「ジョシュア、一体何をするつもりだ!(DEFCON)」

このサイトでも紹介しているイギリス産のゲーム「Darwinia」ですが、これを制作した会社Introversion Softwareが新作をリリースしました。これがまた、このソフトハウスらしい超マニアックな、しかし一部の人にはたまらないという「いかにも」な作品になっています。

批評では「とても危険なゲーム」と書かれていますが、何故危険なのか。 そう、この「DEFCON」というゲーム、なんと第三次世界大戦をモチーフにしており、いわゆる核戦争をシュミレートしたたRTSゲームなのです。
日本人として、この手の「核」が絡んでくるゲームというのは何とも複雑な気分にさせられるのが常でありますが、まあ最近はテロへの恐怖がメインとなりつつあり、核戦争という問題はなんだか隅に追いやられているような昨今、しかし依然として各国の核弾頭が今や遅しと発射を伺っている状態なのは相変わらずなので、今だからこそこいういうゲームを通じてこの問題を考えるのも一興なのかもしれません。 (まあ隣の国とかがタイムリーでアレですし・・・)

まあこれがブラックジョークをかかえた悪ふざけなゲームであれば何と不謹慎な、と眉をひそめる所だったかもしれませんが、このDEFCON、非常に大真面目な作品であり、物事を傍観しているようなきらいがあります。この辺はさすがイギリスというお国柄、皮肉屋の本領発揮という所でしょうか。
それにこのゲーム、核戦争をモチーフにしたとか何とか、まあそれは当たっているんですが、それよりもむしろ、映画「ウォーゲーム」の世界観を実際にゲームで表現してみました、というのが本当の所なんじゃないでしょうか。

「ウォーゲーム」は83年に公開された米映画です。
主人公の青年は、コンピュータをいじるのが大好きな天才ハッカー。学校のコンピュータをハッキングして成績を書き換えてしまうなんてのは朝飯前。そんな彼が、ネットで偶然ゲームを見つける。その名も「全面核戦争ゲーム」。彼はこのゲームをプレイしようと躍起になり、とうとうパスワードを突き止めてアクセスに成功する。ところがそのせいで彼は突如政府のお尋ね者となってしまう。何故なら、彼がゲームと思っていたそれは、政府が核管理目的で作った戦略コンピュータのシュミレーションだったのだ。
あらゆる局面を解析・判断した上で命令を実行するこのコンピュータは、ゲームと現実の区別がつかず、本当に核戦争を始めようとしてしまう。主人公達は、このコンピュータの産みの親である博士を探し出して、なんとかこのコンピュータの暴走を食い止めようとするが・・・。

映画「ウォーゲーム」より。
ちょっとしたはずみで核戦争が起きかねない
恐怖を、ユーモアを交えながら描いた傑作。
終り方に賛否ありますが、私は大好き。
北米防空司令部(NORAD)のオペレーション
ルーム。後半はここでの息詰まる心理戦が
繰り広げられます。
NORADで映し出される、
核攻撃シュミレーションの様子。
まるでゲームのようなこの画面は皮肉なんで
しょうか。

©MGM



ゲームDEFCONでは、この映画のNORADでのオペレーション・スクリーンの映像をまんま表現しちゃってます。要するに、それがやりたかっただけなんじゃないかと(笑)。
Introversion Software代表のChris Delay氏はインタビューで自分が影響を受けた映画に「トロン」とこの「ウォーゲーム」を挙げていることからも明白です。
そうか、ますますもって私と趣味が似通っているぞ!(爆)

ゲーム「DEFCON」の画面。
気分はNORADの司令官。
にしても核弾頭の軌跡といい、映画そのまま
ですね。
基本はオンライン対戦ですが、ロビーでCPUを
指定すれば対COM戦も楽しめます。
最大6人で対戦プレイが可能。
Darwinia同様、このゲームも音楽が秀逸。
この無茶苦茶物悲しいアンビエントは独特で
このゲームが大真面目である事を伺わせます



デモもリリースされているので、取り敢えずダウンロードして遊んでみるのをオススメします。しかしDarwiniaと同じく100%日本版が作られることは無いでしょうから、ここでちょっと解説をしたいと思います。デモ(製品版も含め)には親切なチュートリアルも付いているので、合わせてやればカンペキです。 複雑なゲームでもないので、やり方さえ分かれば問題なくプレイ出来るでしょう。
また、メニューで「rolling demo」を選択すると、CPU同士の戦いをウォッチ出来るので参考になると思います。
ちなみに映画を未見の方は、事前に見ておく事をお薦めします。レンタルで探せば大きい所なら置いてある・・・かな?

