リストラ (2)(作:慶子さん)


『パーティー』

 絵梨子と私はワインと花束を持って、教えられたルームナンバーの部屋を8
時少し過ぎに訪ねました。彼女達の部屋は最上階に近いフロアでスイートルー
ムでした。

「凄い、スイートだって!!」

絵梨子が驚きの声を上げました。少し気後れしながら、私達はドアの横のベル
ボタンを押しました。


「ピンポ〜ン」

チャイムが鳴り、しばらくしてドアが開かれました。

"Hi!  Welcome!!"

大きく両手を拡げてあの彼女が立っていました。

"Good evening.  Thank you to invite us tonight."
"You're  welcome!!  Please come in"

一応思い付いたフレーズで挨拶し、部屋の中へ入りました。さすが「スイート」
!! 入った所の部屋はリビングで応接セットやバーコーナー、ピアノまで置
かれた広い部屋でした。中央のテーブルには盛り沢山のオードブルやロースト
ビーフなどが並び、シャンパンも冷やされていました。その豪華さに少し驚い
ていると、隣の部屋から日本語の話せる彼女がリビングに入って来ました。

「イラッシャイ!」
「こんばんは、今夜はお招き頂いて、有り難うございます。」
「ヨクキテクダサイマシタネ。」
「これ、詰まらないものですけど。」

ちょっと気後れしながら私達は持参したワインと花束を差し出しました。

"Oh,  thank you very much!!"
「アリガトウゴザイマス。サア、アイサツハコレクライニシテ、スワッテクダ
サイ。」

そこで私達はお互いの名前も知らない事に気付いて、自己紹介しました。彼女
達は二人でブティックを共同経営していて、日本語を話せるナンシーとトレイ
をドアを開けてくれたキャロルだと判りました。

「サァ、シャパンデカンパイシマショウ!」

ナンシーがシャンパンのコルクを威勢の良い音をさせて抜くと、白い泡が吹き
出して来ました。ナンシーは簡単に栓を抜きましたが、そう言えば二人とも背
が高く、恐らく180センチ近く有りそうで、力も強そうでした。口当たりの
良いシャンパンで乾杯し、少しリラックスしておしゃべりが始まりました。

「お二人はどこにお住まいなんですか?」
「ビバリーヒルズニオミセガアルノデスガ、ウチカラクルマデ20プンクライ
デス。」
「えっ、じゃぁ、ビバリーヒルズにお住まいなんですか?!」
「チイサナイエデスガ。」
「すっごーい!!」

私達はもう驚くばかりでした。アメリカのキャリアウーマンって、ホントに凄
い!! これが正直な気持ちでした。

「シャンパンノツギワ、ナニヲノミマスカ?」

四人で飲んでいるのでシャンパンは空になりかけていました。

「私はワインかな? 絵梨子は?」
「じゃぁ、わたしもワインで良いわ。」
「エンリョセズニ、ナンデモドウゾ。」
「遠慮なんて、ホントにしてません。」
「ソウダ、ワタシワ、カクテルヲツクルノガシュミナノデスガ、イカガ?」
「凄い、カクテルも作れるんですか?!」
「ノンデクレマスカ?」
「勿論頂きます!!」
「ジャァ、スコシマッテクダサイネ。」

ナンシーはそう言うとバーカウンターの向こう側へ周り、シェーカーを取り出
すと数種類のお酒やリキュールをシェーカーに注ぎ、見事な手さばきでシェー
カーを振り始めました。リズミカルなシェーカーの音に、私と絵梨子はどんな
カクテルが出来上がるのか、顔を見合わせて微笑みあいました。やがて、シェ
ーカーを振る手が止まり、タンブラーに注ぎ入れられた奇麗なブルーのカクテ
ルが運ばれて来ました。

「コンドハタオシマセンカラダイジョウブデス!」

ナンシーは言って、ウィンクして見せました。私達は可笑しくて、吹き出して
しまいましたが、キャロルは訳が判らず、キョトンとしていました。ナンシー
が英語で説明するとキャロルも笑いながらナンシーを叩く真似をしました。

「ナンシーとキャロルはカクテルを飲まないのですか?」
「ワタシタチワ、ウィスキー&ソーダガスキナノデ、ソチラニシマス。」

再びナンシーがバーへ行って、二人分のウィスキー&ソーダを作って運んで来
ました。もう一度乾杯をして、カクテルを頂きました。口当たりが良く、とて
も飲みやすいカクテルでした。

「これは何というカクテルですか?」
「ソレハワタシノオリジナルデ『フライング・スピリット』トイイマス。」
「素敵な名前ですね。」

ナンシーは軽くウィンクしましたが、後で名前通りになるとは私も絵梨子も思
いもしませんでした。
 
 

