『せたがやスタ研ニュース』39号【講演】

 「元気出せ」講演会

 共同販促事業としてのスタンプ事業
 消費者が集めたくなる魅力づくりと加盟店拡大および活用意欲促進策

 広島県神辺町・協同組合神辺わかば会副理事長&事務局長 藤井一浩氏

 
 
スタ研全体会で講演する藤井氏(上)と全体会参加者(下)
 

 

 6月20日のスタ研全体会では、広島県神辺町・協同組合神辺わかば会の藤井一浩副理事長&事務局長に講演していただいた。
 わかば会のスタンプ事業は、7年ほど前の1996年には年間発行額がピーク時の半分の1200万円程度、加盟店数は3分の2の23店に落ち込み、解散も考えたほどだったという。しかし、リニューアルに成功、発行額は3倍、加盟店数は3.5倍まで伸ばした。
 きっかけは烏山方式との出会いだった。特筆すべきは、「東京の烏山といなかの神辺は違う」という消極論をはねのけ、徹底的に真似をすることから始め、多くの加盟店の活用意欲を促進する組織運営、消費者にアピールする数々の付加価値づくりと情報発信である。
 以下、藤井さんの講演を報告する。
 
*紙面の都合で、共通商品券についての講演部分は省略した。

1・リニューアルまで
◆発行額はピークの半分に
 神辺わかば会の設立は1966年(昭和 年)と歴史は古い。南隣りの福山市のベッドタウンとして人口が増えると共にスタンプ事業も発展、ピーク時は30数店の加盟店で年間2,500万円ぐらいの発行を記録していた。
 しかし、競合激化、車社会の進展などで、商店街らしい商店街が殆どなく商店は点在というハンディもあって、加盟店も売り上げも大幅に減少、リニューアルか解散かという事態にまで追い込まれていた。
 ただ、わかば会の特徴として、未回収分のほぼ100%を預かり金として残しておいたことがあげられる。その額は年間発行額の数倍にもなる。その金利で旅行招待などイベント経費をまかない、預かり金には殆ど手をつけないでやってきた。

◆15人で烏山に視察、カード化論は吹っ飛ぶ
 本格的にリニューアルに取り組んだのは、95年頃。当初は、打開策の目玉として、「これからは古くさいスタンプではなく、若い人にアピールするポイントカード化だ」と考えていた。
 しかし、視察や講演会などで勉強しても、いまひとつ決め手に欠ける。
 そんな時に、ある役員が「東京の烏山という商店街のスタンプが参考になるらしい」という情報を持ち込んできた。「それなら、商工会で講演会を開いてもらおう」ということになり、95年12月に神辺町商工会で桑島俊彦氏を招請し、講演会を開いた。わかば会からも20名近くが参加した。
 そこで、「これはすごい」と感銘を受けた人が何人も出て、「みんなで烏山をこの目で見てみよう」と、翌年の2月に15人ほどで烏山駅前通り振組を視察。「観光ではなく、スタンプ事業をやり直すための費用」ということで、旅費はすべて会が補助をした。
 
◆「いなかでは参考にならない」論を一蹴
 烏山の駅を降りたとたん、「これだけ人が歩いていたら商売できる。商店も密集していて、いなかの神辺とは全く違う」という声が続出した。
 しかし、「我々は町外流出に困っているが、烏山でも新宿、渋谷が近いという似たところはある。2つか3つ離れた駅で降りたら、以前は駅前商店街だったと思われるところがマンションになっている。しかし烏山は駅前が整備され人通りも多い。この違いは何か、なぜこうなったのか、それを見よう」と皆を説得した。
 この時、烏山の事務局で1〜2年分のチラシその他の資料一式をもらったり、スタンプを扱っている昭和信用金庫烏山支店までぶっつけで訪問するなど、精力的に情報を収集した。
 視察から帰った後も、地元では、「半径1キロに7万人もいる烏山とは条件が違う」という反対論は多かったが、当時の会長(現理事長の菅波幸治氏)は「スタンプ日本一の烏山がやっているのだからやる」と烏山方式へのリニューアル断行を強く主張、各論論争をせずに実現させた。
 カードについては、顧客には若い人は少なく、高齢者が多い。それに店が点在していて、しかも発行量が少ない。個人が持つカードでは、家族でもバラバラに集めるのでなかなかたまらない。スタンプなら1カ所(台紙)に集まってたまりやすい。それならまだスタンプで十分だ、ということになった。

