生物の世界の化合物の多くに，分子の“右手”・“左手”という鏡像体の一方だけが存在していることはよく知られており，それらがつながってできるらせん構造を有する高分子のらせんにも右巻き・左巻きがあります。代表例がDNAとタンパク質で，これらはどちらも右巻きのらせんになっており，構造に自己修復性があることやその構造が分子の働きと密接に結ぶついていることもよく知られています（例えばタンパク質の加熱などによってこの自己修復性が消失して機能が失われるのが変性です）。
　今回取り上げた記事は，人工的にそのような（高）分子を作る研究について詳しく解説したものです。代表的ならせん高分子の紹介から始まり，著者らが見出したポリフェニルアセチレン誘導体のらせん誘起とその記憶¹⁾，その他の誘起らせん分子についてわかりやすく書かれています。

参考文献・Webページ
 1) 八島栄次，「アキラルな低分子との相互作用を介した高分子のらせん構造の記憶」
 2) 八島栄次，「多糖誘導体による不斉識別とその機構の解明」
 3) らせん／ホストプロジェクト（大阪府立大学大学院・高田十志和研究室）
 4) DNA Learning Center
 5) DNAの識別と操作（大阪大学・川合知二研究室）
 6) “紫外線による遺伝子の損傷を乗り越えて複製する新しいDNAポリメラーゼを発見”（理研ニュース，1999/06/17）
 7) “DNAの二重らせんをほどく酵素の構造解明”（ワイアード・ニュース・レポート，1999/10/16）
 8) junkのおもしろ有機化学ワールドより

• 基礎有機化学／立体化学：鏡像異性
• おもしろ化合物／ねじれちょうちん（不斉炭素をもたないキラル分子の例）
 9) 村田一郎 著，「岩波講座・現代化学への入門・第7巻　有機化合物の構造」，p.70〜，岩波書店(2000)

• 分子表示プラグインのChimeを利用した資料例
  • 光学異性体
  • アミノ酸
  • 遺伝子DNA／４種類の塩基