1856年,イギリスの化学者パーキン(W.H.Perkin)がマラリアの特効薬キニーネ(キニン)を合成しようとして偶然できた世界最初の合成染料がモーベイン(mauveineまたはmauve)である。紫色で分類上は塩基性染料にあたり,工業化されて絹の染色に用いられ大ブームを引き起こしたが,堅牢性が低くすぐに利用されなくなった。この後多くの合成染料が発明・生産され,現在に至っている。
キニーネは南米のキナノキの樹皮から得られる白い結晶で,マラリアに感染した細胞に吸収されてDNAに結びつき,その複製を妨害すると考えられている。またお酒のトニックウォーターやそれをジンで割ったジントニックの苦み成分としても知られている。
なお,染料と薬品は構造上近いものも少なくなく,古くから天然色素の原料の多くは薬にも使われてきている(ムラサキやキハダなど)。