『退屈』

 テレビをイヤホーンで聞くのがどんなに詰まらない事か、初めて知りました。
私はこの部屋での生活に少し退屈して来ていました。彼女が買っていた雑誌を
何気無くめくっていた時、メークの特集が組まれているページが目に止まりま
した。

「化粧してみようか?」

私の中の誰かがそう呟きました。退屈していて、少し思考回路が狂っていたの
かも知れません。まず、私はその特集を細かく読む事にしました。

 化粧水での肌の手入れ、ファンデーションの選び方、眉毛の整え方、アイラ
インとアイシャドーの入れ方、唇の形別の口紅の引き方、最後にチークカラー
の入れ方、ハイライトの効果的な使い方。

 女性の化粧がこんなにも手の込んだ作業だとは知りませんでした。テレビド
ラマなどで出掛ける前に女性の化粧に時間が掛かり、男性がイライラして待っ
ている場面を見たことが有りますが、これならそんなに簡単に済まない訳が判
りました。私は時間を掛けて肌の手入れから始めることにしました。彼女の、
法子さんの化粧バッグの中を確認し、一通りのものが揃っている事も判りまし
た。その中のポーチから毛抜きを捜し出し、ヒゲを抜く作業から始めました。
抜くたびに痛みが走り、なかなか簡単には抜けませんでした。あごの部分で一
日、鼻の下で一日、あごの両側もみ上げまでで一日、合計3日掛かりで抜き終
えましたが、最後の日にはもう最初に抜いたあごの部分に新しいひげが伸び始
めていました。化粧水で肌を引き締めると、結構スベスベした良い感じでした。
その間にバスルームの剃刀を使って両足と腋の下の毛を剃り落としました。ひ
げも剃れば良かったのですが、特集記事を読んでいる内に、顔の肌だけは奇麗
にしようと思ったのです。


 肌の準備が出来たので、テーブルに化粧品を並べてメークをしてみる事にし
ました。特集記事に従ってやってみたのですが、出来上がりは学芸会の域を出
ない、ただただ塗りました、という情けないものでした。何度かメークを洗い
落とし、やり直している内に、少しずつコツの様なものが判ってきて、少しず
つ見られるようになって来ているように感じました。まぁまぁ合格点を付けら
れる出来上がりになったので、私は法子さんの洋服を着てみる事にしました。
タンスの中からワンピースを選び出しました。左サイドにファスナーが有り、
頭から被るタイプのものでした。

 髪はそこそこ伸びていたので、全体の雰囲気はそんなに違和感は有りません
でしたが、胸が平板なのと肩幅が少しキツイので、やはり男性体形にしか見え
ませんでした。

「バストが必要だな。それにウエストを細くしなきゃ。ヒップも随分貧弱だし」

それが正直な感想でした。

「バストはブラを着けてカップの中に何か詰めれば形にはなる。
 ウエストとヒップが問題だな。」

それまでパンティー以外の下着にはほとんど注意を払っていなかったのですが、
他の抽斗も再度調べてみると、ウエストを締め付けてくれるボディースーツや、
何時身に着けるつもりで買ったのか、と思うような(後で知った名前ですが)
スリーインワンも有りました。最後の問題のヒップは少し工夫しないと下着で
はカバー出来そうも有りませんでしたが、ガードルの内側に詰物をする事で少
しはボリュームが出せそうでした。

 ボディーラインが何とかなりそうだと思うと、髪形も何とかしたくなりまし
た。幸い長さは十分に伸びていましたから、前髪を一直線に切り揃え、カーラ
ーを使って巻く事にしました。この時に、前髪の長さが短くなり過ぎないよう
に注意して長目に切り揃えました。明日はもっとメークを練習しようとワンピ
ースを脱いだ時、顔のファンデーションをベッタリとワンピースの襟口に付け
てしまいました。脱いでよおく観察すると、着るときにも何ヶ所かにファンデ
ーションを付けてしまっている事が判りました。メークの前に服を着ないとい
けない。メークを落としてから服を脱がないといけない。それが今日学んだ教
訓でした。

 翌日からは、下着選びと洋服選びから始めました。パンティーの上にガード
ルを穿き、その中にスリップを何枚か押し込みました。バストにはスリーイン
ワンのカップにストッキングを詰め込んでボリュームを出しました。スリーイ
ンワンのウエストはきつく締まるようにヒモを調節し、その上にボディースー
ツを着ました。胴体全体が締め付けられているようで息苦しいくらいでしたが、
何とか我慢出来そうでした。昨日は頭から被るタイプのワンピースを選んで失
敗したので、今日は前が全開になるタイプのワンピースにしました。スカート
は試してみたのですが、もう少しウエストが細くないと無理なようです。