◆期限を決め集中的に
 よかったのは、リニューアルの期限を決めたこと。4月1日と決めたら、そこから逆算する。「ちょっと話を煮詰めてから」なんて言った瞬間からダメだと思う。
 これは後に始めた商品券もそうだった。町の補助金が急きょ決まったこともあるが、財務局への手続きや金融機関との折衝、商品券のデザイン、印刷方法など諸々の準備を2カ月ぐらいで済ませてしまった。

kヲ組神辺わかば会の概要
 神辺町は、岡山県との県境にあって、人口4.1万人。隣接する人口41万人の福山市のベッドタウン。福山市にはそごう(昨年撤退)、天満屋、ジャスコ、イトーヨーカドーなどの大型店があり(2005年にはイオンが開店予定)、車で10〜15分で行くことができる。郊外型店舗も増えている。消費者の60%が福山市など町外に流出している。
 協組神辺わかば会は、町内全域にまたがる商店など80組合員の団体。主な事業は、スタンプと共通商品券事業。共通商品券は、組合員のほか準組合員が約80人。

i革
1966年(昭和41年) 神辺わかば会設立
ピーク時は1970年代で加盟店数は32〜33店、スタンプ年間発行額は約2,500万円、95年頃は20数店、1200万〜1300万円
1995年12月 神辺町商工会で桑島俊彦氏招いて講演会
1996年4月 スタンプを烏山方式にリニューアル 23店
 〃  6月 神辺わかば会が桑島氏招いて、福山市のホテルで食事会兼ねた講演会を開催。家族含め160人参加。参加者アンケート-勧誘活動で加盟店数急増のきっかけに
1999年6月 共通商品券事業開始のため、協同組合化
 〃  9月 共通商品券事業開始

2・リニューアル後
◆消費者の利便性を向上、財源確保の道も
 仕組みで大きく変えたのは3点。
 第1に、スタンプ台紙を毎日利用できるようにしたこと。それまで、わかば会のスタンプ台紙は年間4回各2週間計8週間しか使えなかった。加盟店の台紙換金もそれに合わせて期間を限定していたが、リニューアル後は金融機関の営業時間内とした。これにより、消費者にとっても加盟店にとっても利便性は大幅に向上した。
 第2は、加盟店のスタンプ購入額と消費者の台紙利用額に差をつけ、その差額を宣伝やイベント、研修、事務局などの財源とすることにしたこと。350枚貼り台紙1冊につき加盟店は700円を負担し、消費者は500円で使えるので、発行額の7分の2が発行時点で会の収入になる。
 第3は、台紙換金の加盟店負担(2.5%)や会費徴収をやめ、加盟店の負担感を減らしたこと。

 

リニューアル後

リニューアル前

進呈単位
100円 200円

満貼台紙・スタンプ枚数
350枚 100枚 

満貼り台紙用途
500円相当の金券、預金、常時交換、イベント参加 400円相当の金券、イベント参加

満貼台紙利用可能日
常時 年間8週間

加盟店購入単価
2円(5,000枚1万円) 4円(2,500枚1万円)

換金手数料
なし 台紙1冊10円

スタンプ購入先
金融機関(2カ所) 金融機関(1カ所)

事務局と専従職員
独自事務所、専従職員1人 商工会に委託

満貼台紙換金先
金融機関 商工会

加盟店数
80店(03年7月) 23店(96年3月)

年間発行額
約3,500万円(02年12月決算) 約1,300万円

 

◆加盟店拡大にホテルでの豪華食事付き講演会
 次の課題は加盟店拡大だった。
 そこで、福山市にある一流ホテルでフランス料理フルコース付きのスタンプ講演会を6月に開催。商店主婦など家族も含め、1店2人まで無料ということにした。講師は桑島氏。
 この加盟店拡大活動では、1度に100万円以上の持ち出しだったが、加盟店への啓発、新加盟店増加という意味では大きな効果をあげた。
 終了直後に簡単なアンケート用紙を配布し、加盟に前向きな回答をした商店を役員が勧誘に回ったところ、1週間ぐらいで加盟店は倍増した。
 その後も桑島氏を招いた講演会は年1回以上実施、自主的に加盟する事業者も出てくるようになり、加盟店は80店を超えた。
 発行額も順調に伸び続け、 年度は4,000万円を突破した。

◆事務局の設置
 リニューアル前は専用事務局はなく、商工会に委託していたが、リニューアルを機に事務所を借りた。建物は、旧NTTの支店跡で事務スペースのほか、40〜50人が集まれる会議室など広いスペースがある。
 また、専従職員1人を雇用。地元商店の家族なので神辺の事情にも明るい。リニューアル以来勤続しており、貴重なスタッフになっている。