デモ版では加えられる対戦CPUがひとつだけなのと、アドバンスオプションがいじれない制限がありますが、それ以外は製品版と一緒です。Darwinia同様、STEAMで購入できます。
デモだけでも相当遊べてしまいますが、アドバンスオプションがいじれないのは結構痛い。まあSTEAMで買えば14ドル(1700円くらい)と超安いソフトなんで気に入ったら購入しましょう。

「DEFCON」のスタートメニュー画面。
映画「ウォーゲーム」を見たことがある人なら、
バックに流れる文字列にニヤリとする文面が希に登場します。
コンピュータの、あの有名な名言も!



さて、ロビーでプレイする国を選択したら、ゲーム開始です。選択しないとランダムで決ります。国はおおざっぱにアジア、ヨーロッパ、アメリカといったような割り振りをされています。同色のプレイヤーは同じチームと見なし、同盟国となります。ゲーム内にもalliesという同盟概念があるようですが、詳細はまだ不明。多分途中で組んだり寝返ったり出来るんだと思います。

ゲームが始まると、世界地図が表示されます。そして大きく「DEFCON 5」の文字が。
画面はW,A,S,Dキーで移動、Q,Eキーで拡大縮小出来ますが、マウスホイールでもいけるし、画面隅にマウスを置けば自動的にスクロールするので、基本マウスひとつで出来ます。選択をキャンセルするのがスペースキーというのはDarwiniaと一緒ですね。

ちなみにDEFCONとは防衛態勢を示すレベルの事で、これは実際に軍で用いられており、映画「ウォーゲーム」でも象徴的に使われています。
DEFCON 5だと何事もない平和な状態を差し、これがひとつ下がるにつれて防衛態勢が強くなります。もしDEFCONレベルが1まで下がってしまうと核戦争勃発を意味し、絶対に避けねばならない状態なのですが、恐ろしい事にこのゲーム、どうあがいても時間が経つにつれてDEFCONレベルは下がってしまい、核戦争を避ける事が出来ません。
ちなみにDEFCONのレベルによって出来る事が限られており、最初のうちはユニットやレーダーを配置する事くらいしか出来ませんが、レベルが下がるにつれて敵に対して攻撃を行う事が出来るようになります。1になると勿論・・・。

という訳でまずはユニット配置です。左側に配置可能なユニットの一覧が表示されていると思いますので、これらを選択し、全て配置しましょう。


索敵の概念があるため、普段は敵の動きが一切判りません。そのためレーダーで最寄りの状況を把握するのは重要な事です。まんべんなく配置して、敵の侵入に逸早く対応出来るようにします。
エアベース(空港)は戦闘機や爆撃機を離着陸させる場所で、攻撃、迎撃共に活躍します。
サイロは核弾頭の発射口の役割だけでなく、敵の戦闘機や核ミサイルの迎撃の機能も持っています。普段はこうした迎撃システムの状態で始まりますが、任意に状態を切り替えて核ミサイルを発射する事が出来ます。しかしミサイル発射の状態の際は、一切迎撃システムが動かなくなるので、敵に対し無防備になってしまうデメリットがあります。

海には自分の艦隊を配置する事が出来ます。戦艦、空母、潜水艦の3種類があり、空母にはもちろん戦闘機と爆撃機が搭載されています。配置できるのは自分の領土海域のみですので注意してください。右下に並んでいるアイコンの、旗の形をしたアイコン(Territory)にマウスを合わせると、テリトリーを確認出来ます。これは表示しっぱなしにしておいた方がわかりやすいので、アイコンを押して常にONの状態にしておくのをオススメします。
空母や潜水艦は核弾頭を搭載しているため、これらを敵領土内にまで侵入させるのが当面の目標となるでしょう。

レーダーを配置中。
この範囲内なら敵を確認出来ます。
レーダーが破壊されると迎撃出来なくなるので
結構重要です
レーダー、エアベース、サイロ&防空砲
を配置し終ったところ。
敵は都市を狙ってくるので
なるべく都市近くに置かないと守れません。
戦艦を配置中。
6つあるスロットに自由な組み合わせで入れて
艦隊を組みます。そしてスロット下の
照準マークを押して配置します。
勿論一艦ごとに配置も可。
面倒なのでお薦めはしませんが



