性奴隷・ユキ(6)(模作・SAYさん)


それからは、毎日ヘルスで働きながら、ときどき出張でSM客の相手をして、
夜、アパートに帰ってお風呂から上がった後、彼と電話でその日にあったこと
を報告しあう、そんな、私にとっては、すごく落ち着ける日々を与えられた。

ある日、私は、壁にちょこっと貼ってあった、インドの神様の絵を見て、神様
に感謝した。ヨガの先生からほんの少しだけ借りて、コンビニでカラーコピー
した、あの両性具有で、性の快楽を司る、おかしな神様の絵でした。

・・・でも、やっぱり今回も、そんな平穏な日ばかりが、そのまま続くこと
はなかった。

「さいきん、ますます美しくなってきたじゃないの、ユキ」
優子は反対にした椅子に座って頬杖をつきながら、全裸で切なそうに喘いで
いる私を眺めて言った。
「ぁ・・ぁぁ・・・もう許して・・・ぁぁぁ・・・」

優子に携帯で呼び出された私は、目黒にある指定されたマンションの一室に
向かいました。部屋に入ると、優子ともう一人中年の男がいた。優子にいき
なり、「裸になりなさい、ユキ」と命令された。渋々、服と下着を脱いで全裸
になり、着ていたものを畳んで手を差し出した男に渡した。それから男にバス
ルームに連れていかれ、浣腸された。六本も浣腸され、アナルに栓をされて
しまい、我慢させられながら、犬のように四つん這いにさせられて、男のペニ
スを咥えフェラチオをさせられた。私がおなかが痛くて我慢できないと言う
と、男に皮のムチで背中を激しく叩かれて、私は悲鳴をあげて転げまわった。
何度も何度もムチで叩かれ、「私が射精するまでダメだ」と言われ、また犬に
された。私は泣きながら必死にフェラチオを続けた。

「この頃、甘えてるんじゃない?ユキ」
入口に立って、腕組みをして壁にもたれていた優子に言われた。

私はおなかの痛みをこらえながら、懸命に男のペニスを舐めてしゃぶった。
優子に言われたショックで大粒の涙がボロボロこぼれた。鼻水をすすった。
男はなかなかイッテくれなかった。もう、ダメだと諦めかけたころ、やっと射
精してくれた。「手を使わず、舌でちゃんとキレイにしろ」、と命令され、四
つん這いの犬の格好で、首を伸ばしペニスを舐めた。「もっと舌を出せ」と
言われ、舌を一杯につき出してペニスを舐め精液をすくい取って飲みつづけ、
必死にきれいにした。

「ようし、もうしばらく我慢しろ」
射精が終わっても男に非情に言われた。

「う・・う・・・ああ・・お腹が・・・ああ・・・お願い許して・・
・・ください」
「ダメだ、もっと奴隷らしくなるまで許してやらん」

「あ・・・ああ・・・うんっ・・ん・・・・」
「力を入れても無駄だ、力みすぎると肛門が裂けちまうぞ」
男に言われて力を抜くと、一瞬、頭の中が真っ白になって失神しそうに
なった。

「痛い・・・おなかが・・痛い・・・も・・もう無理です・・・出させて・・
・・出させてください・・・お願い」
30分ぐらいもたっただろうか、もう長い時間、ユキは、全裸のまま四つん這
いの姿勢を強制され、我慢させられていた。おなかの痛みをこらえ、汗まみれ
になった肢体が小刻みに震えていた。

「『ユキは、ご主人様に浣腸されてとっても嬉しい』って言いなさい」
優子の厳しい声が飛んだ。
「ユキは・・・ユキは・・ご主人様に浣腸されて・・とっても嬉しい・・・」

「『ユキは、お尻に入れられるのが大好きなアナル奴隷です』は?」
「・・ユキは・・お尻に入れられるのが・・大好きな・・・アナル奴隷
です・・・ああん・・・」
惨めにされた自分に、感じてしまった。ユキは心の中でハッとした。背中に
たまった汗がダラッと流れ落ちた。

思ってみれば、10代の最後の頃、最初に誘拐されてから、私はずっとマゾに
調教されてきた。地方出身の何も知らない素朴で無地だった私は、その道の
スゴ腕のプロたちに仕込まれて、とっくに骨の髄までマゾのシーメールに変え
られてしまっている。被虐の欲望を言わされて、感じている。