 何週間もメークの練習をし、またダイエットも心掛け少しきつめですが、ス
カートも穿けるようになって来ました。でも、まだヒゲを抜くときの痛みには
慣れませんでした。私は男性としては比較的小柄な方なので、彼女のハイヒー
ルも何とか履く事が出来ました。今日はちょっと大胆な計画を立てています。
女装して、外出してみようと思っているのです。幸い、彼女の部屋のスペアキ
ーも有るので、堂々と玄関から出ることが出来ます。勿論、外を歩くだけでお
店に入ったりは出来ません。話すと男だとすぐにバレてしまうからです。でも、
擦れ違う人がどういう反応をするか、確かめてみたい気持ちもあるのです。

 だから、今日は全ての事を入念に行う積もりです。まず、下着と洋服。多分、
法子さんの勝負用だと思われる、黒のレースをタップリと使ったTバックショ
ーツとブラのセット。お揃いのガーターベルトとシーム入りの黒のストッキン
グ。洋服はグレーの半袖ジャケットとミニスカートのスーツ、そしてシルクの
光沢のあるシルバーのタンクトップ。そして今までは使わなかったマニキュア
やアクセサリー類も、不自然にならないように選びました。喉仏はスカーフを
縛って隠す事にしました。

 下着を順番に身に着け、ガーターベルトでストッキングを吊り、最後にボデ
ィースーツでボディーラインを強調します。スカートやジャケットは後からで
も大丈夫なので、まずタンクトップだけ着てしまいます。そして、念入りに、
今までの練習の成果を集大成してメークに取りかかります。小一時間後、まぁ
まぁ自分でも満足出来るメークができました。スカートを穿き、ジャケットに
腕を通し、アクセサリーを着けて完成です。前髪を指で整えて鏡でもう一度全
身をチェックします。前、後ろ。OK。ショルダーバッグに部屋の鍵と何故だ
かハンカチだけ入れて、ヒールの低い黒のパンプスにストッキングの脚を滑り
込ませます。ドアのロックを外せば久し振りの外の空気です。
 
 

『パーティー(2)』

「私、少し酔っちゃったみたい...。」

目の焦点が定まらないような感じの絵梨子が最初に言った。実は私も同じよう
に感じていたのです。ナンシーが作ってくれたカクテルを2杯飲んだ辺りから、
体が火照って来て、フワフワとした感じがして、手足にも力が入らなくなって
来ていたんです。

「私も少し酔ってしまったみたい....。」
「ダイジョウブデスカ? スコシベッドヘイッテヨコニナリマスカ?」
「ううん、ライジョウブですよ...。」

変だ、舌が回らなくなってる!

「エンリョシナクテイイノデスヨ。」

ナンシーがキャロルに何か英語で言うと "OK" を返事をしてキャロルは軽々
と絵梨子の体を抱き上げ奥のベッドルームへ運んで行きました。絵梨子は小さ
な声で何か言おうとしましたが、言葉にならず、体からだらりと力無く下がっ
た腕がブラブラと揺れていました。

「本当にロウシタンレショウ?」

また、舌が回っていない。心配そうな顔のナンシーが私の隣に来て、額に手を
当てたりし始めました。

「クルシクナイデスカ? スコシタビノツカレガデタノデショウ。」
「そうかもヒレマヘン...。」
「ワタシノカタニヨリカカッテスコシネムリナサイ。」
「アイガホウ...。」

ナンシーに体ごと引き寄せられて彼女の方に頭を載せて目を閉じました。その
まま眠りの底に引き摺り込まれそうになっている時に、ナンシーの手が私の脚
を割って差し入れられるのに気付きました。反対の手は微妙に私の胸を触ろう
としています。

(レズ?!)

そう思いましたが、体に力が入りません。更にナンシーの触れる所から全身に
電流が流れるような痺れが走ります。私が抵抗出来ないのを知ると、ナンシー
の手は動きをどんどん大胆になって行きました。何とか抵抗しようとやっとの
思いで目を開き、弱々しくナンシーに向かって首を左右に振りましたが、ナン
シーは

「ナニモコワガラナクテイイノデス。ワタシニマカセナサイ。」

深い水色のナンシーの瞳に見詰められて、何故かそれ以上抵抗が出来なくなり
ました。私の心のどこかに旅先という油断が有ったのかも知れません。彼女の
手は私の着ているスリップドレスの肩ヒモを落とし、脱がせようとしていまし
た。腕に力が入らないのでどうしても抵抗する事が出来ません。ウエストまで
降ろされたドレスは体ごと持ち上げられてスルリとヒップを通り越して脱がさ
れてしまいました。ストラップを外したブラとパンティーだけになってしまい
ました。