艦隊は選択すると移動のためのラインが表示されるので、移動させたい場所にマウスを合わせて右クリックすれば移動を開始します。
もし艦隊内に空母がいれば、右クリックではなく左クリックする事によってその場所に戦闘機を出撃させます。
移動は非常にゆっくり行われるので、かったるいなら画面上部にあるタイムバーで時間の速度を速めると良いでしょう。
通常は2倍速(厳密には5倍速)に設定されています。普段は3倍速(厳密には10倍速)が妥当かもしれません。勿論早くすればそのぶん敵の動きも早くなります。
デモ版ではポーズが効きませんが、製品版だとアドバンスオプションで設定する事によってポーズが効きます。(Slowestspeedをpauseに設定)

もし敵艦隊に遭遇しても、DEFCONがまだ4以上なら戦闘にはなりません。お互いにらみ合いとなります。しかしひとたびDEFCON 3になると一斉に戦闘が開始されるので、船と戦闘機が入り乱れて大変な事になります(笑)。ここは色々とコツがあると思うので、自分で良い戦略を見つけてみてください。私はまだなかなか思うように勝てませんが・・。

ちなみに潜水艦は水中に潜っているので普段は敵に発見される事がありません。近くに敵艦隊が来たとしても、気付かずに素通りしてしまいます。しかしこれはこちらにとっても同じことで、敵潜水艦は全く位置が特定出来ません。それでは困るので空母を駆逐艦モード(アンチ・サブマリン)に切り替えて対応します。切り替えはユニットを選択して右クリックします。これはどのユニットでも共通しています。
これでソナーを使って敵潜水艦がいないかを調べます。もし発見すると自動的に駆逐を開始、こうなると敵はどうする事も出来ません。
逆に潜水艦にとっては、敵艦隊の位置を特定する事が出来ないため、ミサイルを撃つために浮上したら敵駆逐艦がいた・・・何てことも起こりえます。
この場合はアクティブ・ソナーモードに切り替え、こちらもソナーによる敵艦の発見を試みる事が出来ます。
このように、状況によってモードを切り替えて対応するのは重要なポイントですが、それぞれのモードは切り替えてもすぐに実行される訳ではなく、決められた秒数分だけタイムラグがあるため、この点は充分注意しなければなりません。

空母から戦闘機をドバっと出撃。
何も命令しなくても、敵艦が迫って来ると
自動的に出撃して攻撃してくれます。
右クリックでメニューが出るので
船をアンチ・サブマリンモードに切り替え。
これで敵潜水艦をあぶり出します。
切り替えには多少の時間が必要ですので
注意。
アンチモードの艦船が敵潜水艦を発見!
このまま自動的に攻撃を開始します。
姿が消えてしまえば駆逐成功。



なお、戦闘機は敵への攻撃・迎撃だけでなく、索敵も重要な任務のひとつです。敵の攻撃拠点が何処にあるのかをあらかじめ把握しておくと、無駄な損害を出さずに済むかもしれません。勿論核で叩く事も可能でしょう。 これは戦闘機を敵領土内に差し向けるだけでOKです。しかしこの行為はこちらの戦闘機をかなりの確立で失う結果になるため、一長一短な感もあります。このゲームには生産の概念がないため、失ったらそれで終わりですので注意して下さい。

さて、そうこうするうちにDEFCONのレベルは2くらいまで下がっているかもしれません。レベルの下降は止められないため、時間が来れば必ず1まで到達します。そうなると核攻撃が解禁され、いよいよ戦闘は正念場をむかえます。
核ミサイルは、一つの場所からいっぺんに発射しても、一発ずつ順々に出て行くため、これでは結局到達する時に各個撃破されてしまうのがオチです。そのため、攻撃する時はまさに一斉に攻撃するのが吉。同時に沢山の核弾頭が落ちれば、さしもの迎撃システムも対応しきれません。しかし、これでは完全に敵の攻撃に無防備になってしまうため、相手が同じく攻撃をしてきたら、互いになす術が無くなるという、まさに核の本質を突くような事態になります。この辺のルールはよくできていますね。

敵領域の索敵も戦闘機の重要な任務。
一旦位置を把握出来れば、後は地図上に
位置が出続け、攻撃が可能になります。

密かに敵領土内に侵入させておいた潜水艦で
一気に攻撃!
この時敵駆逐艦が側にいたら目も当てられない
敵が核ミサイルを発射すると、その警告が
表示され、敵サイロの位置が発覚します。



