おニャン子の曲多しといえども、筆者はこれほどファンタジックな曲を他に知らない。前作「アマリリス」で曲調をそれまでの甘えっ子路線から転換した美奈代が、そのスイートな声質をまた違う方向性において発揮している秀作である。星降る夜に屋根の上で天使が集うという、その場面はまさに良質の童話か絵本の世界そのものである。 そして水色の招待状が届いた少年が夜はしごを登ると、そこに妖精の美奈代が待っていてくれる。子供時代にだれもが持っていた秘密の隠れ家。子供向け小説の冒険。いつのまにか自分の中で小さくなっていた、そんな世界につれて帰ってくれる曲である。
これから何かが起こりそうな、そんな緊張感のあるイントロから、すぐに淡々としかし人なつっこいような美奈代のボーカルが、とてもふわりとした気分にさせてくれる、これはもう雰囲気としか言いようがない。美奈代のディスコグラフィーにおいて、現実の恋愛を描いた曲がほとんどを占める中で、完全にイメージの世界を表現したこの曲は、「夜明けのヒッチハイク」とともに異色作といえるだろう。
しかし、他のおニャン子の誰がこの歌を歌えるかと言えば、それは非常に難しいと言わざるを得ない。その意味では、美奈代の持ち味を十二分に生かしたオリジナリティの光る一枚だ。【T.Ishida】