レビュー

ついに、うしろゆびさされ組の完全収録ボックスが登場した。「Myこれ」が手頃な復刻シリーズだとすれば、この「大百科」はすべてが豪華仕様の決定版といえるだろう。

まず、パッケージやブックレットが上質な出来上がりとなっている。ブックレットは目次から歌詞カードの部分まで、デザインや文字が丁寧に作り込んであり、読み応えのあるレビューが８編も盛り込まれている点が嬉しいポイントだ。また、巻末の作詞・作曲家の索引がデータベースとしての意味をもっていることや、歌詞の切れ目ごとに「／」が入れられるなど、単なる既存のリソースの切り貼りでなく、かなり手が加えられたものであることが分かる。

肝心の音楽部分に関しては、DSDマスタリング技術によって、相当な音質の改善がはかられている。この変化は一言で言えば、「うしろゆびが完全にデジタル化された」といえるのではないか。オリジナルCDや「Myこれ」と聴き比べてみると、オリジナル版は良くも悪くも「アナログで」あり、「Myこれ」はそれに比べて全体的にメリハリがある。しかし「大百科」ではさらにひとつひとつの音の輪郭がくっきりとしている。

今回の音質改善によって、音の印象は今までのアナログなおニャン子ソングに慣れていた耳には、非常にタイトなサウンドに感じられる。とくにドラムやシンセの響きが鮮明で、全体としてボーカルもはっきりした。 「うしろゆびさされ組」「SE･KI･LA･LA」「◎OR×」などを聴くとそれがよくわかる。オリジナル版の「レコードっぽさ」と比べたときに好みはあるかもしれないが、その意味で「結局同じか」という失望感は押さえられるだろう。

ちなみに、同時発売の「高井麻巳子」「ゆうゆ」には、おニャン子クラブ中のコラボ曲が収録されていて、これらがリマスタリングによりけっこう楽しめる。たとえば「秋を待ち伏せ」「アンブレラ･エンジェル」「星のバレリーナ」「ウインクで殺して」などが音質改善により爽快に聴ける。また、全曲を通してオリジナルにプチノイズが入っている箇所ではリマスタリング時に最新技術でそれを除去しているそうだ。

その他、全体的には「大百科」であることを強く意識して、曲順はあいうえお順となり、シングルバージョン、メッセージなどをボーナストラックとして追加、「うしろゆびのあゆみ」がおまけとしてついている。（うしろゆびのゆうゆソロ「お呼びじゃないの」「DanDan赤ずきん」は、ゆうゆの大百科に収録している。）また、DVDには「マジカルうしろゆびツアー」を初収録。メニュー画面が凝っているなど、随所に仕事の細かさが感じられるボックスとなっている。【T.Ishida】