核弾頭発射のタイミングはかなり重要で、失敗すると敵にいいようにされかねません。先に攻撃するのか、やられたらやり返すのか、それもまた大きな問題のひとつです。これが1対1の対戦ならともかく3、4人以上の対戦になると、先を読むのが困難になっていきます。

核弾頭を使って敵サイロ等の拠点を叩くのも作戦の一つですが、何よりも重要なのは、敵の都市を叩く事です。
ゲームの勝敗を決めるのは、いかに敵国にダメージを与えてこちらの被害を最小限に抑えるかなので、都市を叩いて人口を減らす事は最も有効な手段です。
しかし、ミサイルがヒットするたびに「1000万人が死亡」とか表示されるのがとにかく不気味。それがあっけらかんと表示されるのも、結局政府のお偉方はこの程度でしか戦争を見てないんでしょ?的な風刺とも取れるか。

核ミサイルはサイロからの発射の他に、潜水艦、ステルス爆撃機(BOMBER)による投下でも行えます。なお右下に並ぶアイコンの、Nukeアイコンに触れると、まだ核ミサイル発射可能なユニットが枠で囲まれて表示されるので、撃ち漏らしがないかどうかを素早くチェック出来ます。

サイロからの核ミサイルは飛距離制限が
ないので、地球の裏側でも届きます。
まさに安全な場所は何処にもありません・・・
日本の首都東京に核弾頭が着弾!
既に1340万人の方が亡くなられました・・・・
超コワ・・・・正直シャレになってねえ(爆)
核弾頭が着弾しまくると、その一体が霧に
覆われます。つまり放射能汚染ですね・・・。
終盤は何処もかしこも霧だらけになります・・・



核弾頭がある程度発射されて着弾すると、ゲーム終了へのカウントダウンが開始されます。このタイマーがゼロになった時点で、最も敵国に甚大な被害を与え、自国の損失を最小限に抑えたプレイヤーが勝利します。このランキングは常に右上に表示されています。

ユニットの初期配置、艦隊をいかに展開するか、核ミサイルの発射タイミングや、戦闘機・爆撃機の使いどころなど、シンプルながら奥の深いゲームで結構楽しめます。勿論、「ああ、核戦争って虚しいな・・・」という気分にも浸れるでしょう(爆)
ただ、ゲーム最後に無理矢理ランキング上位を勝利としてしまうのは、ちょっとこのゲームにしては安易だったかも。もう少し勝利条件を厳しくして、ランキング一位でもそこを満たしていないと、「勝利者 なし」とされる、っていうのがこのゲームらしいと思うのでちょっと残念。
あ、もしかしたらオプションのカスタマイズ次第でどうにかなるんだろうかな?

至る所に映画「ウォーゲーム」へのオマージュが盛り込まれた本作品は、映画を見たことがある人なら絶対にニヤリとする事請け合い。(まあ核弾頭が飛び交ってる絵図でニヤリとは出来ませんが・・・)
だいたい、CPUがロビーのプレイヤースロットの一番上に設定されると、Player 1ではなくPlayer 0になるとこなんざ、細か過ぎて映画見た人であっても見過ごしかねないですよ。もうそんなのでいっぱいですからこのゲーム。


2000円以下のゲームなんですぐにやり尽くしてしまうゲームかもしれませんけど、Darwinia同様、他にはない独特のセンスとデザインはやはり評価に値します。
昨今のfpsゲームとかも、やたらとリアル路線ばかりで、どうも最近私的に琴線に触れる物が出て来ないから寂しい思いをしているんだけど、こういうのが出て来るとちょっと安心する。まあメインストリームには絶対ならないんだろうけどね。
ちなみに、ゲームサーバーにパスワードをかける事が出来るけど、当然あの息子の名前を設定しちゃだめよ。真っ先に打ち込まれちゃうから(笑)

それにしても、キャッチフレーズが「Everybody dies(みんな死ぬ)」ってのは強烈だな(爆)。
これが「みんな死ね」、ではなく「みんな死ぬ」って言う辺りが、いかにもイギリス流・・・・・・・・・・・・・・・
なのか?

Defcon © 2006 Introversion Software Limited





                                                       


  戦争はゲームの中だけにしてね