◆ 高分子のIR/セルロースとアミロース ◆
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参考振動モデルの元データ計算:吉田弘ほか(計算方法…密度汎関数法のB3LYP/6-311+G**)‖ Chimeデータへの変換・HTML作成:本間善夫
※波数の実測値は,以下の文献による。
・T. Shimanouchi, ‘Tables of Molecular Vibrational Frequencies’, Natl. Stand. Ref. Data Ser., National Bureau of Stan-dards, Garthersburg, Vol. I (1972).
※振動モデル欄の数字は 波数/cm-1。Electrostatic PotentialおよびLipophilic PotentialのボタンはアニメーションをOFFにしてから押してください。
※IRスペクトルデータは1984-85年の測定。
●アミロースとセルロース【天然高分子】 …本間・川端,「動く分子事典」,p.230(コラム16)
多糖の代表例であるアミロース(amylose)とセルロース(cellulose)は,どちらも構造式を -[(C6H10O4)-O]n- と書くことができる。
デンプンの成分であるアミロースは,α-D-グルコースがお互いの炭素1についているヒドロキシル基と炭素4についているヒドロキシル基の間から水分子が取れ,1,4'-α-グリコシド結合ができて長く結合したもので,らせん状高分子になる傾向を持つ。アミロースの鎖に,さらに炭素6のヒドロキシル基と別なアミロース鎖の炭素1のヒドロキシル基から水が取れて結合した枝分かれ構造を持つものをアミロペクチン(amylopectin)という。その枝分かれの部分の結合は,1,6'-α-グリコシド結合であり,鎖が長くなり,枝分かれが多いと水に不溶となる。アミロースは分解酵素β-アミラーゼによりほとんど完全にマルトースに加水分解される。また,繊維状・フィルム上になり易く食品包装材料に用いられているほか,生分解性プラスチックにデンプンを混ぜて生分解性を高める試みもある。
セルロースは繊維素ともいい,植物体の細胞膜の構成要素で天然に最も多量に存在する高分子であり,草木のからだを支持している分子といってよい。β-D-グルコースが,1,4'-β-グリコシド結合でつながった高分子で,直鎖状で隣接分子と水素結合によって結晶構造を形成できるのが強さの原因である。希硫酸または希塩酸と長時間煮沸すると,加水分解されてグルコースになる。人間が食品として摂取した場合,体内では消化されないが食物繊維として補助的な役割を示す。また近年,酢酸菌などの微生物がつくる純度と結晶化度の高いセルロースが,微生物セルロース(バクテリアセルロース)としてオーディオスピーカーの振動板や食品・化粧品・医薬品への利用が進められている。
参考文献・Webページ
- Hiroshi Yoshida, Akito Ehara, and Hiroatsu Matsuura, "Density Functional Vibrational Analysis using Wavenumber-linear Scale Factors", Chem. Phys. Lett., 325(4), 477-483 (2000)
- Hiroatsu Matsuura and Hiroshi Yoshida, "Calculation of Vibrational Frequencies by Hartree-Fock-based and Density Functional Theory", in Handbook of Vibrational Spectroscopy, Eds. J. Chalmers and P.R.Griffiths, Vol. 3, Wiley, Chichester (2001)
- Presentation of Vibrational Spectra with Chime | Gaussian98の出力からChime用データを切り出すソフトウェア
- IR animations
- Vibrational Modes of Small Molecules(Visualization and Problem Solving for General Chemistry)
- 物理化学II 講義ノート/分子構造と分光学 (東京大学・三好研究室)
- 赤外分光光度計で何がわかるの?(日本電子) | ラマン分光
- 他の高分子のIRの例 湿潤発熱機能性アクリル繊維の開発(静岡県工業技術センター・新技術情報)
- IRの基礎知識(Chem-Station)
- 赤外分光法 - Wikipedia
- K.P.C.Vollhardt・N.E.Schore著,古賀憲司ほか 監訳,「ボルハルト・ショアー 現代有機化学 第3版」,化学同人(2000)
- E.Pretschほか 著,中西浩爾ほか 訳,「有機化合物スペクトルデータ集」,講談社サイエンティフィク(1982)
- L.M.Harwood・T.D.W.Claridge著,岡田惠次・小嵜正敏 訳,「有機化合物のスペクトル解析入門 ─UV,IR,NMR,MS」,化学同人(1999)
- 泉美治ほか 監修,「機器分析のてびき (1)」,化学同人(1996)
- 泉美治ほか 監修,「機器分析のてびき データ集 ―IR,NMR,MS,UV―」,化学同人(1996)
- 日本化学会 編,「改訂4版 化学便覧 基礎編II」,II-581,丸善(1993)
- 繊維学会 編,「繊維便覧 基礎編」,p.220,丸善(1982) ※第2版にはIRスペクトルは掲載されていない.
- 石川欣造 編,「被服材料実験書」,p.154,同文書院(1982)
- COR-1001 | Formula Index | Cellulose(cellulose + amyloseなど)
- 分子振動データ集メニュー | 分子振動アニメーションデータリスト | 有機分子の特徴的な伸縮振動
- 高分子事典 | 衣料用繊維の種類
- 本間善夫・川端潤,「パソコンで見る動く分子事典」,p.230・305ほか,講談社ブルーバックス(1999)
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