ナルシスの転落 6・吊るし部屋(作:宮城耕一さん)
ここに連れて来られてから、十日くらい過ぎた。数えるのがはっきりしなく
なっている。カレンダーも時計もない。何時かも、朝か昼かもわからない。フ
ェラチオはまだできていない。たいてい、二、三時間くらいの長さと思うが、
いろいろな男のものをしゃぶらされる。自然に大分うまくなってきたが、大量
の浣腸で悲鳴をあげているおなかとの戦いだった。後ろ手に縛られているので
手を使えず、口と舌とのどで何とか相手を射精にもちこまねばならなかった。
まだ成功できず、三回の排泄の汚辱に耐えねばならなかった。オッパイは少し
膨らんできていた。注射はこのところ、二、三日置きにされている。てのひら
をかぶせたくらいにはなった。あそこは縮かんだままで、いくらマスをかこう
としてもぐんなりしたままで、すぐに自分への性的虐待に思いが戻り、男とし
て興奮することは出来なくなってしまった。
ここに来てからはフェラチオの訓練と浣腸、鞭打ちだけで愛撫されることは
なかった。食事は一回きりで、絶えず空腹で、もともと力のない私はいっそう
力がなくなっていた。五日目からフェラチオ訓練の後に、隣の部屋で天井から
吊るされるようになった。天井の梁にカギのついた鎖が五本垂れ下がっていて
、床からハイヒールの爪先が十センチくらい離れるほどの高さで後ろ手縛りで
吊るされた。日によって体が水平になるように吊られたり、両足を開いた格好
で吊るされることもあった。
唯一の仕事と言える「お支度」に、私は楽しみを見いだしていった。フェラ
と浣腸と鞭打ち以外の「お支度」、お化粧に慣れさせられることによって、男
をシーメイルといわれる特殊な人間にしていくのだろうと思った。たまに聞こ
える叫び声は女だけだから、やはり私はハーフということでさらわれたので、
例外なのだろうと思った。今日はかなり上手にお化粧が出来た。マニキュアと
ペディキュアは一回だけ塗り直した。使ったことのない色を使うのは楽しい。
お化粧をして、だんだんきれいになる私の顔を見て、自分で自分に恋しそうに
なる。かわいそうな美少女マレッタ。前はいろいろな人が髪の毛や目の色、肌
をほめてくれた。考えてみれば、彼と他の二人との三日間は愛撫され、体が燃
えたりもした。けれどここに売られてから、鞭打ちと浣腸と吊りだけで、苦痛
しかなかった。
フェラ訓練の後の吊りで、ある日、私より先に女が吊るされていた。ガータ
ースタイルにハイヒール、ボール・ギャグまでそっくりだった。横で私も吊り
上げられた。時々見つめ合ったが、二人ともギャグをされているのでしゃべる
ことは出来なかった。それからは何人かの女と一緒に吊るされることが時々あ
った。十代、二十代、三十代の女もいた。誰もが美人で上品で、知性的に見え
た。女たちはアヌスとフェラチオ以外に腰の使い方などの調教もされているの
だろうと思った。逃亡する意欲をなくした時に客を取らされるのだろうか。い
や、そうではない。きっと監禁され調教されはじめて二、三日後には調教を受
けながら客も取らされているのだ。おそらく、この上の階で。だったら調教が
終わったら、女たちはどこかに転売されるのだ。そして、ここはR市なのか、
R県以外のところなのか。
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