新しい学習指導要領の中でも「総合的な学習の学習の時間」が注目されており,化学分野でも実験を取り入れた様々な試みが実践されています。
今回取り上げた実験プログラムは,上記論文筆者らの大学のある徳島に関係の深い藍染めで用いられるスクモ中の天然色素であるインジゴに注目した実践です。スクモからインジゴを単離・同定した後,構造決定や染色実験に発展させており,NMR・IR・UVといった機器分析も取り入れた内容となっています。
なお,インジゴはジーンズの染色にも用いられ,染料の分類上は建染染料(バット染料)に属し,C.I.Nameは C.I.Vat Blue 1 です。
《建染染料についての本ページ作者の補足》 建染染料は水に不(難)溶で,そのままでは染色しにくいが,分子構造中に特有のカルボニル基を,アルカリ性でハイドロサルファイト等の還元剤で還元する(これを「建てる」という)と水溶性となる(これをロイコ〔Leuco〕化合物という)。この中に繊維を浸して染めた後,空気酸化し,元の染料として発色させる。日光,水洗,洗濯,酸,アルカリに極めて堅ろうで色調も美しく,高級染料として特に木綿に用いる。構造的にはインジゴ系とアントラキノン系の2つに大別される。中でも選択された堅ろう品種はインダンスレン染料またはスレン染料として多用される。
なお,藍の中のインジゴは配糖体インジカンとして存在する。古来から行われている藍染めはスクモを作って発酵させるなど複雑な工程を必要としており,化学的にも興味深い。発酵還元で得られるロイコ化合物の白藍(しろあい;インジゴホワイト)は上図左の-ONaの部分が-OHとなったものをさす場合もあり(下左の分子モデル),これをアルカリ性溶液に溶かしたわけであるが,現在はアルカリ性ハイドロサルファイトで還元するしている。インジゴは1880年にBayerによって合成され,現在は合成インジゴが主流になっている。
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インジゴホワイト(ロイコ化合物;アルカリ水溶液に可溶) |
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