Chem3D(ver.4.0,CambridgeSoft社)では分子力学法のMM2による計算も可能であるが,ここでは主に半経験的分子軌道法プログラムMOPACのAM1またはPM3計算について述べる。なお,計算する分子の原子数が多い場合はMM2計算をしてからMOPAC計算すると時間を短縮することができる。
分子軌道法計算によって得られる有益な情報には以下のようなものがある。
以下はこの中の双極子モーメントを構造最適化と同時に求める方法である。
●計算例1 PM3計算による構造最適化と生成熱・双極子モーメントの計算
【計算結果例】
※他サイトの参考Chime分子
●計算例2 LUMO・HOMOエネルギー計算と軌道の可視化
図3 2-ナフトールのHOMOの例
図4 2-ナフトールのLUMOの例
フロンティア軌道理論では,ある分子内で求電子反応,求核反応,ラジカル反応が起こる位置を,次のように予想します.
●計算例3 WinMOPAC/MOS-Fによる励起エネルギー計算
分子モデル
背景・黒 灰 白 紺
背景・黒 灰 白 紺
生成熱 / kcal mol-1 PM3
-4.36065
-4.68730
AM1
-3.47033
-3.93693
双極子モーメント / debye PM3
1.369
0.872
AM1
1.460
0.987
◆杉野圭司,「パソコン分子設計 応用編」,p.73,サイエンスハウス(2000) より
(a) 求核的攻撃を受けやすいのは,基底状態のLUMOの電子密度が最大の位置.
(b) 求電子的攻撃を受けやすいのは,基底状態のHOMOの電子密度が最大の位置.
(a) ラジカル的攻撃を受けやすいのは,HOMOとLUMOに電子が1個ずつ入ったときの電子密度の和(すなわち,SOMOの電子密度)が最大の位置.
※参考:Chem3D Version 10.0(2006年購入)によるall-trans-ビタミンAのHOMOとLUMOの表示