◆スタンプ印刷からイベントまで徹底的に烏山を真似 
 スタンプ台紙シールも色が違うだけでほとんど同じ。スタンプやチラシの印刷所も烏山と同じ印刷所を使った。スタンプは今もその印刷所を使っている。
 イベントもリニューアル後、半年間は烏山でやった企画をその通りにやるなど、烏山の真似は徹底していた。


 
「わかばくじ」も烏山のサマーセールを参考にした
(期間中、赤いスタンプを発行し、特別台紙を貼ってもらうと抽選券となる企画)

◆加盟店へのお知らせはFAXで同報送信
 「来週、月例会をします」、「配付物があるので取りにお越しください」といった加盟店へのお知らせは全部FAXでやっている。
 当初はFAXのない店も少なくなく、郵送や直接持参したりしていたが、次第にFAXを揃える店が増え、今では全店へのFAX網が構築されている。
 事務局のFAXは100カ所まで登録―ワンタッチ送信できるほか、理事、三役、各部会などグループごとの送信もできる。

◆配布物は事務局に来てもらうことで交流
 加盟店用のチラシやポスターなどの配布物も、事務員や役員が持って配ることはせず、事務局へ取りにきてもらうようFAXで連絡する。
 神辺町は商店街らしい集積が殆どなく、端から端まで車で 分かかるので物理的に大変ということもあるが、事務局へ来てもらうことで、ふだんは会合などに顔を出さない組合員が組合に親近感を抱く契機となる。 事務員も誰かがくればお茶などを出し、10分でも15分でもくつろげるように気を配る。事務員と会話を交わす中で、役員には面と向かって言えないような意見や苦情など本音を話すこともある。
 私は1日のうち1時間くらいはわかば会事務所にいるようにしているので、行くと、事務員から、「聞いてくださいよ」と30分くらい話を聞かされることもあるが、それで、加盟店が何を考えているのかがわかる。次に会った時には、事務局から聞いたとは言わずに、「どうですか」と、それを意識した会話ができる。

◆幟などは有料配布で意識付け
 わかば会では幟や加盟店章(スタンド)を加盟店向けに用意しているが、いずれも有料。
 昔は半年に1度ずつ新しい幟をタダで配っていたが、全く店頭に出さない店に、「この間、配ったばかりなのにもうないの」と聞くと、レジの下あたりから新しい幟を3枚くらい出してきたり、ボロボロで汚いままの幟を出している店もあった。
 リニューアル後は加盟店に負担してもらっている。中には取りに来ない店もあるが、全体としては意識向上につながっている。
 加盟店章(スタンド)表面には「当店は神辺わかば会会員です。お客様のご来店に心から感謝し、いつも笑顔でスタンプをお渡しします。もし、出し忘れていましたら、どうぞご遠慮なくスタンプをご請求ください」、裏面には「スタンプの出し忘れに注意」と書かれている。

◆毎月10日に加盟店会、半分はグループ討議
 私共の会はやたらと会合が多い。月例会は全加盟店( 店)が対象で、毎月10日と決まっている。10日が土日にかかる時は明けの月曜日。特別な事業がある時にはその前に開催するので、年間14回ほど。多い時で40人、少ない時は20人くらいが参加する。
 月例会の時に、イベントごとの事業・会計報告やお客さんの評判などについての報告や今後2〜3カ月間のイベント(目的や誰をターゲットにしたものかなど)についてお話しする。
 これらを1時間程度、その後1時間はフリートーク。
 フリートークは、テーブルを5〜6人の小さなグループに分けて、お茶とお菓子でくつろぎながら1時間くらい話し合う。この時、1つのテーブルに1人は必ず理事が入る。理事は話をリードしたり、意見を吸い上げて理事会で報告する。
 全員を集めて意見を聞く方式だと、絶対に意見は出ないが、こういうやり方だと普段発言をしたことがない人でもいろいろ話してくれる。

◆発行額は3倍強に
 以上の各種リニューアル策が相まって、加盟店数はリニューアル前の3・5倍、スタンプ発行額は年々伸び続け、3倍強の4,000万円を突破した。
 ただ、景気の低迷と発行額1位のガソリンスタンドが廃業するなどで、この1、2年は落ち込み傾向にある。

◆今年度から賦課金
 リニューアル後、賦課金徴収はやめていたが、今年度から月2,000円徴収するようにした。
 スタンプ発行額が落ち込み始めたため、組合員から「事務局の人件費ぐらいは」という声が出てきたのを受け、決定した。