「『ご主人様、ユキをもっと調教して、いやらしいメス犬にしてください』
は?」
「あぁぁ・・・ご主人様・・・ユキをもっと・・・調教して・・いやらしい
メス犬にしてください・・・」
言わされて、胸の内にいやらしい期待感がこみ上げてきて、興奮させられ
てしまった。
(私はやっぱりマゾだ。虐められると燃えてアナルに欲しくされる真性の
マゾだ)
悔しかったけど、奴隷の誓いを言わされて、興奮して熱くされる体に、私は
受け入れるしかなかった。あまりの非道な宿命に、目に涙が溢れ流れた。

「やっと素直になったわね」
優子がそう言ってから男に合図した。
男がアナル栓を抜いた。

「アァァーー!」
抜かれたとたん、激しく液体が噴き出した。私は突然の開放感に背筋がシビ
れるほどの快感を感じた。目を閉じ手をギュッと握って、全身を包む震える
ほどの快感に耐えた。四つん這いでいられなくなり、ガクッと肩からタイル
の床に崩れ落ちて、うずくまった。溜まっていた浣腸液がかなりの時間、
ときおり茶色い固形物を押し出しながら、お尻から流れ出つづけた。

「出して感じたな、おまえ」
男はシャワーで流して、私のお尻をタオルで拭きながら言った。
「はい、とっても・・・ユキに浣腸してくれて・・・ありがとうございます」
また奴隷に調教されてしまった。口から素直に言葉が出た。

それから、私は、全裸のまま、マンションの奥の部屋に連れていかれた。奥の
部屋は、窓が厚いカーテンで塞がれていて、天井の照明の明りだけが照らして
いた。床はカーペットの上に黒いビニールのシートで一面覆われていて、壁に
つけられた網状の棚に、いろんなSMに使うたくさんの道具が、フックでぶら
下がっていた。
(ここって・・・ふつうに人が住んでいる部屋じゃない・・・)
どうやら、そのマンションの一室は、会員制の秘密SMクラブらしかった。
部屋の真ん中には、床についた八本の太い脚に、それぞれロープが巻きつい
た、細長いテーブルのような長方形のガッシリとした低い拘束台が用意されて
いて、私は男に手を引っぱられ、その上に上がらされた。膝をついて座ると、
背中を押され前のめりにされて、思わず前に手をついた。両足の足首と膝を、
台の脚から伸びたロープで縛られた。つぎに両手首と肘を台の前方に縛りつけ
られ、拘束台の上で私は、四つん這いでうずくまり、膝と肘をついてお尻を
高く突き出した格好に固定されてしまった。アナルが丸見えになり、私が恥ず
かしくて悶えていると、男にアナルにローションを垂らされた。

「あぁん・・・ご主人様・・そこは・・・あぁ・・ぁぁ・・・」
私は切なそうな声をあげた。

「まだ固いな、もっとゆるくしないと怪我をする」
アナルを触っている男の冷静な声がした。男の手がローションのついたアナル
を揉みはじめると、体から力が抜けてしまい、目の前の台の表面に、ヒジをつ
いた形で縛られた両腕に頭をあずけ、アナルをいじられる快感に酔いしれて
しまった。

「あぁぁ・・・ご主人様・・・ユキのお尻を・・・もっといじめて・・・あぁ」
男に、私の一番いやらしい部分をマッサージされつづけた。私はずっと切な
そうにアエぎ、男にもう一方の手で、乳房を揉まれたり、乳首をいじられたり
され、体を熱くされた。

肛門を柔らかくほぐし終わると、男がいった。
「どうして欲しいのか、ちゃんと口に出して言ってみろ」
私はすでたまらなくなっていた。はっきりと口に出してねだった。
「・・・はい、ご主人様・・ください・・ユキのお尻に・・入れて・・
・・ぁ・・ぁぁ・・・」

ガチャ!
(え!・・・な、なに?)
とつぜん、手足を縛られて動けない私の頭にヘッドホンがかけられた。耳に
スピーカーの部分をしっかり当てられ、男がそばに置かれたステレオのス
イッチを押すと、頭の中に、誰かの口笛で聞き覚えのないメロディを吹く音が
流れた。独特の旋律が妙に耳に残った。

同じ旋律を繰り返し口ずさむ口笛が、私の頭の中一杯に響いた。

「これでよし、この曲をしっかり覚えるんだ」
男は、私が意味が分からずチョトンとした顔をしているのを無視して、今度は
変わった形をしたバイブを取りだすと、構わず私のアナルに突っ込んだ。
「アアァ!アァン!」
いきなり入れられて、私は感じてたまらずに声をあげた。

