芽衣子(作:みや)


その日は暑い夜でした。
エアコンが嫌いな私は窓から時折流れてくる生ぬるい風の中、熟睡することが
出来ず、うとうとしては目覚めていました。時計を見ると午前3時。
その日から会社が夏休みだった私は、眠くなったら昼寝しよう、と思い切って
起きあがり、シャワーを浴びました。

Tシャツとショートパンツという軽装に着替えた私は朝の散歩に出かけること
にしました。近所に大きな公園があるのでそこに出かけると駐車場には何台か
の車が止まっていました。

朝の4時から公園に来る人って意外といるのね。
何気なく車をのぞくと2人の男女が身を寄せ合って寝ています。
いや、正確には起きていました。
女の子の方は上半身裸で、乳房を男の手で愛撫され、その指の間から女の子の
乳首が堅く盛り上がりのぞいています。
男の顔は女の子の足の間に埋められて、小刻みに振られ、その動きにあわせて
女の子の指は男の髪の中で伸び縮みし、ぎゅっと目を閉じて喘いでいます。
辺りはまだ薄暗かったので2人は私には全く気付かない様子でした。
私はそっと車を離れ、公園へと入っていきました。
胸はドキドキと波打っています。
私だって、カーセックスぐらい知っていますが、他人のセックスシーンを見た
のは初めてです。

しかし、公園の中に入り、私は再び見てしまうのです。
それが彼女、芽衣子との初めての出会いでした。

辺りは夜明けが近づいているようで地平線がうっすらと綺麗な紫色になって来
ていました。清々しい空気とは裏腹に私の頭の中には先刻の光景が頭から離れ
ませんでした。

あの人たち気付いてなかったみたいだし、もっと見てても良かったかしら。
そんなことを考えながら歩いているうちに公園の半ばまで来てしまいました。
傍らのベンチに腰掛けて空を見ると朝焼けが綺麗です。
ゆったりとした気持ちになって空を見ていると
「うう、ううう」というその場に似つかわしくない女性のうなり声が聞こえて
きました。
気のせいかしら?
「ううん・・・・・・うううん。う・・・」
いえ、確かに聞こえてきます。
私は声がする方へと行ってみました。
茂みの奥の方から聞こえてくるようです。
その声に含まれる甘い響きに、先程、車の中で抱かれていた女の子の姿が思い
浮かびます。デバガメだなあ・・・そう思い苦笑してしまいましたが、誘惑に
勝てず、そっと、茂みに分け入りその声の主を盗み見しました。

思わず声を上げそうになり、あわてて口を手で押さえながら、私は彼女の姿を
見つめました。彼女はブラジャーとショーツだけを身につけていました。
いえ、身につけていた、というのは間違いかも知れません。
ブラジャーは胸のふくらみの上に押し上げられ、ショーツは高く上げられた右
足の膝あたりに絡みつくようにしてぶら下がっていました。

彼女は公園の木に後ろ手にロープで縛られ、右足は枝とロープを利用して胸の
辺りまで膝が上げられ、本来ショーツで隠されるべき場所が丸見えになってい
ました。

彼女はくぐもった声を上げ続けていました。
近頃では珍しい真っ黒な髪はさらさらと肩でゆれて彼女の顔を隠していますが、
その口には猿ぐつわのようなものが見えました。

彼女の周りには誰もいませんでした。
でも、彼女は何かにあわせるかのように腰を振り押し殺した声を上げています。
ここからではよく見えませんが何かが彼女に刺激を与え続けているようです。
その声に含まれる快楽の響きに私は動けず、じっと彼女を見つめていました。
ロープで自由を奪われながら快楽に身を任せている彼女はプロポーションも良
く、とても綺麗でした。

紫やピンク、青が混ざった朝の光が彼女の躰を徐々に明るくさらしていきます。
身もだえる彼女を見つめながら自分自身が縛り付けられているような錯覚が私
を襲いました。

10分くらいはそうしていたでしょうか。
「芽衣子、待たせたね」
「ううう」

私とそう離れていない茂みの中から突然長身の男が現れました。
30歳前後くらいで手には赤い首輪と銀の長い鎖を持っています。
彼女は顔を上げて男の方を見ました。
20歳前半くらいの可愛い顔立ちが感じていた自分に恥じらいつつ、男を見上
げます。
男が側により小さなボールが付いた猿ぐつわをはずすと、「あああ・・・」と
吐息ともため息ともつかない声がもれました。
涎で濡れた唇に男が軽く触れると彼女はビクリと躰を振るわせました。その瞳
は閉じられ、何かを待っているようです。
そんな彼女の様子をしばらく観察した後、彼女の躰が自由にならないままの状
態で男の左手は彼女の乳首をもてあそび、右手は秘所でうごめきます。
「ふとももまで濡らしているよ。芽衣子はいやらしいね」
くちゅくちゅと、音を立てて男の指は彼女の敏感な部分に入り込んでいきます。
「ああ、そうか、これが邪魔だね」
そういうと、彼女の秘所から何処に納まっていたのかと思わせるほど大きな濡
れたバイブを引っぱり出し、それが納まっていた部分に指を潜り込ませました。

「ゆるくなってるね。僕の指じゃ物足りないんじゃないの?」
「あああ、気持ち良いです。ご主人様。芽衣子をもっともっと可愛がって下さ
いませ」
「そんなに腰を振ると背中が木にこすれて真っ赤になるよ」
「ああん、お願いします。もう、止まら、ないんです。はああああ!」

