第2話 芽衣子&美夜(作:みや)



目前で繰り広げられた淫らな様子とそれをのぞき見していたことが知られてい
た事実。
「もしも、興味があるなら、彼女と、私の所に来なさい」という男の言葉に動
けないまま、私は公園の片隅に座り込んでいました。
後ろに人の気配を感じ振り返ると、先程、芽衣子と呼ばれていた女性が全裸に
赤い首輪という姿で立っています。
「・・・・・・」
お互いになんと言葉をかけて良いか判らないまま黙っていると、芽衣子は
「時間がないの。早くしないと、人がいっぱいになるから・・・」
と私の手を引いて立たせます。
近くで見る彼女は24歳くらいでしょうか。ちょっとレイヤーの入ったボブカ
ットはさらさらで、先程快楽に浸りながら乱していた様子はもうありません。
おとなしい印象を受けるその顔は可愛らしく整っています。
むき出しになっている乳房と秘所がつい先程まで快楽にもだえ、きちんとした
服装なら良いところのお嬢さんに見えるこの顔で淫らな言葉を口にしていたの
です。

私は芽衣子にうながされるまま歩き出しました。
芽衣子は慣れているのでしょうか。人目を避けながらも公園を出てすぐの曲が
りくねった小道を進んでいきます。
民家の塀に囲まれた道を私のアパートとは反対方向に向かって進んでいく芽衣
子に引きずられるような形で連れられていく私。
何かの気配を感じたのか芽衣子が素早く電信柱の陰にしゃがんで隠れると、し
ゃーという音を立てて、向かい側から新聞配達らしき自転車の男が現れました。
私の方をちらっと見ましたが、芽衣子の様子には気付かない様子で通り過ぎて
いきます。
「はあぁ・・・・・・」
軽く息を吐き、芽衣子は立ち上がりかけ、少しよろけます。
私が背に手をそえるとビクンと肩を振るわし潤んだ瞳で私を見つめます。
「大丈夫です」そう言う芽衣子の乳首は堅くとがったままふるえていました。
平気そうな顔をしていた芽衣子の真実の姿に私は気付きました。
芽衣子は赤い首輪一つを身につけて誰に見られるかも知れないこの状況で、不
安におびえながらも乳首をとがらせ、秘所を濡らしているのです。

「大通りを渡ったら、すぐですから」
芽衣子は自分自身に話しかけるかのようにつぶやき、私の手をぎゅっと握りま
した。その不安そうな様子に私も手を握り返すと緊張した表情のまま
「そういえば、自己紹介もまだでしたよね。芽衣子です」
とぎこちなく微笑みました。
「美夜・・・・です」
一瞬偽名を使った方が・・・とも思いましたが口から出たのは本名でした。
お互いの名前だけを交わし合い私たちは歩き出しました。
大通りの方を見ると、自動車はほとんど走っていないながらも何人かの通行人
が脇の歩道や、道を渡る歩道橋の上に見えます。
「あのマンションです。判りますか?」
芽衣子が指さす先には3年ほど前に出来、まだ綺麗な外観の10階建てのマン
ションが建っていました。私が頷くと「あそこの8階なんです」と指さして言
います。
芽衣子はまた、私の手をぎゅっと握ると
「走りますから」
と言いました。
裸の女に手を引かれて走る28歳の女・・・。恥ずかしいとは思いましたが芽
衣子はその何倍も恥ずかしいに違いなく、様子を見ると、そのきめが細かい白
い肌の背中はうっすらと紅色に染まっています。
「わかった。ついてく・・・」
その時まで私は自分の意志とは関係なく、芽衣子に引きずられるように来てい
ましたが、芽衣子を見ているうちに快楽への興味よりも芽衣子を放っておけな
い気持ちから、彼女と共に行こうと決めていました。
芽衣子は私を見て頷き、手を離すとダッと走り出しました。
私もその後を追います。数少ない通行人たちが芽衣子を見て驚いたように立ち
すくみます。幸い、自動車が見えなかったので歩道橋ではなく、道路を直接横
切り、私たちはマンション目指して駆けました。芽衣子の何も隠されていない
裸の胸は揺れ、小ぶりながら上下に激しく動いています。

道路を渡るとマンションはすぐでした。
芽衣子に少し遅れてガラス製の大きな自動ドアを分け入り、私は足を止めまし
た。
芽衣子がオートロックの解除の番号を機械に向かって打ち込んでいます。その
肌は汗にうっすらと光り、入り口から差し込む日の光にさらされて輝いていま
す。
全ての番号を打ち終えると目の前にあった自動ドアが開きました。
「行きましょう」
芽衣子に促され、私はその中に入りました。すぐにエレベータに乗り込みます。
「はあ・・・はあ・・・・・・ふうぅ・・・・・・・・・」
芽衣子の息が荒く響きます。そういう私も久しぶりの全力疾走に息が上がって
います。
「すぅー・・・・・・はあぁーーー・・・・・・」
2人で深呼吸をし、目が合うと芽衣子は、ほっとしたように微笑み、今更なが
ら自分の恥ずかしい姿に気付いたのか手で胸と股間を隠します。
今までは、必死で来ていたのですが、ここまで来て気が緩んだようです。
乳房も引き締まったお尻も、先程の全てをさらけ出して必死で走っていた姿よ
りも、隠された方が淫らしくうつります。

チン!
平凡な音を立て、エレベータが8階で止まりました。
先に歩く芽衣子の背中はこれから私が後ろを振り返り逃げることなど無いと思
っているのでしょうか?
周りに気を使いながらも早足で歩いていきます。
(信頼されてる?)
そう思うとここまで来てしまったことにとまどいを覚えつつも逃げることは出
来ない、と感じました。

茶色の木製のドアを模したマンションの一室のチャイムを彼女は鳴らします。

ここに入ったら私の中の何かが変わってしまうだろう。
でも、私は自分の意志でここまでやってきた。
そう、自分で彼女と共に来ることを選んだんだ・・・・・・。

カチャリと鍵が開く音がしました。
ドアの向こうには先程公園で芽衣子を快楽に弄んでいた男が立っています。
彼は私を見ると静かに微笑み大きく扉を開き招き入れました。
口には出していませんでしたがその微笑みに隠された言葉がそのときの私には
聞こえたような気がしました。

「君ガ来ルコトハ判ッテイタヨ」と・・・・・・・・・。

                           END