男は冷たい笑いを浮かべながら言った。
「あらためて奴隷の誓いを立てたご褒美だ。たっぷり味わいな」
男がバイブのスイッチを入れた・・・。


「さいきん、ますます美しくなってきたじゃないの、ユキ」
優子は反対にした椅子に座って頬杖をつきながら、全裸で切なそうに喘いで
いる私を眺めて言った。
「ぁ・・ぁぁ・・・もう許してぇ・・・ぁぁぁ・・・」

「たっぷり掘られるほど、身も心も女にされてキレイになるんですよ」
背後でバイブを操る男の声がした。

男は、いくつかに分かれて突き出た部分が、前立腺付近の性感帯に狡猾に刺激
を与える、男性のアナル専用の特殊なバイブを、入れたり抜いたりしていた。
拘束台の上に、四つん這いにされ膝と肘をつき尻を高く突き出した格好に縛り
つけられたユキは、背後から丸見えにされたアナルをずっと犯されていた。
体中が汗で汚れていた。もう何時間も犯されつづけ、数え切れないほど何回も
イカされていた。ユキの頭の中ではずっと、繰り返される口笛が響いていて、
独特の旋律が脳裏に焼きついてしまっていた。あまりにも長い時間の快楽地獄
の責めに、すでにユキの頭はおかしくなってしまっていて、口がだらしなく
開いて、よだれが頬にいくつも筋をつくり、目もうつろな状態になっていた。

「・・・あああ!また!・・・あああ・・・いやぁ・・イ!・・イクッ!・・
・・イクゥゥ!!」
体が硬直し、ビクンビクンと震えた。また、イッタ。また恍惚を味わわされ
て、余韻に浸りかけると、急にバイブを操る男の手の動きが速くなった。
一度、絶頂を迎えたばかりのユキは、ふたたびまたたくまに追いこまれた。
「アアア!・・・あああああ・・・アア!・・・アァァァー!・・
・・ああ・・・ああ・・・」
ユキの声はすでにだいぶ前から、イカされるたびに絶叫とも悲鳴ともつかない
ほとばしりとなっていた。体がガクガクと震えて波打った。

リピートで繰り返される口笛の音色が響き渡るユキの頭は、朦朧としてし
まって、何も考えることさえ出来なくなっていた。

「あともうすこし狂わせれば、しっかり仕込めるでしょう」
口笛の音に混じって、朦朧としたユキの頭に男の声が響いた。

「てっとり早く麻薬を使わずに、手間をかけて調教してるんだから、まったく
感謝してほしいわよね、ユキには」
優子の声が響いた。

「フッフ、優子さんもかわいいと思ってるんでしょう? このオカマ女の
ことを」

「何を言ってるのよ、こんな・・・オトコオンナの気色の悪いシーメール
なんて・・・誰が」

「フッフッフ、それなら・・・いつ、こいつのチンチンを切り取る気なんで
すか? アネさん」

「・・・それは、ユキが決めることよ、それがこの子に残された、最後の
唯一の選択の自由よ」

「フッ、甘いですなぁ、やっぱり、アネさんは、このユキって子が気に入っ
てると見える」

「お黙り!それ以上クダラナイことを言うと、許さないわよ!」

ユキはそこで、とうとう完全に失神してしまった。男がユキの頬を叩いても、
意識はもどらなかった。かすかに、ユキの頭の中に、ボンヤリと、どこか遠く
から優子の怒鳴る声が聞こえた・・・・。

「ユキ!どうしたの!しっかりしなさい! ユキ!こら!なんとか
いいなさい! ユキィ!!」

気がつくと、ヘルスの空いた部屋に寝かされていた。琴美さんが心配そうに
覗きこんでいた。話によると、目黒のマンションで気絶したうえに前後不覚に
なった私は、優子に電話で呼ばれた花ちゃんに、車で迎えに来てもらって、
ヘルスまで運ばれたらしい。

「優子さんという人が、今回はすこしやりすぎたから、謝っておいてくれっ
て、花山さんに言ったそうよ」
琴美さんに抱き起こされて、頭痛薬とコップの水を飲ませてもらいながら、
言われた。
「そ・・そうなんだ・・・」
私はまだどんよりしていて、言われたことをそのまま受け取るしかなかった。
何も思い浮かばなかった。
「今日は家までワタシが送っていくからさ」
少し男っぽい口調になって、琴美さんが言ってくれた。

