ナルシスの転落 9・売春の日々(作:宮城耕一さん)
性転換されると思って泣いたが、一向にその兆しはなかった。注射は数日に
一回に減り、フェラチオの調教も吊り部屋で吊るされることもなくなった。食
事は三食になった。シャワーは三日おき。ブラジャーが大きいカップのものに
替えられた。一日に五人か六人、多いときは十人ほどの客を取った。その回数
分、従業員は私を犯した。あの村井二郎、あれはきっと偽名だ、彼も三回従業
員として現れ、私を犯した。彼に犯される時、私は最高に燃え上がり、後で激
しく彼を憎んだ。私を哀れんだ。
私に腕力があればと思った。幼い時から筋肉が弱く、腕相撲でも一回も勝っ
たことはなく、ボールを投げる体力テストも背筋力も男子の一番ビリッコだっ
た。
中学生くらいから女のような肌をしていると言われ、大人の女性にさわらせ
てと言われたりした。「ええ、そんな」といつも怯えて気弱に返事をし、大人
の女は首筋やうなじをさわった。「いやです」と言うと怒鳴られる感じがして
いつもさわられるままになってしまった。「いいでしょう? 減るものでなし
」と強引に首筋をなでられ、頭を下げさせられてうなじを愛撫されるのだった
。うなじを愛撫されるとあそこが固くなってズボンを突き上げた。大人の女た
ちはそれを見て笑い、盛りあがった部分を撫で撫でして「かわいいわね」と言
って、満足して立ち去った。
中学になって電車通学するようになると痴漢されるようになった。たいてい
は中年の男で、男子中学生とわかっているのにお尻を撫でられた。乗車時間が
短かったので大きくなったところで救われていたが、駅を出た時は悶々とした
気分に悩まされた。大学生になって一カ月後に、本格的に痴漢をされた。急行
の次の停車駅までが長く、中年の男にジッパーを引き下ろされ、パンツの上か
らつかまれてマッサージをされ、パンツの中にはじけてしまった。駅のトイレ
でパンツを脱いで捨てた。痴漢にけがされたと思った。あれが私の転落の第一
歩なのだろうか、それともR駅の近くのエロ映画館に彼と入ったのが第一歩だ
ったのだろうかと考えた。
彼に縄をかけられて四階の部屋に連れて行かれた。エレベーターはきっとあ
るはずだ。けれど日陰者の私たちには使わせないのだろう。中で待っていた男
はいやな感じがした。陰惨というか、そんな匂いがする。ぞっとした。私は椅
子の背に向かってお尻を突き出すように座らされ、足首と太股を縛られた。男
はパンツ一枚になって戸棚から五十cc入りの浣腸器を取り出した。いつもと
同じサイズだ。時々、客に浣腸されるが、客は百ccか百五十ccで、調教は
二百五十ccか三百だった。男は口もきかずに浣腸をはじめた。数えると五回
を越えた。浣腸液を足して更に注入を続けた。八回目の時はおなかの大腸全部
に液が回ったようになっておなかが膨れ、痛みがはらわたをかきむしった。私
は抗議のうめき声を上げた。「うるせえ!」と言って、鞭で打たれた。浣腸は
十五回、七百五十ccで終わり、栓を詰められた。
椅子から下ろされ、両足を揃えて縛られて床に転がされた。男は煙草を吸い
、酒を飲み始めた。私は脂汗をかき、腹がかきむしられるようでゴロゴロ鳴り
、出口を求めて液はおなかの中で荒れ狂った。身悶え手両手足を縛られたまま
、くねくねと身を動かして痛みをかわそうとした。男は無視してテレビをつけ
、野球を見はじめた。久しぶりの野球だと思いながらチームはどこか見る余裕
もなく、部屋の隅から隅へ転げ回っていた。コマーシャルの二回目の時に風呂
桶を持ってきて足の縄をほどき、またがせて排泄させた。この時は快感はなか
った。甚だしい脱力感に見舞われ、自分の便の上に尻餅をつきそうだった。男
はさっきと同じように椅子に縛りつけた。「いやいや」という身振りをした。
男は無視してまた浣腸をした。今度は九百ccされた。椅子から下ろされて同
じように両足を揃えて縛られ、床に転がされた。男は煙草を吸い、酒を飲み、
野球を見続けている。わめいても転げ回っても無視された。わめいたり転げ回
るしか痛みをそらせる手はなかった。栓はなぜ飛び出さないのか。野球が終わ
ると、さっきと同じように排泄させられた。急激な排泄に意識を失った。気が
ついたら椅子に縛りつけられて三回目の浣腸をされていた。数回浣腸と排泄を
繰り返された。最後に精液をアヌスにぶちこまれたが、もう二度とこんな客に
買われたくなかった。
時間のせいか男が帰った後、長く放置された。ベッドで両足を吊られたまま
眠りに落ちた。私が黒いものに追いかけられて逃げるところもない所に追い詰
められた夢を見ている最中に揺り起こされた。ひげ男だった。彼はチェーンか
ら足を外し、縄とギャグを取って抱き上げて私を部屋に戻し、ベッドに下ろし
て出て行った。そのまま眠ってしまった。
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