H8年2月 兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所の坊岡正之氏をぱせりの会にお迎えしました。坊岡氏は、ハンディを持つ人たちの声を聞き、その声を生かした研究をし、新しい製品の開発のために力を注いでいらっしゃいます。「ユーザーの声がなくては何もわからないし、開発されてもいかないんですよ。ちょっと工夫すれば、自立を支える物は大金なんかかけなくってもできる物ってあるんです。」と、言っておられました。
そして、この時私たちにも「今、困っていることは何ですか。」と、聞かれました。そこで、仲間の一人がこんな研究を依頼しました。
(脳性マヒによる言語障害の音声を電気的に変調し、電話相手の不快感を和らげる補助装置)
脳性マヒによる言語障害のある私は、電話が恐くて今だに上手く話せません。私の声を聞くと、電話を切る方もいるほどです。私の言語障害の音声が聞き取れにくいからだと、自分自身納得しているつもりですが、やはり、そんな時は寂しさを覚えてしまいます。それと共に、話し相手に言葉が通じるどころか、不快感をも相手に与えているのかと、自分の肉声が腹立たしくなってしまいます。
脳性マヒによる言語障害の肉声は、言語障害のない人の音声が、間延びしたものに近いようなものだと思います。私の場合は、自分の意志で発生した音声を聴き取っています。小学時代のことですが、テープに録音した自分の声を初めて耳にした私は、たいへん大きな衝撃を受けました。その時のことが、今だに尾を引いているありさまです。
言語障害のない人の録音された音声を、テープ回転を普通より遅くして聴いてみると、私の肉声に近いものに思えました。ふとその時私は、その逆も可能ではないかとヒラメキました。(これは応用出来るかもしれない。)
現在、公衆電話に付いている音声のボリューム調節スウィッチのように、ボタンを押すと音声変調装置が働き、電話相手に不快感を与えないで、会話をすることが出来ないものかと思いまして、ご相談させて頂きました。研究開発のこと、どうかよろしくお願いします。
ぱせりの会一同、彼の依頼に大きくうなずきました。
以上、住岡さんの真剣な思いを伝えましたところ、さっそく坊岡氏から「友人の大学教授に話してみたところ、その教授も共に取り組んでくれそうだ。」とのお返事を頂きました。製品開発のために、依頼者の声(朗読・雑談中の声)が必要だということでしたので、カセットテープに録音して送りました。
現在、私たちは、研究開発の結果、この夢が叶うような製品が出来ることを、大きな期待を持って待っているところです。