帰り際、花ちゃんが慌てたように走ってきた。
「ユキちゃん、明日休んでいいよ、お店からの有休にしとくから、ゆっくり
休んで、体力とりもどしてよ」
私は、フラつきながら迎えに来てもらったお礼を言った。
「優子さんもすまないって言ってたよ、お店にとっても大損害だし、私からも
徹底的に攻撃しておいたからさ」

(花ちゃん・・・それって、攻撃じゃなくって、抗議じゃ・・・)
まだフラフラする体を、着替えて皮ジャンを着た男姿に変身した琴美さんに
支えられて、アパートに帰り着いた。

私がお風呂に入っている間に、琴美さんがおいしいとき卵の入ったおかゆを
作ってくれた。フーフーしながら食べた。食べ終わった後、「もう寝なさい」
と言われてベッドに上がると、琴美さんがいきなり服を脱ぎだし、全裸に
なってベッドに入ってきて、私を抱いて添い寝してくれた。

「あったかい?」
「うん・・・すごくあったかい」
ちょっとビックリしたけど、なんだか楽しかった。長身の琴美さんの体は、
ベッドから少しはみ出ていたけれど、私は整形でできた琴美さんのグラマー
な胸に顔をうずめ、いつのまにかスヤスヤ寝てしまった。

その夜、私は夢を見た。どこかの暗い怖い場所を、私は一人で歩いていた、
地面は粘つくネバネバしたもので一面覆われていて、足をとられて、何度も
転びかけた。怖くて必死にその場から出ようと急ぐけど、どこまでいっても
終わりがなかった。とうとう、夢の中で、私は転んでしまった。体がヌルヌル
した液体にまみれ、地面のネバネバしたものがくっついて、引っぱられて立ち
あがれなくなった。怖くて必死にもがいていると、突然、私の周囲の地面の下
から、気味の悪い触手のような生き物が何本もグニャグニャ出てきた。触手が
どんどん伸びて体に巻きついてきて、ヌルヌルした液体にまみれた私の肢体は
がんじがらめにされてしまった。無数の触手の一本がアナルに触れたと思った
瞬間、それが肛門をむりやり押し分け、体の奥深くまでズボズボと強引に入り
込んできた。私は絶叫した。「イヤァー!」、張り裂けるような叫びも虚し
く、体の中をアッという間に貫いて、触手が口から飛び出し、私は狂いそうに
なった。

「どうしたの?ユキちゃん?」
「ハァハァハァ・・・」
気がつくと、隣りに寝ていた琴美さんが驚いた顔をして見ていた。寝ていた私
がうなされ出して、突然悲鳴をあげたらしかった。
「ハァ・・・ハァ・・・ごめんなさい・・・あたし・・・怖い夢を見ていた
みたい・・・」
すこし待って、琴美さんが何も言わず手を伸ばして、私を強く抱きしめて
くれた。

「イヤなことは・・・・寝ちゃって早く忘れるの・・
・・それがいちばんよ・・・」
「・・・うん・・・」
私は、子供みたいに琴美さんの体にしがみついて泣いた。流れ出した涙がとま
らなかった。
「ありがとう・・・ありがとう・・琴美さん・・・」
イヤな怖いものをはやく忘れたかった。誰かにすがりついていないと気が狂っ
てしまいそうな気がした。琴美さんは、私が泣き止むまでずっと抱いて頭を撫
でてくれた。そのうち、私は泣き疲れて、ふたたび眠りに落ちた。こんどは、
怖い夢を見なかった。


次の日、起きると琴美さんが、台所で朝食をつくっていた。ほかほかのご飯、
塩味の効いた焼き魚、黄味のとろけた目玉焼き、キャベツとニンジンの千切り
と、レタスとカイワレ大根の入ったサラダ、コリコリしたお漬物、納豆、味付
海苔・・・。本格的なのでビックリした。しかも、おいしかった。おなかの空
いていた私はパクついた。
「どう?おいしい?」
「うん、すごくおいしい、お料理とっても上手なんだね、琴美さん」
琴美さんは目を細めてクスッと笑った。私は、モリモリ食べながら、男の人と
長くつづくには、料理もうまくないとダメなんだろうなぁと、そんなに努力し
ていた琴美さんに、内心ものすごい尊敬を感じた。それと・・・少し、焦りと
嫉妬も感じた。

