桜梅桃李


西岡愛

私の友だちの小溝智子さんの詩を紹介させていただきます。何年か越しにゆっくり熟成させて出来た詩だそうです。智ちゃんの優しいこころが見える素直な詩です。

SEED(種)  小溝智子

人は生きて、人に接することで
手のひらいっぱい種をもらう。
でも、もらいに行かない人もいる。
また、手をさしだすのが怖かったり、
恥ずかしかったりして、
側に行っても結局もらわない人もいる。
ラッキーにもらっても、
自分の手が小さくて多くをとりこばしたり、
強い指摘の形でもらった種は
捨てたくなることもある。
心の大地に種をまいても、
その土地がやせていて、
すぐには芽が出なかったり、
花の咲かないこともある。
しかし、いつの日か、
そう今日のように
空も風も桜色だったりする日には、
心の大地につやつやと頬を染めて咲いている
一輪の花を人は見つけるだろう。
そして、それは、昔なつかしいあの方から
もらった種の花だと気がつく。
その人の言葉、その人の優しさ、
その人の生き方、
その人の音楽、その人の料理……
人と人とが出逢うとき
知らず知らずにもらった種、
その人から吹いてくる風に乗ってやってくる
種もあるんだと、
そのなつかしい花を見て気がつく日が来る。
今はもう、最奇りの駅から
一万光年は離れてしまった人々。
あなたからもらったこの花盛りの森より
感謝の気持ちをこめてこの言葉をつづろう。
「ありがとう。そして、これからもよろしく」と。


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