ倶楽部のラリーや抽選会、環境キャンペーンその他を含めると延べ300日近くになる。
 その多くが団体の企画で、宣伝・集客に相乗効果を発揮しやすい。
 そして、グループの売り出しには同店でサービスをプラスアルファーすることが多い。その多くがスタンプとの連動だ。

10ポイントラリー台紙 
このラリーは毎年2月と8月に実施。スタンプ2倍セールの変型だが、遊びごころと購買意欲刺激も狙いの1つ


 
販促はスタンプ中心、値引や他の経費抑える
 それだけやっても、狭山園のスタンプ負担率は3%〜4%の間。宣伝も手作り、手渡しのものが多いので、コストはそれほど多くかかっているわけではない。
 そして、販売促進はスタンプを中心にし、値引きは極力抑えているので、利益率も悪くない。

cCベント時の台紙や買い物券の回収
   

回収枚数

回収枚数

   
イベントタイトル 期間

狭山園

全体

狭山園
回収率

回収の内容
お年玉台紙抽選会 2001.1.14

118

658

18%

賞品の買い物券枚数(500円と700円が混在)
10ポイントラリー 2001.2.7〜19       ラリー台紙枚数。参加15店
ほっぴき台紙抽選会 2001.2.25

15

80

19%

賞品の500円買い物券枚数
800円台紙交換 2001.3.25

82

339

24%

スタンプ台紙枚数
GO(5)倍セール 2001.6.4〜10

551

1,708

32%

スタンプ台紙枚数
たなぼた台紙抽選会 2001.7.7

158

699

23%

賞品の買い物券枚数(500円と700円が混在)
中元大売り出し 2001.7.2〜10

143

773

18%

ラリー台紙3店目でスタンプ30枚進呈
3店ラリー台紙で抽選 2001.7.12〜31

60

500

12%

賞品の500円買い物券
10ポイントラリー 2001.8.1〜10

237

1,527

16%

ラリー台紙枚数(参加全店)
七五三台紙抽選会 2001.11.11

239

1,254

19%

賞品の買い物券枚数(500円と700円が混在)
歳末大売り出し 2001.12.1〜12

212

1,078

20%

ラリー台紙
3店ラリー台紙で抽選 2001.12.12〜31

174

500

35%

賞品の500円の買い物券
20%パワーアップセール 2001.12.22〜24

410

1,415

29%

スタンプ台紙枚数
お年玉台紙抽選会 2002.1

138

709

19%

賞品の買い物券

bcM回収
         

2001年の

 
イベントタイトル 期間

2001年

2000年

前年比

DM数

回収率

新茶予約セール・封筒(封筒持参で10枚進呈) 2001.3.25〜4.24

297

167

178%

2,001

15%

新茶市・はがき(はがき持参で10枚進呈) 2001.5.5〜6

341

 367

 93%

2,000

17%

中元3倍はがき(はがき持参で3倍) 2001.6.25〜8.15

374

355

105%

2,001

19%

蔵出予約セール・封筒(封筒持参で10枚進呈) 2001.9.1

54

37

146%

260

21%

蔵出市・はがき(はがき持参で10枚進呈) 2001.10.5〜6

320

295

108%

2,000

16%

年賀3倍はがき(はがき持参で3倍) 2001.11.20〜12.31

481

439

110%

2,000

24%

ng用済み切手の回収(切手10枚でハローチップ1枚と交換)
 

回収枚数

回収枚数

 
 

狭山園

全体

狭山園回収率

2001.10

11,585

15,355

75%

2001.11

2,565

16,990

15%

2001.12

0

70

0%

2002.1

2,380

2,380

100%


 注)10月のみ、都の「環境にやさしいキャンペーン」参加で切手5枚でハローチップ1枚進呈

cXタンプの概要
開始 1994年10月
愛称 ハローチップ倶楽部
加盟店負担 1枚2円(5000枚1万円単位で購入)
進呈単位 100円
満貼台紙 スタンプ340枚
台紙利用方法 (1)加盟店で1枚500円の金券として利用(2)金融機関で1枚500円の預金(3)イベント参加
有効期間 無期限
参加店 38店
スタンプ購入先 事務局(連絡すると店まで持参してくれる)
換金先 回収した台紙は事務局に渡した翌日に金融機関から振り込み
事務局 ハローチップ会として事務所を借り、週3日勤務(月水金の午前10時〜午後3時)のパート職員1名を雇用

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