ヘルスの営業がはじまる前の、昼過ぎまで、琴美さんはアパートにいてくれ
て、一緒にテレビを見た。琴美さんはテレビが好きらしく、ニュースのアナ
ウンサーを一人一人面白く批評して、ドラマにはストーリーの展開や主人公
たちの行動にいちいちツッコミを入れた。琴美さんのコメントは面白くて、私
はずっと笑ってしまった。帰る前に、余ったご飯と海苔と漬物とお塩をつかっ
て、パッパッと手早くおにぎりをつくって、お皿に盛ってラップをキチンとか
けて、「おなか空いたら食べてね」、と言って、残してくれた。

彼の携帯に電話したけど、圏外だった。私は昨日からずっと、アナルの中が
ただれたような嫌な感じがしていたので、いつもの病院に電話をかけて、診て
もらうことにした。

医者は、産婦人科で使うような、仰向けになって足を開いて台にのせる特殊な
椅子に座った私のアナルを、漏斗のような銀色の医療器具で診てくれた。後で
聞いたら、その器具は直腸クスコというものだと言われた。医者の指が肛門に
触れただけで、背筋に異様な感覚が走って、私は顔をそむけ、声が出そうにな
るのを、目と口をギュッと閉じてこらえ、浮きそうになる腰を必死に踏ん張っ
て押さえつけた。

「別にアエギたいなら、声を出してもかまわんよ、私と看護婦さん以外、今は
誰もおらんから」
医者に平然とした顔でズバリ言われて、私は顔が赤くなるのを感じた。慌てて
両手で顔を隠した。
「恥ずかしい・・です・・・そんなの・・・」
私が言うと、医者は少し鼻を鳴らし、目をこすって何もなかったように診察を
続けた。
「さんざん診られとるのに、いまさら恥ずかしいことなんかないだろうが」

そのお医者さんとは、最初に睾丸を切除された手術から、出会ってもう二年
ちかくのおつきあいで、すっかり顔なじみでした。今でも定期的に、女性ホル
モンの注射と、お仕事柄、危ない性病に感染してしまう危険が高いので、性病
の検査と予防もしてもらっている。いってみれば、性のオモチャにされた
シーメールの私の主治医でした。見た目は冴えない年配のおじさんですけど、
整形手術の腕は性風俗業界でも有名らしく、私の体もすべてこのお医者さん
に手術されて、美しい女に作りかえられた。

潤滑剤を塗ったアナルに、くちばしのような器具を押し込むと、それが中で
開き、肛門をググッと大きくされた。
「ん・・・んん・・・」
私は出そうになる声をこらえつづけた。
「う〜む・・・・直腸の内壁がかなり荒れて炎症を起こしとるな、少し肛門で
ズッコンバッコンやりすぎだよ、あんた」
そう率直に言われて、私はなんだかおかしくて、プッと吹き出してしまった。
医者もツラレて笑った。

そのあと、医者が白い小さなお鉢でグルグルかき回して調合した、軟膏のよう
な薬を、銀色の棒の先っぽの綿につけて、アナルの中に塗られた。私は顔を
そむけて、目と口をギュッと閉じて我慢したけど、途中で思わず鼻から、
「フゥン、フゥ〜ン」と甘く切なげな声を一、二度漏らしてしまって、医者に
クスクス笑われた。唇を噛んで恥ずかしさに耐えた。内心ムッとした。
(しょーがないでしょぉ・・・感じるんだから・・・もともと誰のせいよ・・
・・もう・・・)
クスコで開かされたアナルに棒を何回も突っ込まれて、薬をたっぷり直腸に
塗られた。私は歯を食いしばって頑張ったけど、途中何度か鼻から切ない声を
漏らしてしまった。医者は三度目からは無視してくれた。薬のおかげで、ただ
れてかゆくなっていたアナルの中が熱くなったけど、すぐかゆみが止まった。
「もういいよ」
と言われて、やっと椅子から降りた。目を開けてみると、私の全身の白い肌
が、すっかりピンク色に上気していた。見られていたと思うと、たまらなく
恥ずかしかった。医者の顔を見れなくて、壁を向いてモジモジしながら、急い
でパンティーとストッキングを履き、スカートを身につけた。

