ナルシスの転落 11・ボンデージ(作:宮城耕一さん)


 中に入ると金髪の大男の外人だった。自称村井は部屋の中で縄をほどいて出
て行った。外人は戸棚から皮のコスチュームを取り出し、皮の乳枷を取り付け
た。オッパイをぎゅっとつかんで引き出した。オッパイはぐっと皮の乳枷から
飛び出した。驚くほど大きなオッパイだ。ついで皮のコルセットを腰にあてが
い背中で紐を引き絞った。おなかの真ん中が締めつけられ、8の字のようなス
タイルにされた。前で鎖のついた皮手錠をして、その鎖に天井のチェーンのカ
ギをひっかけて電動モーターで引き上げた。ヒールの爪先が床から十五センチ
浮き上がったくらいのところでモーターを止めた。私はまっすぐ吊られていて
手首に全体重がかかり、腕が抜けるようだった。外人はライトを点灯し、吊る
されている私をライトアップした。大きな鏡の中に私はいた。ライトでピアス
のガラス玉が赤白に輝いて美しかった。

 それからは鞭の地獄だった。外人は鞭打ちだけで興奮するらしく、数十発鞭
を浴びせられた。お尻や膝から血が流れ出すのを感じた。私はずっと悲鳴を上
げ続け、泣き通した。ここは本当に地獄なのだ。私は罪を犯した亡者で、外人
は亡者をこらしめる鬼なのだ。鬼と思った。でも私は罪を犯した亡者なのだ。
私の罪は、私自身美しいと思っていたこと。きれいと言われ、のぼせあがり、
たくさんの男や女に肌をさわらせてきたこと。さらわれる前に、私は一体何人
の男や女ににじりよられ、肌をさわられたのだろう。十人ではきくまい。痴漢
をした男は十人かもしれない。私は地獄に落とされ、鬼に罰せられるだけの理
由を持った亡者で、監禁され、セックス奴隷に落とされて当然の人間。性転換
されて、本物の売春婦として骨までしゃぶられるのも当然の人間。そんな思い
がぐるぐる頭の中を駆け回った。

 チェーンから下ろされるとそのまま床にへたりこんでしまった。外人は私を
肩に担ぎ上げ、乱暴にベッドに放り投げた。後頭部をベッドの木製の縁に打ち
つけた。とても痛かった。外人が全裸になってのしかかり、いきなりアヌスを
犯した。事前のマッサージ無しだったので、体がお尻の穴から頭のてっぺんま
で縦に引き裂かれるように感じ、私は泣きわめいた。外人は私の苦痛のうめき
声や涙に余計興奮するようで、激しく腰を使って私を責め続けた。鬼! 鬼だ
! 残酷な鬼だ。鬼は咆哮してどくどくと精液を私の心の中心に注いだ。

 外人は、「サンキュー」と言ってウインクし、出て行った。何がサンキュー
だ。皮手錠はベルトの穴でとめてあるものなので、自分ではずせるし、ギャグ
もはずせるが、鞭の痛さがきつくて私はベッドに寝たまま、動かなかった。自
分で皮手錠をはずしても意味がなかった。どうせここの誰かがやってきて、役
得とばかり私を抱き、満足した後で後ろ手に縛ってギャグをかませるのだ。

 新人が入ってきた。二十代だろう。人相が悪かった。私を彼も犯した。当然
の権利のように。私は少し感じていた。彼はガーターストッキングを脱がせた
。ストッキングはあちこち破れていた。