ナルシスの転落 8・ピアスをされる(作:宮城耕一さん)
翌日目が覚めると、朝食が差し入れられてあった。朝食の後、インターホン
を押せとメモにあった。いつもとは違った。もう八月も半ばを過ぎたのではな
いだろうか。旅はとっくに終わっているはず。九月なのかもしれない。私は失
踪し、行方不明になっている。私の失踪は新聞ダネになることもなく、警察も
わざわざ探しはしないだろうと思った。理由のない失踪、特殊家出人、新聞の
ベタ記事で読んだことがある。年間一万人。犯罪絡みは一パーセントだったか
。それなら百人。私やここにいる女たちはその一パーセントなのだ。
インターホンを押すとお化粧をせずにそのまま待っておれとのことだった。
ストッキングとガーターベルト、ブラジャーは身につけて、ヒールをはいた。
何が起こるのかと思った。六十男が現れ、後ろ手に手錠をかけて首輪をした。
上の階に上らされると、シャワーを浴びて体を洗えといわれ、手錠と首輪を外
された。一カ月か一カ月半ぶりだった。天の恵みのように思ってシャンプーを
し、体を入念に洗った。もうじきお別れするかもしれないあそこも丁寧に洗っ
た。さらわれて初めてというほどさっぱりした気持ちになった。
シャワーを終えると調教部屋の椅子に座らされた。目つきの鋭い男が、「ピ
アスの穴を開けるからな」と言った。私は衝撃を受けなかった。あそこを切り
取られるという話を聞かされた後、ピアスの穴はすでに膨らまされているオッ
パイと同じようなものだった。両方の耳たぶに一つずつ穴を開けられ、金のピ
アスをはめられた。その後、後ろ手錠に首輪をされて部屋に戻され、支度をし
て待っておれと言われた。
支度が終わると呼び出しがあった。また六十男が来て、いつもの通りに後ろ
手に縛られ、ボール・ギャグと首輪をつけられ、四階に連れて行かれた。中に
入ると、男は何かを言った。中国語ということはわかったが、何をせよと言っ
ているのかわからない。中国人は服を着たまま私を鞭打ち始め、私は尻餅をつ
いてひっくり返り、体中に鞭を浴びせられ転げ回った。中国人は両足を揃えて
縛り、チェーンで私を逆さ吊りした。私の髪はかなり伸びていた。垂れ下がっ
た髪が床の上で揺れていた。鞭打たれるたびに体がくるくる回り、目が回るよ
うであげそうになった。
下ろされると椅子に縛りつけられ、ブラジャーをずり下げられた。オッパイ
に長い針を四本ずつ打ち込まれた。痛くて涙を流した。中国人は耳を丹念にな
めはじめ髪を背中にぐいとひっぱり、露出した首をなめ、頭を下に向けさせて
うなじをなめ回した。ボール・ギャグからよだれがガーターストッキングに糸
のようにしたたった。オッパイが燃えるように感じ始め、私は悶え始めた。た
まらなくなった時、針を抜かれた。中国人はブラジャーからはみ出したオッパ
イを集中的に鞭で打った。私はギャグの中からギャーギャー叫んだ。オッパイ
が熱で膨らんだような気がした。中国人はオッパイを揉みしだきながらしゃぶ
った。痛くてとても快感はなかった。しかし、中国人は満足した顔になり、全
裸になった。私を椅子から解放して膝まづかせ、ギャグを外してチ○ポを口の
中に押し込んだ。私は必死に満足させようと思って舌を使い、頭を動かした。
キンキンに固くなったところでベッドに追い上げられ、両足を揃えて縛られう
つ伏せにされた。中国人は私の腰を持ち上げ、お尻を高く上げさせた。そんな
窮屈な姿勢なのに、中国人は後ろからアヌスを犯し、しつこいピストン運動を
した。気が狂うほど悶え、一瞬気が遠くなった。息を吹き返すと何か言った。
そして猛烈にピストン運動を再開した。私はまた燃えてきた。かなり燃え上が
ったところで中国人のものが膨らみ、精液を私の体の奥深くまでぶちまけた。
片づけに来たのは六十男だった。彼も私を犯した。
部屋に連れ戻されても私は化粧を落とさなかった。昼食を食べて、赤のマニ
キュアとペディキュアを落として、代わりに青色に塗りかえた。乾いてから化
粧を直した。アイラインを濃いめに引き紫のアイシャドウを瞼の上にべったり
塗り、眉毛の下には薄いめに塗った。目蓋のくぼみには青のアイシャドウを塗
ってコントラストをつけた。ビューラーで睫毛を上に曲げマスカラを丹念に塗
り、銀のアイシャドウの粉を睫毛につけて濃い赤の口紅を塗った。
私は鏡に向かって「娼婦マレッタ、売春婦マレッタ」とささやいた。もう男
に戻れないのだ。もしかして二、三日に一回の注射をやめれば男に戻れるかも
しれない。オッパイはかなり大きくなっていた。注射されなくなってオッパイ
が小さくなっても、あそこの機能はきっと回復しないと思った。きっとそうな
のだ。女として犯され、それで興奮することを覚えてしまった今、このままシ
ーメイルとして体を売るかヤクザが言ったように性器を切り落とされるか、性
転換されて女の性器をつけられるか、三つに一つしか私の連れて行かれる道は
ない。私は選択することすら出来ず、組織の方針でどれかの道を歩まされるの
だ。どちらにしろ私は体を売らされ、世間に戻ることはなく、組織の資金源と
して骨までしゃぶられるのだ。ここが終着点なのか。ここは自分から体を売り
たがる女でなくて、普通なら売春と縁のない女を注文されて誘拐し、調教して
娼婦に仕立てる奴隷調教所という売春への入り口なのかもしれない。私ははっ
とした。私が旅の初日に村井と自称する男と一緒に見た映画の内容そのままの
世界がここだったのだ。私は被虐の空想で興奮し始め、ブラジャーの中に手を
入れて両手で自分のオッパイを揉み始めた。
インターホンが鳴った。またお呼びだった。興奮していた体に縄をかけられ
ギャグをかまされると、それだけでビンビン感じた。客は初回のはげ男だった
。私を天井から吊るしてしげしげ見つめ、「おまえ、きれえになったな。本物
の女みたいや。マレッタが完全に女になったら、初回、わしが買うように手を
打っておいてやる。うれしいか」と言った。私はしくしく泣き始めた。女の子
のように。性転換なのだ。しかし、日本の医者でそういう裏社会の頼みで手術
をする医者がいるのだろうか。
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