机でカルテに書き込んでいた医者がいった。
「あんた、そろそろ前も切らんのかね? 立派なヴァギナをこさえてやるぞ」
私は内心ドキッとしてしまった。ちょっと落ち着かせてから、冷静を装って
聞きかえした。
「整形で本当に、本物の女の人みたいになれるんですかぁ?」
「もちろん」
医者は自信たっぷりに答えた。医者の説明によると、男性の性器を切り取ると
いっても、すべてをとってしまうわけではなく、ペニスの残った部分をつかっ
て、体の中に埋めこみ、女性器とよく似たようにかたちづくって、下腹部に
新しい器官をつくるのだそうだ。(それって、スゴ・・・)。医者が言うに
は、ペニスにもともとあった快感を感じる神経はそのまま残るので、生まれ
つきの女性と同じぐらい快感を感じれると言う。私は聞いてて、正直内心、
「いいな、それ・・・」と思ったけど、口には出さなかった。座薬と飲み薬を
もらって、一週間は、誰とも肛門でズコズコ性交なんかしちゃイカン、と言わ
れ、(だから・・・そんなにハッキリ言わないでよ・・・もう・・・)、お店
に渡しなさいと、親切にタダで診断書を書いてくれて渡された。そっか、
どうせ優子たちが払ってくれるんだろうな。

病院を出て、すぐにお店に電話して事情を話した。
「いいよ、一週間ゆっくり休んで休養しなよ、その分、優子さんに多少弁償
してもらうからさ、あの人の責任なんだから」
花ちゃんが携帯の向こうから言った。私は大ごとになりそうでちょっと心配
になった。(しかも・・・花ちゃんだし・・・)。でも、どうせ優子を怒ら
せても、後で、私がいつものように、ひどい目にあえば済んじゃうことか、
とも思った。グスン・・・。

「あんまりやり過ぎて、優子さんを逆上させたりしないでね、私は慣れてる
からいいけど、花ちゃんにも迷惑かかるといけないから」
とだけ言った。それに、こんなことになってしまって、お店に迷惑をかけた
私の不注意を詫びた。

「SMは、いき過ぎると危ないからな、大怪我や命に別状がなくてホントに
よかった、今回は、ユキちゃんはぜんぜん悪くないよ」
花ちゃんに最後に、「琴美ちゃんがまた見舞いに行くらしいよ」、と言われ
て、携帯を切った。

昼過ぎに、彼の携帯の番号に留守電を入れておいたおかげで、そのあと、心配
そうな声で電話がかかってきた。

「だいじょうぶか? 今から行こうか? 〆切り前だから、長くは一緒にいられ
ないけど」
落ち着いて起きた事を話した後、彼が言ってくれた。私は迷惑をかけて彼に
嫌われたくなくて、慌てて断わった。編集部にいるらしい彼の背後に、あわ
ただしい人声や物音が響いていたことも、理由の一つだった。
(「これ回して!急いで!」とか、「おい!まだかあ!」とか・・
・・スゴそ・・・)

「うううん、お店の友達も来てくれるから、心配しないで、もう大丈夫だ
から、すっかり・・・話せたし」
出来るだけ早いうちに顔を見せると彼に言われて、携帯にキスして切った。
最後に「愛してる」とか「好き」とかは、いつも言えなかった。ある日突然、
彼に気持ち悪がられるのが怖かったから。そのかわりに、いつも携帯にキス
していた。

彼は、刺して血を出したり、スカトロで汚物をまき散らしたりといったハード
系のSMには、嫌悪感を感じているようだった。と言いつつ、彼のセックスも
サディスティックでSMっぽいけど。でも、彼の場合は、洗練されたソフト
SMで、痛いことや傷がつくことは一切しないで、精神的にちょこちょこっと
いじめてくれて、マゾの私を興奮させて感じさせてくれるから、嫌だなんて
ことはなくて、むしろ頭を深々〜と下げて、「ごちそうさまでした!」と言い
たくなるような気すらした。(・・・・って、おっ、コレって、もしかして
おノロケ?)。

ひさしぶりの、暇な平日。私は人通りの少ない平日の午後の街をブラついて、
通りかかった、初めて入る平日しか開いてない小さなブティックで、東南
アジア風の手染めのドレスと変わった形のネックレスを買ったりしつつ、
の〜んびり、アパートまで帰った。

夕方、テレビをみながら、買ってきた蒸しケーキをパクついていたら、突然、
ドアがコン!コン!とノックされた。あれ?琴美さんかな?それとも、NHK
の集金?もしや、宗教の勧誘かいな?と思いつつドアのところまで行って、
「はーい、どなたでーすかー?」と声をかけた。返ってきた声を聞いて、私は
石になった。優子の声だった・・・。