彼女はもう、男の声など聞こえない様子で首を振り、腰を浮かすようにして男
の指を受け入れています。
男は中指と薬指を入れたままクリトリスを親指でこするように動かしていまし
た。こちらにまで、くちゅくちゅという指と膣壁がこすれる音が聞こえてきそ
うです。
彼女の乳房はぴんとはりつめ、男の愛撫に会わせて様々に形を変えていきます。
いつの間にか私も同じように乳房を揉みしだき乳首をつかみ、クリトリスを指
でこすっていました。甘い刺激がクリトリスから躰全体へと広がっていきます。
乳首を指でつまむ度に腰の痺れが増長され、躰全体に快楽の波が包み込みます。

「芽衣子は欲張りだね。こんなにべちゃべちゃなのにまだ、いやらしく腰を振
ってる。まだ、欲しいの?」
「あああああ。そんなこと・・・欲しいです。もっと、気持ち良くして下さい」
「良い娘だね。可愛いよ。芽衣子にはご褒美をあげなくちゃね」

男は彼女の中に再びバイブを突き刺すと、縄を解き彼女を跪かせました。
ベルトをはずし、自分のペニスを彼女の顔にあてがうと
「ありがとうございます」と彼女はそれを手で包み込み、頬をすぼめるように
して口に含みました。
男の手は彼女の両の乳房にあてがわれ、指で乳首をつまんだり、持ち上げるよ
うにして揉み、足は靴のまま彼女の股の間で押しつけるように動いていました。

「はあ、はあ、んん」
時折、こらえきれないように声を上げながら彼女は男のものを愛し続けます。

「ああ、ご主人さまぁ。もう、もう、欲しくてたまりません」
「何が?」
男は片手で彼女の髪や耳をなでながら聞きます。
「何が欲しいの?」
「ご主人様の・・・」
彼女の腰が切なげに揺れています。
「ご主人様の精液をおまんこに飲ませて下さい。お願いします」
「あれ?指で充分なんじゃなかったの?それにもう、そんなに太いのが入って
るじゃない?」
「これじゃ、嫌です。ご主人様のが芽衣子に一番気持ち良いのです。もう、も
う・・・・・・」
男はくすっと笑うと、靴のつま先で彼女のクリトリスをこすり出しました。
「ああ、そんなの、そんなの」
彼女は男のペニスを握りしめたまま奉仕することも出来ずに快楽に身を任せて
います。
「ああああああ・・・・・・・・あ・あ・あ・・・・う、うう、ん!!」
彼女の顔が男が与える快楽に耐えきれず歪んでいきます。
「はああああ、ん!!」
彼女は男の腰に腕を回しぎゅっと抱きしめると、イってしまったようで、その
場に崩れ落ちました。

私も、今までオナニーでは味わったことのない強く、抗い難い快楽の中で指を
奥まで自分自身の中に埋め、イってしまいました。

「ご褒美をもらう前に、許可もなく、イったね?」

男の顔が急に冷めたように彼女を見下ろしました。
「あああああ・・・・申し訳ありません・・・・・・でも・・・・・・・・」
「いつから、芽衣子は言い訳をするような娘になったの?」
「・・・・・・申し訳ありません」
彼女はまだ快楽の余韻が残る潤んだ瞳で男を見上げ、全裸のまま地面にしゃが
み込んでいます。
そんな彼女を見下ろしたまま男は自分のペニスを片付け、ベルトを締めました。
「あああ・・ご主人様、そんな・・芽衣子に下さるのではなかったのですか?」
涙をためる彼女に男は先程手に持っていた赤い首輪をつけました。
「ご主人様、もう、許可なくはしたない真似をしたりしません。お願いします。
芽衣子に、飲ませて下さいませ」
彼女の瞳から涙があふれます。
「芽衣子は、本当に我が儘だね」
快楽を求めるだけだった先程とは違う表情に男は彼女の涙を指で拭いました。
「じゃあ、そのままの姿で帰っておいで。僕のマンションまで、ちゃんと帰っ
てこられたら許してあげる」
「そんな・・・・・・もう、こんなに明るいです・・・・・・」
「だから?」
男が彼女の首から顎にかけて、つつつ・・・と指でなぞります。
「だから、何なの?」
こちらからは、男の表情までは判りませんでしたが彼女は逆らえない、という
ように頷き、「わかりました」と小さく答えました。

男は、彼女の元を離れ、こちらの方へ歩いてきました。
私はあわてて、身を低くしました。
どんどん、近づいてきます。
がさがさ、と音を立てて、男は私のすぐ横まで来ました。
息を殺し、通り過ぎるのを待ちましたが心臓は静かにしたい気持ちを無視して
高鳴り、その音は男にまで届きそうです。

通り過ぎた!
そう思ったときです。
「指の先が、白くなってるよ」
男が私に背を向けたまま、言いました。
ばれた!私の心臓は先程よりも、もっともっと大きく跳ね上がりました。
指先に目を向けると、確かに、自分自身の愛液で汚れています。
私は恥ずかしさのあまり、真っ赤になり、もちろん何も言えません。
男は振り返り、私を見ました。
「もしも、興味があるなら、彼女と、私の所に来なさい。裸の女と歩く勇気が
あるならね」
そう言って、微笑む瞳を見て、私は判りました。
のぞいていたことはとっくにばれていたのです。
指先を白く濁らせ、快楽に浸っていたこともばれていたに違いありません。
知っていて、男は私に彼女を見せつけるようにしていたのです。

男は、一人で歩いていき、その姿はすぐに見えなくなりました。
私は、身を起こし、地面に座り込んでいました。
関わり合ったら、もう、ここへは戻れない気がしました。
でも・・・・・・・・・。
私の理性とは裏腹に肉体は新たな快楽の予感に痺れ、触れてもいないのに、新
たな愛液が私の中から、あふれ出していたのです。

                           END