SMビデオ(後編)


「真由美!」
「う〜ん・・・」
「いつまで寝てる気だぁ?」

(うん?寝てしまったのか?)
目を覚ますと見知らぬ男が僕の顔を覗き込んでいた。
(誰だ?コイツは)
(それも僕の部屋に黙って入って来て)

全身に痛みが走った。手が動かなかった。
「ほらっ、立てよ!」

男は僕に手を差し伸べると強引に引っ張り上げたのだ。

「うぅっ」
首に痛みが走った。
「苦しいぃ〜」

いつのまにか首に何かが巻かれており、男はそれを引っ張り上げたのである。

「もたもたするんじゃねぇよ」

男の手を振り解こうにも両手の自由は利かず、僕は引き立てられるようにヨロ
ヨロと立ち上がった。
立ち上がっても僕の視線は男の胸の当たりであった。

(すごい大男か?)

「なにをキョトンとした顔をしてるんだ?真由美」
男が僕に言った。
(真由美?)

「・・・・そうか・・。アイツは開放されたのか」
「???」
大男は独り言のように呟いたのである。

「あはは・・わからないよな」
男は分厚い手で僕を押しやったのである。

「やめろ!」
僕は自分の発した声に困惑した。高く細い声だったのだ。

「ほら、ちゃんと見ろ」
男は目の前の鏡を示した。そこには男の姿が映し出されていた。そして、隣に
は先程見ていたビデオの主演女優である武藤真由美が居た。
僕は自分の声が女の声である理由を理解したが、もっと大きな困惑に襲われて
いた。鏡に映った武藤真由美の位置に立っているのは僕自身なのである。

(えっ?、なんなんだ?これは)
「・・・・」
「あはは、頭が混乱しているようだな」

(そうか・・・夢?)
「夢だと思っているんだろ?」
「・・・・」

「どうだこれで」
「痛っ」

大男が突然、僕の乳首を摘んだのである。荒縄から溢れるように飛び出した大
きなバストの先に僕の乳首はあった。そしてその乳首を男はグリグリと摘んで
いるのである。

「このバストは作り物でもなんでもないぞ!正真正銘オマエのモノだよ(笑)」

拒否しようにも両手は後手に縛られ自由にならないのだ。逃げようにも乳首を
強く摘まれ男から離れようとするとそれはより大きな苦痛を招くことになった。

「やめろ!」
僕は男が乳首から手を離すことに期待するしかなかった。

「どうだ?夢じゃないだろ?」
「あぁ、わかったから・・手を離せ!」
乳首を摘まれることがこんなに痛いとは思わなかった。

「離せ?・・・オマエ、自分の立場がわかっていないようだな」
そう言うと、男は乳首を摘む指に力を入れた。

「痛い・・・、何をするんだ」
「可愛い顔をして、その言葉使いは躾けが出来てないな」
「うっ」
一段と力が強まったのである。僕は腰をくねらせ痛みを堪えた。

「こういう状況では、離してください!・・・だろ?」
「離してください・・・」
「お願いします。・・は?」
「お願いします」

「まぁ、いいだろ」

やっと男が僕の乳首から手を離したのであるが、乳首の痛みは柔らかない。
ジンジンとした痛みは相変わらず続いていた。
僕は大男から後ずさりした。

「なにが起きたか知りたいか?」
「あぁ」
「また、その口のききかたか?オマエは敬語をしらねぇのか!」
「・・・・」

こんな奴に敬語なんてと思ったが、背に腹は変えられない。僕は素直に従った
のである。

「すみません。状況を教えてください」
「そうそう、その方が似合ってるぞ。笑」
「・・・・」
「オマエは真由美と入れ替わったんだよ」
「入れ替わった?」
「そう。精神が同調したんだな」
「なんで・・・」
「オマエ、ビデオを見てたんだろ?」
「あぁ・・いや、はい」
「笑、そして、あろうことか真由美の側になってオナニーをしただろ?」
「そんなぁ・・」
「隠すなよ。オマエはマゾなんだよ」
「なにかの間違いだ。早く戻してくれ!」
「また、そんな言葉を使うんだぁ?」

男はニタニタしながら近づいて来た。
「寄るな」
「やっぱり躾けが必要だな」

僕は部屋の中を見回し男の後ろにドアを発見した。そして男が僕を掴もうとし
た瞬間、横をすり抜けドアに向かって走ったのである。
後ろ手に縛られた身体は安定感はないが、なんとか捕まらずにドアまで辿り着
いたのである。振り返ると男は、煙草に火を付けているところであった。追っ
て来ないのだ。