3・イベント
◆目的と対象客を明確に
 イベントはだいたいよその真似で、何でもやってやろうとダボハゼのようにいろいろなことをやっているが、気をつけているのは目的とターゲットを明らかにすること。
 小さなイベントひとつとっても、どういう客層に、どういうセールスポイントでPRしていくかを意識して使い分けるようにしている。

・ゆったり日帰りイベント
 今好評なのは日帰りお食事会。
 神辺の駅前に朝10時に集合して、車で1時間〜1時間半の圏内を目的地に。例えば鯛網で有名な鞆の浦では、鯛網の実演見物と、鯛尽くしの1人8,000円くらいの昼食。ゆっくり食事した後はホテルの露天風呂でくつろいでもらって、それでも4時半には神辺に帰って来られる。これがものすごく人気がある。
 朝10時というのは、朝食を終え、子どもを学校に送りだして洗濯を終えていける時間。4時半に帰れば買い物をして晩御飯の用意に間に合う。参加するのは殆どが、子供やお年寄りと同居の30代後半から40代の女性。

・台紙のお得感をアピール
 わくわく抽選や台紙 倍現金2倍などは、いかにスタンプ台紙がお得かをPRするためのイベント。

・サンタを家庭に派遣
 「サンタが家にやって来る」は、お金はそれほどかからず、ものすごく人気がある。
 スタンプ3冊で、12月24・25日に、デコレーションをした軽トラに乗ったサンタクロースが、アルコール抜きのシャンペンとケーキを子どもたちに届ける。20件ほどだが、受付の数時間前からお客さんは並ぶ。
 はじめはケーキとシャンパンを一方的に配るだけだったが、一昨年の時、お客さんの家に近づいたらその家の人が待っていて、用意したプレゼントを渡してくれという。「これだ!」と思って、翌年からはチラシに、「あらかじめ事務局にプレゼントをお持ちいただけば、わかば会のサンタが一緒に届けます」と。そうしたらますます評判が良くなり、今は定着している。この時にトイザラスの袋のプレゼントを、お願いしますと持ってくるお客がいて頭にくるが、にっこり笑顔で、お預かりします、ということにしている。

・敬老プレゼント
 敬老の日には、町内会などが、敬老の日の集いを開催して招待状を出したりする。それをうまく使って、「その招待状を持って、集いの前に事務局にお寄り下さい」という案内状を出す。寄ってくれた方には、「敬老おめでとうございます。いつまでもお元気で」と書いたメッセージカードを添えてスタンプ100枚を進呈する。
 神辺町では敬老該当者が3,000人ほどいるが、家族の代理も認めているため、2日間で1,000人くらい事務局に見える。広告宣伝費だと思えば安いもの。こういう形でなんとなく社会貢献というスタイルを作っておくと、その後、町の社会福祉協議会が商品券を買い上げてくれたりという効果も生む。

◆これでもか、のPR。よく知らないお客さんが多いことを前提に
 今、わかば会ですごく力をいれているのは、「集めていますかわかば会スタンプ」や「わかば会スタンプはお得度200%」など、スタンプ自体をPRすること。


 
「スタンプお得度200%」という目を引くキャッチでスタンプシステムを説明(03年3月)

 加盟店は、お客さんはスタンプについてわかっていると思っているが、事務局にいてお客さんと話していると、実は違うことがわかる。
 5年10年やっていても、知らない人は知らない。結構宣伝していても、自分たちが想像している半分しかお客さんは知らないと思っていたほうが正解。ということで、ことある毎にスタンプ自体をPRする。
 毎月1日にチラシを入れていて、毎月1日は、町広報と広島県民報とわかば会のチラシ、ということをお客さんに刷り込んでいる。そして、冷蔵庫に貼ってもらえるようにと、チラシの裏は、その月の地区ごとの行事を入れたカレンダーにしている。


 
毎月1日に出すチラシ裏面は月間カレンダーとして家庭の冷蔵庫などに貼ってもらうよう期待している

・来店客に手渡しチラシも用意
 1日のチラシは新聞折り込みだが、時には店頭での手渡しも行う。大型イベントを企画した時は、チラシの縮小版を作って、来たお客さんすべてに袋の中に入れるというくらいやっている。

・繰り返しPR
 チラシの中に必ず「今月のイベント」と「来月の予告」を入れ、店頭ポスター、予告チラシ、本番など、3カ月前くらいからお客さんの目にふれるよう繰り返し繰り返し出すようにしている。
 チラシを一度まいて、ポスターを貼ったらOKかと思いがちだが、それではなかなかお客さんに届かない。ローテーションにしてしまえばチラシのデザインを考える負担も少なくて済む。