(恥ずかしい)

と言おうとしましたが、言葉になりませんでした。ナンシーはソファーの背に
私のスリップドレスを掛けて床に跪くと、私も脚に舌を這わせて来ました。だ
んだんとナンシーの舌が上の方に上がって来て、ゆっくりと私の花心をパンテ
ィーの上から捉えました。

「ハァッ!」

思わず声が漏れました。全身を貫く快感の波に耐えるのがやっとでした。ナン
シーは何度私が声を漏らしても、花心からは離れませんでした。しばらくして
唇を離すと、今度は乳房に舌を進めました。ストラップを外しているので、ブ
ラは簡単に下げられ、露になった私の乳房・乳首にナンシーは舌を這わせまし
た。今まで経験した事も無い快感の波に翻弄され、私は失神しそうでした。

"NO、NO."
「マダマダ、コレカラデス。」
「コンドハノリコサンガワタシヲタノシマセテクレルバンデス。」

ナンシーはそう言うと、私の前に立ち、ウエストのファスナーを下ろしてロン
グスカートを脱ぎ始めました。良く張ったヒップを越えてストンとスカートが
落ちたとき、彼女の深紅のパンティーの中の隆々とした膨らみが見えました。

(エッ?! どうして?! 女じゃ無いの?!)

私の頭はかなり混乱していました。大きく見開かれた私の目を見て

「ビックリシマシタカ? ワタシタチワ"SHE-MALE"トヨバレテマス。」
(「私達?」って事はキャロルも?!)
「ソウデス、キャロルモワタシトオナジ"SHE-MALE"デス。」

私の考えていることが判るようにナンシーが答えました。

「ワタシタチワ、オトコモオンナモアイセマス。
 サア、コンドワ、ワタシモタノシマセテクダサイ。」

ゆっくりとナンシーは深紅のパンティーを下げるとテラテラと粘液で光ったペ
ニスを引き出しました。ゆっくりとソファーに上ると巨大なペニスを私の唇に
押し付けて来ました。深々とペニスを呑み込まされて、私は息苦しくなりまし
た。ナンシーはブラウスを脱ぎ捨て、両手で自分の豊満な胸を揉んでいました。
ペニス以外はどう見ても女性です。それもかなり魅力的な。私は頭が混乱して
考えられなくなっていました。ナンシーは片手で私の頭部を固定して腰を前後
に動かし始めました。息苦しくて、私はくぐもった呻き声を上げました。

「クルシイノデスカ? ゴメンナサイネ。」

ナンシーはそう言うと、ゆっくりとペニスを私の口から抜き取ると、

「ジャァ、フタリデフィニッシュネ!」
(なっ、フィニッシュって、何をするの?)

ゆっくりと私の体をソファーに横たえるとナンシーは私のパンティーを脱がせ
ました。

「ニホンノオトコワマダマダバージンニコダワリマスネ?
 ダカラノリコノバージンヲウバウヨウナコトワシマセン。」

私の両足を高く持ち上げると、ナンシーは私のアナルにペニスを宛てがいまし
た。恐くてナンシーを見ながら首を左右に振りると

「ダイジョウブ、ヤサシクシマス。」

最初はペニスの先でアナルの入り口や周囲を刺激して、それもまた私の体中に
電流を走らせました。すぐにナンシーは体を折って、再び私の乳房に舌を這わ
せました。二ヶ所から同時に刺激の波が拡がると、それは相乗効果となって私
の体の中を駆け巡りました。声も出せない程の快感が体中を満たしたときに、
ゆっくりとナンシーのペニスがアナルの中に侵入して来ました。最初、押し開
かれる時は痛みが走りましたが、それを超えると次第に痛みも感じ無くなりま
した。それを知っているようにナンシーは体を動かさず、バストへの愛撫を続
けています。バストから拡がる快感の波がアナルの痛さを超えたとき、再び私
の口からは歓喜の呻きが漏れていました。

「デワ、フィニッシュネ!」

それを待っていたかのようにナンシーは腰を前後に動かし始めました。ゆっく
りと、浅く、それは始まり、次第に速く、深くなって行きました。腸の内部を
擦られる感覚、Gスポットを裏側から刺激される快感の波に再び全身が支配さ
れた時、ナンシーの動きが止まり、私の腸内に熱い液体が放出されるのが判り
ました。全身の心地良い疲労感と満足感から、私はそのまま眠りに落ちてしま
いました。
 

(続く)