最近,科学番組やテレビのコマーシャルで,DNAや薬剤分子など,CGによる分子モデルをたくさん見るようになりました.でも,番組によって,同じ分子でも色が違うようです.分子モデルをカラーで見ることは,化学教育にとってどのような意味があるのでしょう? そこで質問です!
Q 以下の6つの分子モデル図(静止画像)は,同じ分子に見えますか? 違う分子に見えますか? あなたにとって,色や表示形式の違いがどう影響しているか,お考えを聞かせて下さい.このページのプリンタ出力(モノクロ)またはグレー版画像をご覧になった感想もお願いします.また,あなたのお持ちの本にカラーの分子モデル図が出ていたら,その文献名(出版社名も)と配色(C,H,N,O,Sなど)を教えて下さい.
ところで,この分子は何でしょうか? 【ヒント:あま〜い!/解答編作成中 → Jmolコンテンツをご参照ください! 】
【1】分子ソフト HyperChem(Hypercube社)/既定色,【2】同/アレンジ色,【3】CAMD-I plus(矢野・本間),【4】分子表示 plug-in“ChemscapeChime”(MDL社),【5】分子 Java(Sun Microsystem社),【6】P.W.Atkins 著,千原秀昭・稲葉章 訳,「分子と人間」,東京化学同人(1990)《スキャナで読み込んだので,色が若干異なります》
◎以上のアンケートに対して,ご回答・ご意見をお待ちしています.年齢,ご職業・学年などもお書き添え下さい.
お使いの分子ソフトのサンプル画像ファイルや,書籍の分子モデルのスキャナ読み取り図などをメールに添付して戴ければ,本ページに掲載して充実させたいと考えています.
【パソコン通信における関連発言】
●“分子モデルの色”についてのNIFTY-Serve/FCHEM(旧)/MES_5 での発言例
06595/06599 GEH05313 シェーマ RE:分子模型の色について(長文) ( 5) 96/03/17 20:45 05750へのコメント インターネットがらみの話題ですが,昨年の「分子模型の色」の話題とも関連 するので自己RES(→#5750)をつけます。 詳細は20番会議室に書き込んだので(#1090,1092),そちらを参照して頂 くことにしますが,インターネットのホームページ上で分子モデルを表示する2 つの試み(アメリカが発信)で,表示される「分子模型の色」を紹介したいと思 います。 #5750 の書き込んだ原子の色についてだけ追加(最後の2件)します。 | AN 1 6 7 8 9 11 15 16 17 / − | | 元素 H … C N O F … Na … P S Cl / その他 | −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− | | 白 黒 青 赤 黄緑 [灰] 橙 黄 緑 [適宜] 「分子と人間」 | | 白 青 紫 緑 △ △ △ [赤] [赤] △(黄) 中野,MODRAST | | 水 緑 青 赤 △ △ △ 黄 △ △(紫) 矢野・本間,plus | (カラー) | (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) 本間,plus(タイル) | 白 灰 菫 赤 黄土 青 橙 黄 緑 ? ChemscapeChime/CPK 灰 黒 青 赤 △ △ 水色 黄 △ △ Sun.com. の Java (△は複数の元素で共通に用いられる色) こう見ると,似ているようでやはりみな違いますね。 Hero さんがアナウンスしてくれた(MES_20, #1080-1081)ChemscapeChime は特に楽しく,今この文章を書いているエディタと同じディスプレイ上で,複数 の分子モデルが回転しています(オフラインで Netscape を起動して利用可能)。 Chemscape Chime(現在 Win95 用のベータ版のみ)を FTP で入手し,Netscape2.0 に plug-in(自動的に機能を追加してくれる仕組み)する必要があるので,利用 者が対応していないと見られないのが残念です。以前紹介した HypewrChem とい う分子ソフトでも出力できる MDL 形式の分子データファイルがあれば,簡単に 自作の「動く分子事典」を作れそうです。ChemscapeChime で表示可能ないくつ かの分子色タイプのうち,CPK というのがかなり標準的な色使いなのかもしれま せん。 Java もアニメーション等,「動くホームページ」などを作れるということで 話題になっていますが(日本の中・高のホームページでも利用者急増),こちら は今後多くのブラウザが対応するようですから,特別なことをしないでも他人に 見てもらえるし,自分でソースを書き直したりできる利点があります。 なお,上記分子 Java(こちらも Netscape2.0 等対応ブラウザが必要)は, http://java.sun.com/applets/applets/MoleculeViewer/ の example1.html 〜 example3.html で試せます(MES_20,#1090 も参)。 何時の間にか,自分でも訳のわからない単語を連ねてしまうようになったしま って愕然としています。あくまで「分子の色」にこだわっての行きがかりです。 1996/03/17 本間善夫(geh05313@niftyserve.or.jp)
◆ひとこと 人間の視覚情報として,“かたち”と“色”を考えた場合,どちらの重みが大きいのでしょう? この点については,古来いろいろな研究がなされていますが,例えば服を購入する際などは,“かたち”よりも色彩の方が先に目に入り,選ぶ場合も色彩の比重が大きいことなどはよく言われています。
分子モデルの場合,“かたち”の方が重要なのですが,“色”(これは原子の種類の識別に寄与)をつけてしまった場合,書籍やソフトウェアなどによって異なる色彩が,分子の認識・理解の上で“雑音”にならないのかどうか(特に初学者に対して),というのがこのアンケートをお願いする目的です。
“かたち”と“色”の問題 上の図で,下と同じものを上のなかから選びなさい.
【引用】朝日新聞社編,「色の博物誌 −世界の色彩感覚−」,p.150,朝日新聞社(1986)“かたち”と“色”,そして“分子”については,以下の文献,ページなども参照してください。
- 小川一行,「かたちと意識」,朝倉書店(1995)
- 記号学研究11,『かたちとイメージの記号論』,東海大学出版会(1991)
- 千々岩英彰,「色彩学」,福村出版(1983) → 慶應義塾大学理工学部計測工学科・西山晴彦さんによる本の紹介
- HGS 分子構造模型
- いますぐできるわくわく化学実験143 | 演示実験128『分子模型を作ろう』
- 雑誌特集『原子・分子を見る』,化学と教育,41(11),pp.723-744(1993)
- 渡辺範夫,『中学校における生徒のつまずきと理科指導 −原子・分子の学習をおもしろくする』(特集/児童,生徒はどこでつまずくのか),化学と教育,42(1),9(1994)
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