随想  車椅子

田 中 恭 彦


電 話

僕は話をするのが苦手です。特に電話がそうです。親しい人には、自分から電話をすることもありますが、面識のない人にはめったにかけません。話す相手が目の前にいて、ゆっくり話せば伝わることでも、電話は相手の顔が見えないから、声だけで判るように話さなければいけないと思うと、もう、それだけで緊張してしまって声が出なくなります。そうすると、なにも話さないうちに切られたり、酔っぱらいのいたずらとまちがわれます。そうなるともう、電話をするのが嫌になります。

よく障害を克服するとか、障害を乗り越えるとか言うけれど、ぼくはそんなにがんばらなくていいと思う。僕はそんなに強くないし、無理してまで、人並になることもないと思う。できないことは人に頼んでと思う。自分のことは自分でする。それが自立をすることですよね。そうすると、僕は自立できないことになります。ただ、僕は介助をしてくれる人がいれば、自分のことは自分でできます。そういうかたちの自立があってもいいと思うのですが。


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