アキと萌−4(作:葉月さん)


「服従のポーズ」

何も難しい事はない。。単純で簡単なポーズなのだ。柔軟ができる必要がある
わけでも息が苦しいわけでもない。
ただどうしようもなく恥ずかしい。おそらく慣れる事の一生無いであろうポー
ズ。いつだったかアキ様が思いつかれた。。とてつもなく恥ずかしいポーズ。
何処も何も隠しようがない。。

初めてお会いしたあの夏の日。。
それから数週間。。もう秋も暮れようとしていた頃だったろうか?
お仕置きだったか何だったか・?何かで思いつかれたポーズを取らされた。何
も難しい事はなかったがとにかく無性に恥ずかしくて嫌で仕方なかった。それ
で居て感じてきてしまう。その萌自身の余りの抵抗感にアキ様が閃かれたよう
だ。以後毎回のご挨拶に付け加えられる事となった。

遠距離の萌たちには久しぶりに会える時がそのまま調教となる。
ホテルに入りまずはご挨拶。
全裸の萌が椅子に腰掛けたアキ様の前に正座して両手をついて口上。
「アキ様。萌をよろしくご調教下さい。」
「よし。」
アキ様がおもむろに頷いて調教が始まる。
まずは全裸の萌にアキ様の手で首輪が施される。
そしてご挨拶。。

アキ様の靴を一足ずつお脱がせする。アキ様は難しい靴を履いていらっしゃる
事が多い。その度に萌はまごついて困る。アキ様がいつも優しく教えて下さる。
靴が終わると靴下に取り掛かる。片足ずつお脱がせして片方ずつ靴の中に入れ
る。両足が裸足になったら片足ずつ指を丹念に舐める。
これは最初に言われた時冗談かと思ってしまった。
足と言うもの。あまり綺麗な印象はない。靴を履いて外を歩いてきた足である。
どうしようもない抵抗感は勿論あったが、だからと言って萌に拒否権などある
訳もない。恐る恐る、嫌々ながらするしかなかった。

何時も指を舐めている時に不思議だった事。
くすぐったくはないのだろうか?気持ち悪くはないのだろうか?
逆に萌がされていたらきっと嫌なんじゃないかな?
1度アキ様に聞いたこともある。
丁度フェラをされてる時のように気持ちが良いし感じる。のだ、と仰った。

この舐め方にも巧拙があるようで初めの頃はやり直しを命じられた。
ある出来事でアキ様の逆鱗に触れた時、このご挨拶をそれは丹念に行わされ、
初めてそのやり方に納得したものだ。
以来指舐めの儀式は直されたりやり直しを命じられる事がなくなった。
一度指を一通り舐め終わった後、「そのまま足の裏も」と言われた事があった。
「え?足の裏?くすぐったくはないのかな?」
そうは思ったがそこで質問するのも憚られてそのままトライした。
指と違って面積のある足の裏はなかなか上手く舐められない。舌が直ぐに痺れ
て感覚がなくなって来る。
足の裏を余すところなく丁寧に舐める。舐め終わってようやくお許しが出る。

「よくやったね。気持ち良かったよ。」

誉めて頂く。この一言があるから頑張れる。

ここまでが最初から続いているご挨拶の次第。
その後に「服従のポーズ」が加わった。嫌だ。。。

種明かしをする。さっきから思わせぶりに言っている「服従のポーズ」とは?
何の事はない。
萌がアキ様に無抵抗を示す信頼のポーズ。
久しぶりにお会いするアキ様が萌の体を点検なさる為の儀式。

仰向けに寝そべって手を頭の下で組む。両膝を曲げて開く。それだけの事だ。
それだけの事なのだが何時も躊躇する。許される訳はないのだが抵抗してしま
う。頭の下で組んだ手でせめて顔を隠したい。曲げて開いている膝をせめて近
づけたい。どちらも当然許される訳がない。

アキ様は恥ずかしさで消え入りそうな萌を言葉で嬲りながら萌の花芯を検査さ
れる。時に弄びながら念入りに調べられる。この時間がまた何とも言えず恥ず
かしい。時に手の指で。時に足の指で。萌の花芯を押し開きながら調べられる。

「ポーズを取る時にはもう匂うんだぜ。いやらしい匂い。。」

いつだったかアキ様が唐突にそう仰った。
そう聞かされて萌は居場所がなかった。あのポーズを取るだけでも死ぬほどの
思いなのに、そんな事を言われてはもうポーズを取る勇気(?)もなくなって
しまう。それでもするしかないのだろう。。

「ポーズを取った時はもう溢れてるもんな。しっかり濡れてるよ。」
萌の花芯の奥では早くも期待に震えているらしい。意識すまいとしても身体は
正直に反応している。こうしてアキ様に言葉や指で静かに嬲られてもう萌はし
っかりと濡れている。

それほどの時間でもないのだろうがそのポーズを取らされている萌には気の遠
くなるほどの長い時間に思える。
アキ様はいつも静かにゆっくりと言葉で嬲る。指で優しく触れる。
花芯に触れられるとびくんっと身体中で反応する。どこかに消えてしまいたい
ほどの羞恥。泣きたいほどの恥ずかしさ。
これに慣れる事はないだろう。。きっと一生ないだろう。。

少しも難しいポーズではない。至極簡単単純なポーズだ。
しかし、服を着ているならまだしも下着一枚つけていない。
最も見せたくない場所を自分から露に見せ付けなくてはならない。
唯一見られても良い人。。しかし一番見られたくない人であるのもまた真実…

一切の抵抗をいたしません。何もかも貴方様の御心のままです。
無言での表明。

このポーズのまま、鞭や蝋燭を受けたこともある。
顔が晒されている事もあって一種の恐怖すら感じた。背中と違って身体の前面
は痛みに弱い。勿論加減して下さってはいるがその時にはそんな細かい事まで
は気が回らない。

「恥ずかしい思いはさせるが恥はかかせない。」
アキ様にそう言って頂いた事がある。凄い言葉だと思う。
そしてそう言っていらしたとおり、まだ一度も恥はかかされていない。恥ずか
しい思いはいつもさせられているが…
その恥ずかしい思いもまるで麻薬のように次が欲しくなる。頭が痺れるように
その感覚が欲しいのだ。その恥ずかしさを味わっている時、幸福感とも満足感
とも何とも言えない感覚に襲われる。

「服従のポーズ」もけして自分からはできないが「嫌だ嫌だ」と言いつつも何
処かでそう望んでいる自分が居るのも確かなようだ。他の誰でもない。アキ様
に言われてこそだが。
そんなポーズを躊躇しながらも取れる。できる。と言うのはアキ様への信頼に
他ならないだろう。恥ずかしさに消え入りそうになりながらもそのポーズを取
っている時何処か安心している自分も居る。
その安心感がなければとてもそんなポーズを自ら取る事はできないだろう。。

後3日で一月ぶりにお会いできる。
その時もいつもと同じ。ご挨拶の口上。ご挨拶の指舐め。
そして「服従のポーズ」
そこまで一連の動作が済んで初めて調教が始まる。
そこまでが一山。ご挨拶は永遠に慣れないだろう…
アキ様がこんな萌に愛想を尽かさなければ良いが―――

このままいつも通り鞭とスパンキングと「おしゃもじ」となる。。

 -―――了―――