◆加盟店への徹底
 月例会などで加盟店に対してイベントの目的や対象を説明している。しかしお客さんが、「これお願いします」とイベント申込書を持ってきた時に、加盟店が「何ですかそれ」という対応をすることが意外に多い。これが一番ヤバイ。いかにそれをなくすかが事務局としての腕の見せ所だと考えている。

4・個店の取り組み
◆価格競争できない店の武器に
 私の従兄弟夫婦がやっている八百屋がある。果物も花火も何でもあるという店だが、ここでは、月火水はお客さんの単価が少ないので1,000円以上の買い上げにスタンプ2倍、木金は台紙利用促進のため台紙で買い物するとスタンプ5倍、土日は郊外に行ってしまうお客が多く客数は少ないが単価はやや高い傾向にあるので3,000円以上3倍としている。
 また、卵、砂糖、醤油など、大手スーパーが日替わりの特価品として出すものをスタンプとからませて売っている。台紙1冊を持ってきた方は現金100円で砂糖3袋というように。計算すれば600円ということで、我々は、砂糖3袋600円は高いと思うが、「タダでもらったスタンプをベタベタ貼っただけなのに、100円で砂糖3袋ももらって」と感じるお客さんもいる。一部でもそういうファンがいるのは強い。
 このやり方で全てのお客さんをカバーできるわけではないが、せっかくスタンプがあるのだから、どういう出し方をするか、どういう受け取り方をするか。価格で競争しては限界があるという時の一つのヒントではある。

◆台紙1冊分の買い物へのお礼と考える経営者
 この店の「木金は台紙での買い物にシール5倍」について、月例会のフリートークの時に僕が、「(粗利が低い八百屋で)よく5倍出しなんかできるね」と質問した。彼は逆に、「もしお前の店で35,500円のカバンを買ってくれた人が、35,000円ちょうどにしてくれと言ったらどうする」と聞いてきたので、「俺は500円くらいならまける」と答えた。
 彼が言いたかったのは、台紙1冊というのは35,000円くらいの買い物の結果なんだということ。
 我々は、1枚2円で350枚貼、原価700円、事務局で200円引かれた残りの500円が私のものだというふうに計算するが、お客さんの立場で考えれば、35,000円の血と汗と涙の結晶である。確かにその瞬間だけを考えれば、得にはなっていないかもしれないが、トータルで考えればプラスになる、という考えを、八百屋さんのような粗利の少ない店に教わった。

5・スタンプに業種制限はない
 商店が点在している神辺では、できるだけ多くの加盟店があることが望ましく、「来る者拒まず」でやっている。工務店、水道工事、ハウスクリーニングなども入っている。
 ハウスクリーニングの業者は、目的がはっきりしていた。そこは今まで工務店や不動産屋の下請けオンリーだったが、バブルがはじけて、仕事が減り単価も厳しくなっている。そこで、脱下請け、直接受注促進という考えで加盟した。
 葬儀屋も2社加盟している。「葬式は悲しいがスタンプをもらえるのは嬉しい」というお客は多い。お客さんに罪悪感を感じさせないような出し方をすればいける。現に、1社はうまく活用して業績を伸ばしている。

6・今後
◆個店の経営充実
 郊外型チェーンの増加など競合が厳しくなる中で、加盟店の経営充実が大きな課題となっている。わかば会としても、「週に1度は自店を外から眺めよう」というキャンペーンを5月から実施している。外から改めて自店を見るといろいろ気がつくことがあるものだ。
 その前は、「今月は店頭の幟をきれいにしよう」キャンペーンを実施した。

◆地域貢献
 住民のスポーツや文化活動などのお手伝いをしたり、時には会で主催したり、環境対策のキャンペーンをすることもこれからの地域商店に大きな課題。
 例えば、うちのかみさんはママさんバレーに入っているが、練習会場の確保と運営資金に困っている。市のリーグ戦があると参加登録料として5,000円かかるので、その都度1人1,000円ずつ集める。ゲートボールのグループも同じ。
 資金だけでなく、告知や場所の確保など運営にも苦労する団体が多い。その点、イベントの企画運営になれている我々がお手伝いできる余地がある。
 といって、我々が全てを仕切るのではなく、資金提供と場所確保だけして、運営は00協会とか△△連盟など専門の団体に委託することも場合によっては必要だ。

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