レビュー

「特選　今月の一枚」　98年8月　ピックアップ

　古今東西でうしろゆびにしかでき得なかった、まさにうしろゆびサウンドの完成型とも言える一曲。今じっくり聴いてみると、「完璧」の一言でもある。

　うしろゆび特有の勢いはまず出だしで演出される。歓声と「かっこ！」のコーラス、3.3.7拍子のパーカッションは、まさに野外コンサートか夏の甲子園かという盛り上がりをみせる。この勢いがうしろゆびなのだ。またその後の落ち着いた展開もなかなか凝った編曲であきさせない。後藤次利ならではのベースラインもあいかわらず深くて、かつチョパっている。ふたりのコーラスもこのころには完全にできあがっていて美しい。そして息もつかせず「秘密の言葉」「教えてあげる」とやけに印象に残るフレーズ。なぜか忘れられない艶やかな声は、なやましくもアクセントとして強烈だ。

　歌の場面設定はありふれたものなのであるが、緩急をつけた詞によってそれをうしろゆび風につくりあげているのは見事。親しみのもてるうしろゆびのキャラクターと曲によって、この海岸のファーストキスという情景にも、当時は妙に実感を覚えたものだ。CDを聴くたび、「たしかに中学・高校の頃はこんたんみえみえのことをやっていたよなあ」と当時を思い出すこともできる。【T.Ishida】