ナルシスの転落 3・お化粧をされる(作:宮城耕一さん)


 横に転がされているので、右のボールギャグの穴からよだれがひっきりなし
に出ている。後ろでドアが開く音がした。「オース」とその新しい男は隣の部
屋に声をかけた。

「来たのか」と、彼の声がした。入ってきた男はまっすぐ私のところにきて、
私をまたぎ、首を持ち上げて私を調べるように見た。ひげの濃い、鋭い目つき
の太った男だ。男は私の目蓋を押し広げ、ボール・ギャグされている唇を押し
広げて、歯並びを調べ、うつ伏せにひっくり返して私のアヌスに指を突っ込み
調べていた。ひっくり返された時には縛られているところがきしむように痛く
、思わずうめき声を出した。彼と細面の男が横にやってきた。

「どうだい? 女にしたら売れそうだろ」
「最初はホモ相手でいいだろう。外人という触れ込みを聞いてやりたがる連中
たくさんいるよ」
「三週間はここにいてくれるって約束なんだよ」
「三週間ってあっという間じゃん。その頃にはほとんど女になってしまってる
よ。女にしてしまえば、もっと売れるからな」
「調べたが、歯並びが悪いな。前歯に隙間が開いてるよ。目の色は薄い茶色だ
な。光線の具合で緑か青に見えることもあるな。髪の毛は男では長めだが、当
分ずっと髪を伸ばさせよう。マドレーヌって名前は雰囲気にあってるとは思う
が、長いよ。客が覚えにくいよ。マレッタと名前を変えよう。ところでイカセ
テないだろうな」
「ええ、一度もいかせてません。ヤラレッパナシでさぞ抜いてほしがってると
思うよ」
 「ううう ううう」
 私は抗議の叫びをあげたかった。ホモの相手をされるなんて、本当に女にさ
れてしまうなんてこと、性転換なんて、絶対いや、と叫びたかった。
「グチャグチャ言ったらまた一発お見舞いするぞ!」
 彼は怒鳴った。私は身を縮こませようとしたが、身動きできなかった。ひげ
男がバッグから化粧品を出し始めた。細面の男はカメラの三脚と照明の用意を
し、ポラロイドとカメラの用意をしはじめた。彼は私の足の縄をほどいた。足
の爪に真っ赤なマニキュアを塗り始めた。ひげ男はボール・ギャグを外し、「
グチャグチャいうな。されるがままになっとけよ」と言って隣の部屋に行き、
コップに水を汲んできて、私に飲ませた。朝食の後、初めての水だった。すご
く水がおいしいと思った。
「トイレにイカセテ」
「そら、これで朝のようにしろよ」

 細面の男が風呂桶をよこした。私のオシッコはまだ始末されずにチャプンチ
ャプン音を立てた。私は男三人が見ている前で長々とオシッコをした。三週間
も本当にここにいなければならないのだろうか、解放してと言ったらどつかれ
るに決まってる、どうしようかと思った。ひげ男は、私の顔を拭いてファウン
デーションを塗り始めた。ぞっとするほど冷たかった。それからパフで顔をた
たき頬紅をつけ、剃刀で眉毛を細くして眉墨で眉を描いてアイラインを引き、
ピンクのアイシャドウを塗った。それからマスカラをして、赤い口紅を引いた
。彼は足から手の方に移ってマニキュアをしていた。髪に赤いヘヤーバンドを
された。

「写真が終わったら飯を食わせてやるよ、感謝しな」
「服とお金を返してください。ここから出して!」
 とうとう言ってしまった。
「マレッタをうつ伏せにしてケツをつきださせろ」
「やめて!」

 後ろ手に縛られたままなので、簡単にうつ伏せにされた。蹴られるかどつか
れるかするのだ。ビシ、ビシとベルトでしばかれた。「ギャ!」「ギャ!」と
叫んだ。尻に何発もベルトで鞭打たれた。どっと汗が吹き出た。とうとう言っ
てしまった。

「やめて、ごめんなさい、もう言いません。ぶたないで」
「おとなしく言うこと聞いてりゃいいんだ。セックスの味を仕込んでやるよ。
おまえは女とセックスせずに男に犯されたんだよ。恥ずかしいことじゃないか
。男二人に同時に犯されたんだよ。ばれてみろ、もう縛られた写真も犯された
写真も撮られてんだ。これから、女の顔にされたのを撮られるんだ。逃げたら
、おまえが家に帰り着く前に、おまえの知り合いのところに写真をばらまいて
やるぞ」 彼は友達の住所や電話番号を書いてある私の手帳を見せて脅かした
。
「やめてください、それだけは」
 あんな写真を見られたらもうおしまいだ。家出するしかない。大学もやめな
ければならない。もともとS・Mなんかに魅力を感じていたから、自分が悪か
ったんだ。男に写真集を見せてやるといわれて、何の警戒心も起こさずについ
てきたのがそもそもこうなった原因だ。

 彼は僕のチ○ポの雁首を麻紐で縛り、股ぐらに隠すようにして上からガムテ
ープを貼ってチ○ポがないかのようにした。後ろ手に縛った縄を解いて、ピン
クのブラジャーをつけさせた。ブラジャーの上下に縄が来るように後ろ手に縛
った。ヘヤーバンドを取って、前髪を切り、櫛でヘヤースタイルを変えさせら
れ、ピンで止められて、またヘヤーバンドをつけさせられた。長いイヤリング
を両耳につけた。あそこは隠されて、金髪の陰毛しか見えないから、外人の女
が縛られているようしか見えないはずだ。

 撮影が始まった。私は化粧された顔を正面から横から斜めから撮られ、次い
で縛られているブラジャー付きの上半身を、前から後ろから撮られ、金髪に近
い陰毛と顔とを撮られた。ついでまたボール・ギャグをされて撮影が繰り返さ
れた。ストロボを浴びせられるたびに私は逃げられない、もう逃げられないと
心につぶやくのだった。それからひげの男が裸になって、私のアヌスを犯し、
村井が顔が写真に入るように私の顔をねじ曲げて撮影させた。ひげ男のチ○ポ
をアヌスに突っ込まれ、それも写真に撮られた。チ○ポをくわえている写真も
撮られた。

 しゅっちゅう、女をつかまえて、連中はこんなことをしてるんだろうか、僕
はハーフなので、男だけどこういう目にあってしまったんだと、妙に納得して
いた。その後、縄をほどかれて前で手錠をかけられ、その日、二回目の食事に
ありついた。酒も飲ませてくれた。そうして、緊張が急に抜けたようになって
、崩れるように眠ってしまった。