今月引用した解説は20世紀最後の年に,この100年間の有機合成化学の進展を振り返ったものです。
『合成標的:2次元構造から3次元構造へ』,『有機合成反応:多彩な元素の利用』,『高分子,超分子へ』,『日本の有機合成化学』という項目立てで,各時代の代表的標的化合物や理論・周辺技術,ノーベル賞などをまとめた年表も付して時代の流れが概観できるようになっています。
代表的化合物として構造式が示されているのはインジゴ(工業的製法は1890年)からタキソール(1994年)までで,そのほぼ中間点に当たるのが以下に示すストリキニーネ(ストリキニン)で,1954年に合成されました。天然には“まちんしアルカロイド”の一つとして知られる猛毒物質で,フジウツギ科の植物マチンStrychnos nux‐vomica に含まれています。約50年も前にその複雑な立体構造が解明されて合成もなされていたことに改めて驚かされます。
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