「どうぞ。逃げられるなら・・・」
僕は後ろ手にやっとの思いでドアを開けたのである。開いたドアの向こうは壁
であった。

「飾りドア?」
「あはは」
「もとの世界に戻せ!」
僕は男に向かって訴えた。

「前の真由美は早く戻れたぜ。確か・・・二年位だったかな?」
「二年?早くて?・・・この姿のままか?」
「あぁ。毎日、マゾとしての調教を受けながらな」
「・・・・・・」
「ビデオを見てるヤツの想像していることを考えながら演じるんだよ」
「ピッタリ、そいつの想像と一致すれば、見てるヤツと入替わる事が出来る」
「そんなことが可能なわけないだろ」
「あの画面に見てるヤツが映るから、それで考えるんだな。笑」
「・・・・・・」
「オマエの演技が下手だと、お客はビデオを巻き戻してしまうからな」

「今のオマエじゃ。誰も最後まで見ないだろうな。笑、しっかり演技しろ」
「・・・・・・」
「どうなんだ?」

僕はまだ、悪い夢を見てるとしか思えなかった。しかし、手の痺れや乳首の痛
みは現実のものであるのだ。

その時、テレビ画面のノイズが現れたのである。

「ほう、珍しいな。女の客だ」
大男がつぶやいた。テレビの向こうでは女性がワインを片手にビデオをセット
しているところであった。

「そろそろ、準備してぇ。私が立役で真由美が猫だからね」
僕が振り返ると大男が消え、そこにはショートヘアーのキュートな女性が居た。



「真由美の責任じゃないわよ。そんなに悩まないで」
「でも・・・」
「男なんて自分勝手な生き物なんだから」

テレビのノイズ音が少し小さくなった。
「でも、私があの時、身体を彼に許していればこんな事にはならなかったわ」

僕は男に捨てられた役を演じていた。
「そうかな?」
「私、やっぱり謝って来る」

テレビのノイズ音が大きくなった。
(うん?この音は・・・)

「やめなさいよ。そんな卑屈なことを男にするの」
ノイズ音が少し小さくなった。
「でも、このままじゃ、私・・・忘れられないわ」
「ワインでも飲んで憂さ晴らししましょ」

僕が思ったことを相手の女性は言ったのである。
(これって、一人二役かぁ?)

「こんなワインしか無いけど、いいかな?」
「うん、ありがとう。久美」

久美は僕にワイングラスを手渡してくれた。
「はい、乾杯!」
「何に?」
「真由美の失恋に」
「あのねー」
「あはは・・」

しばらくの間、僕と久美はワインを飲みながら会話をしていた。
気がつくとノイズ音がしだいに大きくなっていたのである。

「久美は彼氏・・いないの?」
「あはは、告白しちゃおうかな。私、ビアンなんだ」
「えぇ!」
「びっくりしたでしょ?」
「そんなことないわよ。薄々、感じてたもの」
「本当に?」
「うん」

僕の中に熱いものが込み上げて来た。ノイズの音も殆ど聞こえてこない。

「じゃ、隣に座ってもいい?」
「えっ?えぇ」
向かい合って座っていた久美が僕の隣に来て座った。

「ずっと、真由美のこと・・気にかけてたのよ」
「・・・・・」

ワインの為か僕の心臓がドキドキしていた。女の身である真由美はアルコール
に弱いのかも知れなかった。

「本当よ」
「うん」
「真由美、私のことどう思う?」
「どうって?」
「好き?嫌い?」
「好きよ」

久美は僕の瞳を覗き込むように見詰めている。

「ワイン飲みましょう」
「うん」
久美はワインを口に含むと僕を引き寄せた。手にしたグラスに気を取られてい
ると久美の唇が僕の唇に重ねられたのである。

「うぅぐぅ」

重ねられた唇がとても柔らかく感じられた。その唇から冷たいワインが流し込
まれた。僕はそのワインを素直に飲み干したのである。

それでも、久美は僕の唇から離れようとはしなかった。柔らかい舌が歯を抉じ
開けるように進入してきたのである。

「うぅうう」
僕は目を閉じ、されるままになっていた。すると久美の手は着ていたセータの
中へと入ってくるではないか。そして、ブラのホックを外したのだ。

「駄目」
僕は久美の唇を外して小さな声で言った。
「どうして?」
「・・・・・」

ノイズの音が大きくなって来た。

「だって」
「嫌いなの?私のこと」

僕は首を横に振った。久美の唇が再び僕の唇を塞いだ。と同時のセータの中の
手は僕の膨らんだバストを愛撫しだしたのである。

ノイズ音が小さくなってきた。

初めて胸を揉まれることに戸惑いを感じていた。乳首が硬くなって来たような
気がする。それを察知したかのように久美の指がピンポイントで乳首に触れた
のである。

「あぁ」
思わず声が漏れた。
僕は久美の手を振り解こうと彼女の手を取った。すると久美は逆に僕の手を取
り身体の後ろに誘導し逆側の手で押さえ込んだのである。

「駄目!じっとしてなさい」
久美は僕にそう命令すると再び乳首を愛撫しだしたのである。

「うぅん〜」
乳首を愛撫される感覚が子宮へと伝染した。腰が動いてしまう。
「どう?気持ちいい?」

僕は素直に頷いていた。
それを確認した久美は僕のセータを巻く仕上げ、バストを露わにすると自分の
唇を近づけ、ペロペロと音を立てて舐め出したのである。

「あぁ・・駄目」
「なにが駄目なの?」
「意地悪ぅ」

突然、久美が僕の乳首を噛んだ。
「あぁ、痛い」
後ろに回された手は軽く押えられているだけなので振り解くことも出来たが、
僕は無理やり苛められてる設定を壊そうとはしなかった。

再び、久美は僕の乳首を噛んだ。

「あうっ・・」
僕が声を出すと久美は優しく舐め始めたのである。薄れて行く痛みが心地よか
った。

「どれどれ・・」
「えっ?」
いつのまにか久美の手は僕の股間に侵入していたのである。そこには男性だっ
たらあるべきものは無かった。

「駄目ぇ」
「静かにしなさい。ちゃんと感じてるか確認してあげるんだから」
そう言いながら、久美の指は僕の柔らかい割れ目を掻き分け進入していた。
秘部が開かれる感触が伝わって来た。当然であるが、こんな感覚は初めての事
であった。

「うん、しっかり感じてるわよ」
久美が耳元で囁く。
「意地悪・・」

突然、身体を軽い電流が流れた気がした。久美が僕のクリトリスに触れたので
ある。
「あぁぁ」
「ここ、感じるの?」
再び、久美はクリトリスに触れた。
「あっ」
先程ではないが、再び全身を快感が包んだのである。

「どうなの?」
僕は小さく頷いた。
「はっきり言いなさい」
「・・・・・感じる・・」
「彼氏とどっちが上手?」
「意地悪っ」

僕は久美の愛撫に身を任せて女のしての快感に浸っていた。すると、ノイズ音
が急に大きくなりだしたのである。

「ちょと待ってね」
久美は突然、僕の身体から離れてしまった。僕には久美がなにをしに行ったの
かわかっていた。大きなバイブレータを取りに行ったのである。

巨大なバイブレータが目の前に現れた。
「これ、彼氏のより大きいでしょ?笑」
「うん」
「これからはコレが真由美の彼氏だからね」
「・・・・」
「返事は?」
「・・・・はい」
「じゃ、しっかり感じなさい!」

そう言うと久美はバイブレータを僕の女性自身に近づけて来た。初めての体験
に僕は恐怖心を覚えた。
しかし・・・
ノイズ音は大きなままである。それどころか、以前より少し大きくなったよう
な気もするのだ。

下腹部に進入したものが、うねっている。根元に付いている小さな突起は僕の
感じる部分を刺激し続ける。

「あぁぁ・・・」
刺激とうねりが波のように全身を包んで離さなかった。久美は僕の声を確かめ
るようにバイブを抜いたり入れたり繰り返すのである。

「あぁっ・・・」
甘い感覚の波に合わせて気がス〜ット抜けるような状態が襲ってくる。
「うぅうっ・・」
そう思うと奥まで突き上げるような圧迫感が押し寄せる。自分の思う通りにな
らない感覚に気が変になりそうであった。

「おねがい・・・」
久美は僕の淫らな醜態を見て喜んでいるのである。
「なに?」
「変になりそう・・・」
「どうしてほしいの?」
「もっと・・・」
「もっと?」
「行かせて・・」

僕はすっかり、女としての快感に翻弄されていたのである。
突然、挿入されているものが下腹部から消えてしまったのである。
「えっ?」

「今日はここまでね」
「そんな〜」

僕は満たされない感覚に、心底から恨めしく思っていた。

「ほら」

久美はテレビの画面を指差したのである。そこには、ビデオのスイッチを切ろ
うとしている女の子が映し出されていたのであった。

「刺激が足りなかったようだな」
「そんな〜。僕はいっぱい・・・」
「いっぱい?なんだ?」
「・・・・」

久美の身体は、初めに逢った大男の身体に変わっていた。股間にはバイブレー
タのモノより多いなペニスがぶら下がっていたのである。

「それじゃ、フェラチオから練習しておこうか。笑」

今の僕には、男の言うことが受け入れられるような気がした。